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「本」と「音楽」で繋がる場所

自分は「本」と「音楽」を繋げるのが好きだ。

「本」にしろ「音楽」にしろ、今まで様々な作品に出会い、様々な感情を抱き、今もなお、その感動は新しい作品によって更新され続けている。

「本」と「音楽」
「読むもの」と「聴くもの」
「文字」と「音」

全く異なる要素に分解される二つのジャンル。
でも、共通点も多くあるように思う。

例えば、作品に込める「言葉」「物語」

両方とも作品を創る人が自らの気持ち、感情、世界観を閉じ込め、言葉を通して、たった一つの物語を紡いでいく。

もちろん、言葉のない音楽もあれば、物語のない本もあるかもしれない。

ただ、そう言った「本」「音楽」の共通点を、全く別々の方が作った作品同士を繋いで、一致する感情や世界観を見つける瞬間が自分はとても好きなのだ。

もちろん、どちらも独立した作品には違いないのだけど
「物語」という一つの軸を中心として
一冊の「本」一曲の「音楽」が繋がることがある。

そのことについて
いつか書いてみたいと思っていた。

例えば、小川洋子さん『密やかな結晶』

知っていたはずの物事の記憶が少しずつ消滅していく島で生きる人々の姿を描いた、長編小説。

この作品の主人公は、そんな不思議な世界で小説家として生活していて、記憶を失っていくことを自然の摂理だと受けとめつつも、記憶を失わない少数の人々と出会ったことで、今までにない想いを抱くようになる。

この作品を読見終わった後、自分の頭の中で流れていたのがHomecomings『Cakes』という楽曲だった。

今泉力哉監督が手がけた、映画『愛はなんだ』の主題歌としても知られる楽曲だけど、この『密やかな結晶』という作品にも共鳴する部分が多くあると思ったのだ。

優しいことは 忘れないでいる
いつだって さよならのあとには
似ているものを 思い出してみる

知らないことばかり 数えてさ

Cakes/Homecomings

特に冒頭の歌詞は、本を読み終わったあとに改めて聴くと、物語がハイライトのように頭の中を駆け抜けて、ふとした瞬間に心許ない余韻が残るような、そんな気持ちになれる。

この両作品で描かれる
「記憶」という不確かな存在。

『密やかな結晶』の主人公にとっての「記憶」は、この曲の歌詞にもどことなく現れている気がして、朴訥とした雰囲気が漂うメロディも、ゆるやかに大切なものを失っていく島の様子となじんでいるように感じる。

こんなふうに、一致する情景や感情、歌詞のワンフレーズが作品を結びつけていく。

そして、そうやって見つけた繋がりは、両方の作品をより一層好きにさせてくれるのだ。

また「本」と「音楽」の組み合わせは
人によって何通りもあると思っている。

たとえば、その「本」を読んでいる時に
一緒に聴きたい「音楽」だから。

「歌詞」のストーリーが
「小説」のストーリーとリンクするから。

「曲」に出てくるフレーズが
「物語」の主人公の心情にぴったりだから。

同じ「本」を読んだとしても
人によって別の「音楽」と繋がることもあるだろう。
逆もまたしかり。

ただ、理由はなんでもよくて、「本」「音楽」が一つの線で繋がっていれば、その人にとっての一対の物語になる。

だからこそ「本」「音楽」で繋がる場所があったらいいなと思う。

きっかけは、どちらの作品からでも構わない。

「本」から出会える「音楽」があっても良いし
「音楽」から出会える「本」があっても良い。

この記事を読んで「小川洋子さんが好きだから、Homecomingsを聴いてみようかな」と思う人もいれば、「Cakesという曲を知っていたから、密やかな結晶を読んでみようかな」と考える人もいるかもしれない。

そうやって、どちらの場所からでも索引ができるような、「本」「音楽」がどこからともなく共有できるような、そんな場所を作ってみたいと思っている。

メンバーシップとかで出来れば「すごく良いなぁ」と考えているのだけど、まだふわふわとしていて、全然形になっていない。

でも、いつかは作ってみたい。
他の人の「本」「音楽」の繋がりも知りたいし。

もし、とっておきの「繋がり」があれば
ぜひ、教えてくださいな。

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