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「嘘《ライ》と愛《アイ》がテーマというには出来すぎている」とすら思うアニメ(コミック)『推しの子』を考える。

 こんにちは(o・ω・o)厄介考察オタクです。

 タイトル通り、2023春アニメで話題沸騰、覇権大逃げのハナをきり爆走始めた『推しの子』について考えてみようとういう回です。

 ちなみにどれくらい話題になっているかと言うと、アーティストYOASOBIが歌うOP曲「アイドル」 はYouTube配信2日にして600万再生を突破。

 700万再生を超え、2000万再生、そして億再生まで届くことはもう確実と言えるでしょう。(YOASOBIは既に『怪物』で2億再生アーティスト

□YOASOBI「アイドル」 Official Music Video

 そしてテレビ放映された第1話は異例の82分。
 映画サイズであることから先行上映もされており、シアターでしか観れないEDのフルバージョンで涙した方もいるハズ。
 そしてテレビ放映された1話はTwitterでワールドトレンド1位を獲得。
 
 加えて、原作者の一人である赤坂アカ氏による書き下ろし小説『45510』が公開されたことにより、原作ファン・新規ファンが供給コンテンツに反応し、話題は膨らむ一方です。

 
 第1話が2023/3/17から一部劇場にて先行公開されていたこともあり、劇場版を観た人から口伝てで作品を知り初めてアニメで作品を視聴した。という方もいたのではないでしょうか。

 
 さて、今回のnoteのテーマですが、あまりネタバレをしてアニメ勢を発狂させるようなことは控えたいので、アニメ1話と、原作者、赤坂アカ氏、横槍メンゴ氏の過去作など、既存コンテンツのみに触れて考えてみたいと思いました。

 というのも、『推しの子』の原作11巻までを読んでみた結果、明坂アカ・横槍メンゴのタッグ作品だからこその物語である。
 と感じたためです。
 
 あくまで主観ですが、「両マンガ家のエグいとこ出てる……!!!!」と感じたことに起因しています。
 
 作品には創り手のへきが出た方が面白い(良くも悪くも)とはよく聞きますが、正しく本作はその典型例のように思いました。
 
 てことで前置きはこの辺にして、本作について感じたこと、考えたことを書いていこうと思います。

①『伏線回収の明坂アカ』と『黒い女の横槍メンゴ』
 

 赤坂アカといえば『かぐや様は告らせたい』

赤坂アカ

 横槍メンゴといえば『クズの本懐』

横槍メンゴ

 それぞれアニメ化しており、コミック勢、アニメ勢も知るところ。
 そしてそれぞれの作品を知る人であれば、原作者二人がどれだけの才能を漫画に込めているのかご存知のハズ。
 
 赤坂アカの描く漫画で私が驚いたのは文章量と言葉の説得力。そしてその言葉に連なる伏線張りと回収です。
 サブタイトルを使った伏線回収なども印象深く、原作44話、45 話の「花火の音は聞こえない前後編」はWミーニングという意味でも、45話までに提示された情報からの伏線回収インパクトという意味でも激しいパンチを食らったのを覚えています。

赤坂アカ

 次に横槍メンゴの描く黒い女(達)。 
 これもWミーニング的な要素を含みますが、「見た目が黒い女」「中身が黒い女」を描くのがめちゃくちゃうまい。
 私がクズの本懐で好きなのは、主人公の一人、安楽岡 花火やすらおか はなびの親友である絵鳩 早苗えばと さなえですが、

横槍メンゴ

 主人公の花火も

横槍メンゴ

 ヒロインの一人、皆川茜も、

横槍メンゴ

 まあ〜〜、全員黒い。

 黒いしグロいしぐちゃぐちゃでドロドロである。 

 まあ、それは置いといて。
 その黒さというのも、ただ言動が黒ければ黒くて良いというものではない。
 キャラクターの言動、思考に一貫性があり、行動原理に説得力がなければ物語が成立しない訳だ。
 
「なぜこのキャラクターはこの選択肢を選んだのか?」
 
 その言動が絵と文字で語られていなければ、読み手は違和感を募らせいつかは物語に白けてしまう。

 私が好きな早苗は本人が黒いというよりは「黒くても良いから結ばれたい」という側面が強いキャラクターですが、その報われなさと「それでも良い」という想いが丁寧に描かれていて、読んでいて胸が痛かった。そして良かった。(また読み返したくなってきた)

