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言葉の置き場所を考える

文書を書き始めて良かったことは、たくさんある。

語彙力が増えた。
アウトプットの練習になった。
自分の考えや思いを整理することができた。

本当に様々なメリットがあると思うし、文章を書くことで「文章力」と呼ばれるものも、どんどん上達していくのだろう。

ただ、個人的に、こうやってnoteなどで「文章を書く」ことを始めて最も良かったと思ったのは「言葉の置き場所を考える」のが楽しくなったことだった。

普段、文章を書く機会と言ったら
どんな時を思い浮かべるだろうか。

会社で取引先に連絡事項を伝えるとき。
SNSで友達と何でもない会話をするとき。
学校で論文やレポートを形式に則って書くとき。

どちらかと言うと、どれも決まり切った言葉を使って、目的や意味を汲み取ってもらえることを重視した言葉選びをしてしまいがちな気がする。

そもそも文章を書く機会はどんどん少なくなっていくし、自由自在に言葉を選んで文章に起こすのは小学校の読書感想文まで遡らねばならない人だって、もしかしたらいるかもしれない。

でも、そう言った型式ばった文章を書く場面から離れて、自由に自分の言葉で想いや感情を伝えられる場は実際のところたくさんあって、そこで書く文章は思っているよりも気取らずに書いていけるし、自然と心の内が滲み出てしまう。

それに、不特定多数の人に読んでもらえる場に自分の書いた文章を発信すると言うことは、ただ意味を汲み取ってもらえれば何でも良いわけではない。

文脈や文章のリズム、言葉の並びや語感なんかを見て「もしかしたらこっちの単語の方が自分の想いが伝わるんじゃないか」と頭を悩ませる瞬間が、ふと訪れることがあるのだ。

そんな時、ぴったりな言葉が全く思い浮かばずに悶々と過ごす日々が続く時もあれば、何の気無しに歩いていると、途端に丁度良さげで手頃な言葉が頭の片隅に舞い降りてくる時もある。

その瞬間は何よりも心地良くて、そうやって「言葉の置き場所」を探している時間こそが、文章を書いていて最も楽しい時間だと自分は思っている。

例えば、一つ前に書いたnoteの記事では「ハンブレッダーズ」と言うバンドの歌詞に対する自分の想いを書いた。

そこでは、彼らの歌詞がまるで玩具箱をひっくり返したかのような煌めきを放っていることや、パッチワークのように継ぎ接ぎされた色とりどりの言葉が散りばめられていることをしたためた。

それは例えるなら、綺麗な一枚の布ではなくて
パッチワークのように繋ぎ合わされたキルトのようなもの。

もしかしたら「パッチワーク」と言う言葉を使わなくても、言いたいことは伝わるのかもしれない。

でも、自分にとって「ハンブレッダーズ」の歌詞の良さを伝えたい時と思った時に、なぜだか「パッチワーク」と言う言葉が妙にしっくりきて、それ以外に考えられなくなった。

何でかと言うと、パッチワークで継ぎ接ぎされたキルトのように、歪でチグハグな部分さえも魅力となって、より一層、輝きを増すところが、とても「ハンブレッダーズ」と似ていると感じたから。

同じ意味を持つ言葉だろうと
「この場面」
「この感情」を言い表す言葉は
「これしかない」と思える時が存在するのだ。

ただ、それは単純に意味だけを追求しているわけではなくて、例えるなら、自分の伝えたい想いが詰まったジャムの瓶から、小さなスプーンで想いを言葉として掬い出していく作業のようなもの。

もちろん、一掬いでもジャムの味は伝わるんだろう。
全部掬うのも、少し面倒くさいかもしれない。

でも、自分が感じた「あの感情や想い」が余すことなく詰められた瓶を綺麗に空っぽにして、言葉として読んでくれる相手に届けることができるなら、それに越したことはないし、同時にそれは、とてもやりがいのある作業でもある。

些細なニュアンスの違いや、喜怒哀楽の隙間を縫って取り出した感情を言葉にして、文章の中にすんなりと置けた時ほど、嬉しい瞬間はないから。

こうやって文章を書く前までは
文章は読むものだと思っていた。思い込んでいた。

昔から本が好きで、小説が好きで、物語が好きだった。

そこで繰り広げられるストーリーが、世界観が、言葉だけで創り上げられていることが不思議でしょうがなかった。自分ではきっと、書けないだろうとも思っていた。

でも、自分で文章を書いてみると、そこに広がっていく自分の感情や想いはとても手触りがあって、ちゃんと自分が書いた文章だと言い張れるものだった。

まだまだ文章は拙いもので、他人に見せるのはむず痒く恥ずかしい気持ちはあるけれど、言葉の置き場所を探しながら、あの時読んだ物語のように、自分だけの世界を作ることができる。

だから、これからもずっと文章を書いていきたいし、自分の想いが輪郭を持って相手に伝わるような、そんな言葉を見つける時間を楽しんでいきたいと思う。

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