12月16日 実は最先端素材産業!?製紙業界
視野を広げたい、が、どうしても自分が携わっている仕事中心になってしまう…
そんな問題意識をお持ちの方に、その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。普段の仕事や興味の範囲を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
→部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。
1875(明治8)年のこの日、東京・王子の抄紙会社の工場で営業運転を開始したことを記念して「紙の記念日」とされています。
抄紙会社は実業家・澁澤榮一が大蔵省紙幣寮から民間企業として独立させたもので、王子製紙の前身となった会社です。
製紙業界。その市場規模は、紙・パルプ産業合計で約7.4兆円(2017年)となっています。
この数字の出典元である日本製紙連合会のHPには、製造業に占める同産業の位置、と題して、以下のようなグラフを載せていますので転載します。
非常にありがたいことに2020年までの需要の推移も掲載されていますのでご紹介します。
見てお分かりの通り、需要、生産は徐々に減っています。
伸びているのは、ECの普及による段ボールで、それ以外はペーパレスなどの流れもあり減少傾向となっています。
他にも様々なデータが掲載されていますので、ご興味があればご覧ください。
メーカーとしては、王子HDと日本製紙とがいずれも売上で1兆円を超えており2トップ体制です。 3位は段ボールがメインのレンゴーとなっています。
紙と言っても、印刷用紙等の情報用、段ボール等の包装用、トイレットペーパー、ティッシュ等の衛生用、電気絶縁等の工業用、など幅広いのです。
メーカーによって強いカテゴリが異なり、その結果、今回の感染症による影響で売上が上がるところ、下がるところ、それぞれです。
例えば、 大王製紙は昨年4〜6月期は前年同期の2.6倍もの純利益(59億円)。 これは、「エリエール」ブランドを持つ同社は衛生用紙の比率が高いことで、トイレットペーパー、ティッシュ、ウエットティッシュの販売が好調だったことによるものです。
レンゴーは前述の通り、巣ごもり消費でECの伸びに合わせて段ボールが伸び、やはり6割を超える増益となっています。
一方で、 王子HDは4〜6月の最終損益が37億円の赤字(前期は41億円の黒字)。 これは売上高の7割を占める印刷・情報用紙の売上高が18%減少したことによります。これは、オフィスでの印刷用紙の需要減と、インバウンド減による観光向けパンフレットの制作激減もあるとされています。
三菱製紙も同様に、コピー用紙の需要激減で売上が落ち込み、売上高を1割以上減らし、16億円の赤字になっています(出典は以下から)。
このように同じ製紙業界といっても各社が得意とする事業分野によって足もとの影響はまだら模様です。
将来的には紙の需要減というトレンドは変わらないとみられる中、新たな領域として期待されているのが、「セルロースナノファイバー」です。
セルロースナノファイバーは木材から得られる木材繊維(パルプ)を1ミクロンの数百分の一以下のナノオーダーにまで高度にナノ化(微細化)した世界最先端のバイオマス素材です。セルロースナノファイバーは植物繊維由来であることから、生産・廃棄に関する環境負荷が小さく、軽量であることが特徴で、弾性率は高強度繊維で知られるアラミド繊維並に高く、温度変化に伴う伸縮はガラス並みに良好、酸素などのガスバリア性が高いなど、優れた特性を発現します。
もう実証生産設備が立ち上がっている段階なんですね。
将来的には「紙」でできた車に乗ることになるかもしれません。
→同じ製紙業界でもその事業ポートフォリオによって感染症に対する耐久性が異なった。経営資源を集中するか分散するか、の判断は経営の根幹であるが、今回の製紙業界の例で考えた場合、集中と分散について学べることはあるだろうか?
最後までお読みいただきありがとうございます。
過去の投稿は以下にまとめていますので頭の体操ネタに覗いていただければ幸いです。