 詰まる所、赤坂アカと横槍メンゴの良さというのは、「作品と、まつわるキャラクターを大事に描いている」という点だと思う。

 それは漫画家、そして漫画にとっては当たり前のことかもしれないけれど、当然の事を当然以上に出来る人の事を世の中では『天才』と呼ぶ。

 
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②『ミステリー』と『エンターテイメント』

 
 アニメ第1話を観た方は既にお分かりですね。
『推しの子』はミステリージャンルでもあります。そしてラブコメの要素やギャグの要素も含まれます。
 よって、総合的には『エンターテイメント』とカテゴライズされるのではないかと私は考えています。
 また、これはちょっと穿った言葉ですが、『ミステリー』は大衆娯楽だからです。

「他人の不幸は蜜の味」


 なんて言葉がありますが、これは正に『推しの子』にピッタリ当て嵌まっており、アニメ第1話で『推しの子』を推すことにした人の殆どは、「アイの最期の言葉で作品の魅力に魅了された信者」だと言えるからです。(これは私も該当します)

 アイというキャラクターの背景バックグラウンドはおおよそ「不幸」と呼ぶに相応しく、アイドルとして成功したこと、そして双子を産んだことの2つを除けば、親に虐待を受け捨てられた幼少期人を愛せずまた愛されず育った少女期惹かれたであろう異性(双子の父親)に裏切られ第三者に殺害された最期、など、20歳を前に亡くなった人一人の生涯としてはなかなかの不幸っぷりです。

 それでも、「アイは死の間際幸せだった」と視聴者は感じられるから、アイに惹かれるのだと思います。
 いや、もっと双子と人生を共にしたかったでしょうから、やはり死の間際は未練だらけだったかもしれません。
 アイは強い人として描かれていますが、これは意図的に弱い部分を添削しているからなのでしょう。
 アイを観る側はアイの弱い部分はあまり観たくないのかもしれません。
 
 強いアイドル"アイ"という偶像を崇拝したいのかもしれません。

コトバンク

 
 と、いうことが『45510』にて書かれています。ぜひ読んでください。

 そしてその後にYOASOBI「アイドル」を聴いてほしい。

※このnoteを書き始めたのは4/14の深夜ですが、翌15日の昼には800万再生を超えてました。恐ろしいですね。アイがバズってます


 他人の不幸を喜ぶ心理のことを心理学では『シャーデンフロイデ』と呼びますが、『推しの子』ではまあたくさんの「主要キャラの不幸」が描かれています。ネタバレになるので中身は語りませんが、前述した『かぐや様は告らせたい』『クズの本懐』でも、現実的・非現実的という視点を除けば多くの「他者の不幸」が描かれていたように思います。
 面白い物語には悲喜交交ひきこもごもが必要不可欠という証左のように思います。
 
 そう言えば話は少し逸れますが、私は『推しの子』の2巻以降を読んで、『アクタージュ』の続きを読んでいるような気分になったりしました。

マツキタツヤ・宇佐崎しろ

『推しの子』が『アクタージュ』みたいだ。という意味ではなく、本編の一つのエピソードで関連して連想させられずにはいられなかったという感じです。
『アクタージュ』が制作サイドの問題で永久にお蔵入りしてしまった故にでしょう。(続きが読めるなら読みたい)

 そう言えば、『アクタージュ』も『かぐや様は告らせたい』でも「父親に報復したい(父親との確執)」が描かれていました。父親を敵役に据えるのはスター・ウォーズよろしくのテンプレなのかもしれませんが、何となく縁を感じなくもない。

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『推しの子』のアニメ化はエンターテイメント性が非常に高い。

 アニメが大好きで、ハマったコンテンツには入れ込む私ですが、今作はアニメ周辺の情報を収集することでさらに魅力が増すと思っています。
 今知っているだけでも2つほど、「知っていると満足度が少し上がる」ことがありまして、これの満足度に関しては個人差があるんですが、

■YOASOBI「アイドル」のヲタ芸コール
■「アイドル」のアニメPVのアニメーションディレクター

 があります。

■YOASOBI「アイドル」のヲタ芸コール

「リアルアキバボーイズ」をご存知でしょうか。

 ガチのオタクであり、ガチのプロダンサーでもあるという、謎の集団なのですが、

 日本一になったことのある人、世界一になったことのある人、11社の取締役を兼任してる人、赤坂アカ氏のアニメーター学校時代の同期の人、など、濃い経歴を持つ人が多い。
 
 それはさておき、私は「アイドル」を聴いた際、後ろでコールしてる男声がやたら生々しいと感じてそれが違和感であり、「アイドル」という曲のリアリティでもあると感じたのですが、「アイドル」の関連動画に出てきた「リアルアキバボーイズがコールを収録する動画」を見て、ガチの現場の人がコールしてたのか、と納得しました。
 RABがガチのドルオタかどうかは分かりませんが、ガチのアニオタであることは疑いようがなく(メンバーの代表格である涼宮あつきの名前の由来は「涼宮ハルヒの憂鬱」)、盛り上がったオタクが『推しの子』のアイを歌った曲のコールをしているのはアツいものがある。

