向日葵とサイダー
[掌編]
「見て見て、でけえ」
窓の外では友人がはしゃいで手を伸ばす。
この蒸し暑い中、よくもまあ直射日光の当たる屋外で走り回れるものだ。
とはいえ、夏休みだというのに会議の終わった生徒会室にこもっているのも暇なのだ。
学校に来る途中で購入したサイダーが、汗をかいて机を濡らしている。
いっそ友人と走り回ろうかとも思うが、いかんせん身体が重く、椅子から立ち上がる気にはなれない。
「お前も来いよ」
「ぜってえやだ」
このやりとりも何度目だろうか。いや、ここ数日誰もいない学校に来るたびに同じセリフを繰り返している。
昨日は庭園のきゅうりを勝手にもいで生のままで食べていたっけ。
今日は今日で一生懸命に黄色い太陽に向かって手を伸ばしている。
「何してんの?」
ため息と共に言葉を吐く。
「手、届くかなと思って」
「いや、無理だろう」
なんて無謀なことを考えるのだろう。
友人の身長の倍近くもある向日葵は更に上を見上げて友人と共に背伸びをしている。
「せっかくの夏休みなんだから、外で遊ばないと勿体ないだろう」
せっかくの夏休みだからこそ、今すぐにでも家に帰りたいのだが。友人はきっと理解しないだろう。
「明日はプールに行くぞ」
「はいはい」
「明後日は花火するぞ」
「そうかい」
「明々後日は山に登るからな」
「嫌だね」
「なんでだよ」
頬を膨らませて振り返る。
「虫に刺されるだろう」
誰にとっても夏一番の悩みだろう。
友人は気にも留めず、夏休みにすることリストを上げていく。
少しぬるくなったサイダーを流し込むと、しゅわりと喉を溶かして消えていった。
どうやら夏はまだまだ終わりそうにはなさそうだ。
了
お題 : 君と向日葵のサマー
site : 31D/サイダー
URL : http://chu.futene.net/31d/
管理人 : らい/rai
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