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耳が聞こえます。助けてください。⑥

連載「耳が聞こえます。助けてください。」⑥ byりこ
(この小説は今現在、くつばこのメンバーに起きている事実をもとにしています。)

私はスマホの画面を閉じて、ポケットにしまった。今日はこれから手話教室に出かける。手話教室には、自分と同じように耳が聞こえる人がいて、友達もたくさんいる。
(みんなにも、言いたい)
そう思って、いつもより15分早く家を出た。

手話教室についた。にぎやかな声に囲まれる。心地いい。
「みか!元気??」
いろんな人が、声をかけてくれる。ここでは年上の人とも仲がいい。同じ特別支援学校に通っていた後輩もいる。
「みかさん!この間、彼氏が音声日本語を練習してくれたんです!」
「ええーすごいじゃん!聞き取れた?」
「うーん、まだまだだけど、でも嬉しくって♡」
あたりまえだが、98%が耳を会話に使わないこの星では、声を出すことができても、誰も出していない。そのような中で音声日本語を練習してくれる人は、本当にすごい。のどの筋肉を鍛えなきゃいけないし、痛いという。
「でも、彼氏に正しい音声日本語を教えたいんだけど、自分の発音を目標にしていいのか、わかんないんです。もっと正しい日本語の発音を教える学校もあるけど…」
後輩はそう嘆く。日本の聴覚特別支援学校は教育方針によって、手話の獲得を目指す「手話法」と、出せる声を使って会話をする「音声法」に大きく分かれている。私とその後輩の出身校は、どちらかと言えば音声法に近いものの、決して完ぺきとは言えない。例えば、「が」の発音は、完璧な音声法の学校では少し鼻にかけるなど、正しい発音を学ぶそうだ。音声日本語が言語として認められたのは最近のことで、迫害されていた時期もあたので、そのように学校によって違う。私たちは、音声日本語が一つの文化だと思っている。

「みかちゃん、学校はどうだい?あたしはそろそろ耳が聞こえなくなってきたよ。」
そういうのはもうすぐ80歳の誕生日を迎える、多恵さんだ。音声日本語の困るところは、おばあちゃんになると使えなくなっていくところだ。老化で耳が遠くなるらしい。そうすると手話が使えないとコミュニケーションが成り立たなくなるので、70歳くらいから手話を学び始める人もいる。
ばあちゃんは耳元から補聴器を見せて、
「でもね、もうちょっと聞きたいから、補聴器を買ったんだ。耳が聞こえるっちゅうのは、私にとって誇りに思えることだからね。」
と言った。
「元気です。クラスの友達とは、まだ会えてないけど、何人か支えてくれそうなことで会えました。」
「そーりゃあ、よかった!!まだまだ若いんだから、楽しまなくちゃねぇ」

最近、この手話教室に来る耳が聞こえる人が増えた。ここに来る人は、みんながみんなちゃんと手話を勉強しに来ているわけじゃない。正直、手話の勉強より前後にみんなで話す時間が大事な人も多い。最近教室に来る人が増えたのは、そんな、人との関わりを求める人が増えたからだ。
「だってねぇ、町では話せなくなったし…」


【夕日新聞 8月1日 朝刊】
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【数日新聞 8月3日 夕刊】
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【読買新聞 8月3日 朝刊】
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