 アツいのでコールだけでも聴いてみてほしい。

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■「アイドル」のアニメPVのアニメーションディレクター

 またまたYOASOBI「アイドル」からですが、

 コチラのPVはアニメと同様に制作会社の「動画工房」が作っており、

MVディレクター・絵コンテ・演出:中山直哉

 がクレジットされています。
 パッと名前を見ても「知らない人ですね……」となりそうですが、知っている人は知っているすごい人で、

・京都アニメーション出身のアニメーター
京アニ作品に多数参加、原画等で活躍

・『かぐや様は告らせたい』3話ED「チカっとチカ千花っ♡」で絵コンテ・演出・原画を担当
1分43秒の動画で使用した845枚の原画を一人で描く

・ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(2期)にてダンスパート原画を担当(一部共同)

 作画の鬼である。作画マジ神。

 音楽が強いコンテンツは本当に影響力がデカい。強い。と再三私のnoteでは書いていますが、改めて鮮烈なインパクトを受けました。
 そしてそれだけ影響力のあるコンテンツには強い制作チームが関わっているのだと、改めて日本のコンテンツ力も感じました。
 
 サブスクリプションでアニメ見放題とか独占配信とか、TVサイズの劇場放映とか、アニメ1話が82分とか。
 ジャパニメーションが既存の枠をぶち壊して進化してるの大変喜ばしいことですよね。
 運営制作サイドはこれまで以上に大変そうですが……。(その分名声や報酬で報われてほしい)


『推しの子』のアニメーションコンテンツとしての「エンターテイメント力」がズバ抜けてすごいのは世界的な評価や、YouTube等の数値的反響でも明らかです。
 アニメはまだ1話(と言っても3話分の尺)ですが、これからさらに話は面白く、多彩になっていくのでどれだけ世界に爪痕を残すのか楽しみですね。
 
 もしかしたらアニメ史に残る伝説を作るのかもしれない。

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■その他

今回このnoteを書く途中、横槍メンゴ氏の『クズの本懐』を読み直したのだけれど、全9巻(本編8巻+番外編1巻)の9巻を読んでいなかったことに気付き、作品が完結して5年経った今、ようやく『クズの本懐』が自分の中で完結しました。
 
そもそも本編がどんな結末だったかうろ覚えだったのだけれど、本編が優しく終わった後、もう一度、登場キャラクターたちの「その後」とか「次の想い」とかを読むことが出来て、私の最推しである"絵鳩 早苗"のカッコよくてカワイイ魅力的な姿を見ることができて良かったです。

横槍メンゴ

 主人公 花火との関係も良好なようで、改めて愛しい関係性の二人だと思いました(オタク)。

 私は漫画やアニメって、「出逢うもの」だと思っていて。それは「たくさん世に溢れていていつでも触れることが出来るのに、タイミングが噛み合わないと一生その時は訪れない」と思っているからなのですが、
今回、原作漫画の1話で切ってしまっていた『推しの子』のアニメに触れたことで、大好きな漫画の1冊である『クズの本懐』の最終巻にようやく辿り着くことができて、運命的なものを感じざるを得ませんでした。
「 "好き" は "次の好き" を連れてくる」というのが私個人の思想なのですが、改めてそうであると実感したしだいです。

横槍メンゴ先生、赤坂アカ先生、素晴らしい作品を世に出してくださり、それに触れる機会を与えてくださり本当にありがとうございます。
『推しの子』完結まで、作品を手に取り続けようと思います。
作品完結まで。その次の作品を創るために。そしてご自身たちの素晴らしい人生のために、ご多幸ご健勝でありますよう、お祈り申し上げます。


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 最後に。
 今回のnoteはアニメ1話を劇場で観たイチオタクが好き勝手書いただけの乱文ですが、これだけは言わせてください。


(蛙・ω・)<アニメ1話を劇場で観ろ!


 もう公開終了してる劇場もあるけど、まだ観れる劇場もある!
 テレビサイズであの1話を満足しないでほしい!
 テレビサイズでは、EDが短く編集されていて、「アイドル」が、「アイのための曲」が短くなっている。
 それが劇場ではフルサイズで流れる!

 あの曲を、1話の映像を観終わった直後にフルサイズで、シアタースクリーンで、シアター音響で聴いてほしい!!!!!

(蛙・ω・)<マジで良いから!!!!

 観れる人は絶対に観て!!!!!!!!

 
 
 
 長々としたオタクの語りにお付き合いいただきありがとうございます。
 
(蛙・ω・)<いやぁ……アニメって、ほんっっっと、良いものですねぇ。

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