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ガムを噛む牛

近々の出来事を記事に仕上げることができない。noteを始めて気が付いた。

読んでもらうための文章として、自分の思いをまとめるのに時間が掛かりすぎるタチのようだ。

似たようなことが日常生活の場面でも多々起こる。

人に送るメールやメッセージの、言葉の選択から語句の順序、そして句読点や改行の位置に悩む。あーでもないこーでもないと推敲して送ったほんの数秒後にスタンプが一つ送られてきて拍子抜けすることの多いこと。


人と交わした会話を反芻する。

友達と集まってした他愛もないおしゃべりも、割と深い語りの内容も。
それから飲み会での軽口のやりとりや意外な発言。

なんでか分からないけれど頭に引っ掛かって離れない誰かの言葉や誰かの表情。

なんでか分からないけれど皆に笑われた私の発言や、なんでか分からないけれど一瞬の沈黙が起きた私の発言。

ひどい時には会話が頭の中を飛び交うことを止めず、ついに朝まで眠れなかったというのも一度や二度ではない。


連続ドラマが好きで繰り返し観る。
好きなシーンは特に繰り返し観る。
好きな台詞を繰り返し聴く。好きな表情を繰り返し見る。好きな間を繰り返し味わう。


食べ物はよく噛んでから飲み込む。
元々噛み合わせが悪くて咀嚼するのに時間が掛かるのにプラスして、「消化と健康、ついでに体型維持に良いように」と思うと、どうしても噛む回数が多くなる。

おかげで、家族にも友達にも「食べるのが遅い」と言われる。でもそれ以上急げない。よく噛むことを省くことはできない。


それから、ガムの出し時が分からない。

高校くらいから、「ガム食べる?」「ガムあるよ」と言って差し出してくれる誰かが必ず近くに一人や二人いた。社会人になっても、職場が数回変わっても、必ずガムを分けてくれる人がいた。

昔は、せっかく出してくれたものを断るのは申し訳ないという思いから「ありがとう!」「ありがとうございます。」と言って受け取っていた。

だけど数分後、密かに自分が困ることになる。

コレ、いつ出せばいいんだろ?


特に仕事の合間に渡されると困る。

みんな仕事をしながら平気で口に放るけど、私にとっては違和感の固まりだった。


暇を持て余していたはずの、たいていそういうタイミングで電話が立て続けに鳴り始めたりカウンターに人が並び出したりするもので。

私は慣れないガムを片方のほっぺ裏に押しやりながら、どうにか自然な笑顔と滑舌で対応しなければならなくなる。


波が収まって、ふと人の目がなくなった隙に、すっかり味のしなくなったガムを吐き出す。そして思う。

あー、またやっちゃった、と。

そして考える。

いったいみんなは、いつコレを口から出して捨てているんだ?と。

あるいは、みんなは私の知らないテキトーなタイミングで呑み込んでいるのか?と。


ガムを口に入れながら話すのも、
味がなくなるまでガムを噛み続けるのも、
ガムを出さずに呑み込むのも嫌だった私は、
ガムをもらうのを辞めることにした。


たいていの人は、自分が何かを差し出したら相手は有り難く受け取るものだと思っているようで、
私が「大丈夫、ありがとう」と言って断ると、
一瞬だけど「え!?」という顔をする。

中には、「まだいっぱいあるよ。(だから、取って良いんだよ?)」と再度勧めてくる人もいる。

私は正直に「ガム、苦手なの。なんか、出し時が分からなくて。」と、再度断る。


そして、そのやり取りが終わったあとにまた、今の態度に失礼はなかったか、必要以上に相手を不快にさせなかったか、と場面を巻き戻し、再生し、確認するのだ。


本当に自分でもうんざりするときがある。
もっと歯切れよく、瞬発力よく、「日々即行」の態度で生きられないのか、と。

おまえの前世は牛だったのか?と。


人が内心でどう思っているか、いくら考えたところで正確には捉えようがない。

自分の書く文章だって、捏ねくり回せば回すほど、本当に伝えたい思いからは遠ざかっていく。

まして誰にとっても読みやすく解りやすい文章の「絶対解」なんてないのだろう。

ガムだって、ただ、味がなくなったら出せばいい。


いや、だけど、味がなくなる瞬間って分かるもの?

口の中のガムが「ハイ!もうこれ以上、味出ないからね、出すなら今だよ!」って教えてくれるわけでもなかろうし。

かと言って、ちょっと噛んで味の濃いうちを楽しんだら終わり!ってのも、なんか口寂しいような・・・。

そもそもガムは私にとって、お菓子というよりは眠気覚ましや気分転換にアゴを動かすためのもの、という感覚がある。

とすると、味がなくなっても噛む意味はあるわけで・・・。


やっぱり私にはガムの出し時が分からない。


◇ ◇ ◇

牡牛座の季節、
わたしのなかの牛に捧ぐ。



◇ ◇ ◇

こちらでも紹介して頂き、嬉しかったです♡


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