見出し画像

いきなり一店舗を一人で任され、ガクブルした話

私は27歳の時、インテリアメーカーに転職をした。初めての販売員という職業に戸惑いながらも、ある百貨店内の店舗を一人で任されることに。(え?経験ゼロなのに、いきなり任せるなんて大胆人事やな・・・)なんて思っている間にお客様来店。

「いらっしゃいませ~。何かございましたらお気軽にお声掛け下さい。」と一声掛けてお客様から離れた。(うん、いい感じ。だって、私もあまり販売員に付かれるの好きじゃないからな。これぐらいが調度ええわぁ~)と、このスタイルを続けること1か月・・・。

全然売れない。え?前任者はどれだけ売ってたっけ?と見返すと月に数百万円の売り上げ実績が。(これはマジでヤバイな。クビにされてまう!!)

そんなある日、百貨店のマネージャーから「お前の売り場に置く展示品の家具、百貨店の買取分はこのシリーズを中心に置きなさい。見積もりが出来たら見せて」と言われた。そのシリーズはツヤありの濃いダークブラウン。高級な雰囲気だが、エレガントな要素が多い。
※この百貨店では、展示現品を一部百貨店が購入してくれていた。メーカーにとって展示品の入れ替えはコストがかかるし、展示現品がいつまでも売れなければ商品が傷んでしまう。とにかく展示品を百貨店が購入してくれるのは、メーカーにとってありがたい話。

私「え、嫌です!絶対売れないし!」
マ「は?つい最近入ったヤツが何を言ってるねん!
  お前に何が分かるんや!俺はここで何十年と家具売っとるんや。」
私「今の流行りはマットなウォールナットやオーク材。オシャレな
  雰囲気を作るなら断然こっちだし・・・。とにかく絶対に売れません!」
マ「そんな事言うならお前のとこの家具買わへんぞ!」
私「でも、あのシリーズは、水拭きするとふきんの繊維が悪目立ち
  するし。とにかく嫌や・・・」
 (これ百貨店だけじゃなく、買取無くなったら私の会社も怒りそう!
  どうしよ~~!!今から謝る?いや、ムーリー!)
マ「そこまで言うなら分かった。お前の好きな様に家具入れてみい。
  そしてもし売り上げが落ちたら、二度とお前の言うことは聞かん!
  売り場全ての家具、俺の言う通りの物を入れてもらうからな!」
私「分かりました!大丈夫です!」
 (何が大丈夫やねん。売上既にめっちゃ落ちとる。崖っぷちやん)

焦った私は心を入れ替え、お客様に積極的に話しかけた。要望はもちろん家族構成、図面、お悩み等から、最も最適な家具を見つけようと親身になって接客するように。
更に、展示現品を全てSALEで売り切り、自分がオシャレだと心から思う家具を配置し、素敵な売り場を手に入れた。
すると、それらの努力に比例して売り上げも急上昇!
一年後には、各店舗の中でも売り上げの伸び率が1位ということで、会社から臨時ボーナスをもらった。

百貨店のマネージャーとは仲良くなり、部長からは「他のブランドの家具次どれ入れるのか悩んでて。どう思う?教えて」と相談まで受けるように。
その後も、実績のあるウォールナットやオーク材を入れ続けたが、毎日見続けていると、だんだん売り場に新鮮味が無くなって来たので、あのツヤありの濃いダークブラウンのシリーズを入れてみた。売れた。結構素敵なコーナーになってるし、普通にめっちゃ売れた。マネージャー間違ってなかったw

しかし、何の売り上げも無いのに、なぜ私はあそこまで反発したのか。
それはその当時の私が売る自信が無かったから。
そんな自信の無い人が接客しても、セールスポイントが薄っぺらい。
よくある見た目だけの言葉を並べただけ。売りたいから説明するだけ。

やっぱり心から本当にいいと思うものは、自分の言葉に熱が入るし、お客様にも自然と伝わる。物を売ろうとするのではなく、お客様に親身になると、なぜそれが良いのか自信を持ってすすめられる。

私は、接客の姿勢をここで学ばせてもらった。
本当に勉強になりました。ありがとうございます。

後にマネージャーに当時のやり取りを話すと「そんなことあったっけ?(ニヤリ)」ととぼけられた。
あんな売り上げも無いペーペーに任せてくれた、懐の深さにも感謝!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?