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映画『破戒』島崎藤村の原作 間宮祥太朗が主演 明治の差別・社会背景&恋・親友・子供たちとの絆が泣ける映画

先日島崎藤村の「初恋」から勉強していくと、49歳の時に兄の娘に手を出し、妊娠までさせていて、めちゃくちゃ島崎藤村に興味が湧いたので、映画『破戒』を見た。いやぁ涙出ました。


1.明治時代の暮らしや社会背景

明治の部落差別がテーマなんだけど、日露戦争のときなので旅順攻囲戦の話だったり、与謝野晶子のみだれ髪が出て来たり、全国水平社の話だったり、教科書で名前だけは聞いた覚えがあるってな単語も、映像と共に語られると、その時代をより深く理解できる。

主人公の瀬川丑松は被差別部落である穢多(えた)であることを隠して小学校の教師をしていた。亡き父からその出自を隠すように強く戒められていた。

子供たちから慕われ、仲のいい同僚もおり、下宿先の寺の娘にも恋心を抱くが軍国主義が強まる時代の中で、瀬川の出自がだんだんと彼を苦しめ、追い詰められていくって話です。

2.部落差別の歴史

江戸時代は士農工商の4つの身分で別れており、そもそも枠組みから外れ、存在自体が認められてなかった穢多非人(えたひにん)。明治時代に入って四民平等の理念が掲げられ、華族、士族、平民の平等が宣言され、1871年には「解放令」(「賤称廃止令」)が出され、公には「えた」「ひにん」などの呼称は廃止されたが、まだまだ差別意識は根深かった。

小学校で仲のいい同僚教師の銀之助がいるんですが、こいつがいい味出してるんすよねぇ。銀之助も瀬川との会話の中で悪気はなしに穢多(えた)の事を卑しいとか、汚らわしい、人ではないみたいな言動をしちゃう。そうこうしてる中で、瀬川が銀之助に自分が穢多(えた)であることを告白するシーンがあるんですが・・・・ここで泣きました。ぜひ見てほしいです。

3.戦争に向かっていく日本・日露戦争と軍国主義

ヒロインである「お志保」って美人が出てくるんですが、与謝野晶子のみだれ髪を読んでるんですよ。

「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」
訳:女性の熱い情熱と、柔肌に触れないで、人生を語ってるあなた、寂しくはないですか?

教科書とかどこかで聴いた覚えもあるんじゃないでしょうか。明治の頃はこういう露骨な恋愛とか性の事を女性が触れるのはまだまだ難しい時代。身分も低く、こういう解放的な詩は新鮮だったんですよね。

また瀬川がお志保に文芸誌の明星を買ってきて、その中に有名な詩が載っているシーンも出てきます。『君死にたまふことなかれ』です。日露戦争の旅順攻囲戦に従軍する弟の事を想って与謝野晶子が綴った詩ですね。

政府や教育としては国の為に戦う事は正義であり、戦争は名誉、敵国を殺すのは正しい事と教育してた時代です。そんな中瀬川は子供たちに平和や、学ぶことの重要性を真剣に伝え、子供たちとの絆を深めます。

戦争の為に未来ある子供や青年が鉄砲玉のように使われる時代の流れに、異議を唱えていた。当時の世間の流れとは反対の立場なので、非難されることもありました。

4.時代と身分に抗い真実を求めた

戦争に向かう時代の潮流と、穢多である身分によって世の中から浴びせられる理不尽な差別に抗いながら、弱い立場の人に寄り添い、正しい道を追い求めた瀬川丑松の歩んだ道をぜひたくさんの人に知ってほしいですね。

銀之助との友情もよかったし、子供たちとの触れ合いもグッときますね。島崎藤村の原作も読みたくなりました。歴史の勉強にもなりましたし、見てみて損はないと思います。



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