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こびとプロレス新団体旗揚げを娘と観た話

こびとプロレスが新団体旗揚げですって。

この記事を目にして、半分も読まないうちに「椿ReINGz(つばきリングズ)」のサイトからオンラインチケットを購入しました。
たぶん瞳孔開いちゃってたと思います。

拙宅はまったく意見の合わない夫婦ですが、唯一と言っていいくらい完全同意することがあります。それは
「プロレスを理解できないやつとは、友だちになれない」
武道とダンスが必修になって、なんでプロレスは必修にならないんだ?と。

そんな夫婦の間に生まれた運命(と書いてさだめ)です。
教養として娘と一緒に見たんです。こびとプロレス。

そりゃ娘はプロレスなんて興味ないですよ。
「えープリキュアのほうがみたい」
とか言ってましたけど。
そこはもう、ルドビコ療法的な強制試聴ですよね。
チョコレートとかでご機嫌とりながら。
私はもうパソコンの前で正座待機です。

「カンッ!」
ゴングが鳴りました。土曜日の14時。深夜じゃない。
お天道様のあたる時間に、こびとプロレス!
ミスター・ブッタマン vs プリティ太田!
激しい!小さい!かわいい!

開始直後、娘は何が起きているのか、わからなかったみたいです。
だって、さっきまでプリキュアみてた画面に、小さな人のプロレスが流れてるんだもの。
しかも、小さいのにおじさん。いろんな意味で遠近感も狂うってもんです。
?が渋滞した表情を浮かべていました。

「おとな?」
「そう。おじさん」
「ちっちゃ!」
素直でいい!大きな声もいい!
そう!プロレスはリアクションをストレートに!
ベビーフェイスには黄色い歓声を。ヒールには愛のあるブーイングを。
そうやって盛り上げるのがプロレスです。
だって、すべてを受け切るのがレスラーなんだから。

「そうなんだよ。小さいんだよ。もしかすると君と同じくらいかも。でも、強いんだよ。筋肉すごいでしょ?」
「この人たちと戦うの?」
「いや、この人たち同士が戦ってるの」
「え?」
どうやら、レスラーvsレフェリーだと思ったらしい。
そうだよね。アニメとかだと、たいがい悪者の方が大きいもんね。

「あ」
「うそ?もう終わり?」
4分13秒 真空投げからの体固め。
「終わったの?」
「そうみたい・・・」
あっけなく決着がつき、ミスター・ブッタマンの勝利。
ベビーフェイスは、わかりやすい整ったマスク。ヒールはもう顔面からして説明不要。
カードは良かったんですが、いかんせんアッサリしてんなー、と。

でも、リングアウトする両選手を見ながら、この4分13秒はずっと記憶に残るんだろうな、と感じていました。私も娘も。
いわゆるオーソドックスな試合展開だったら、こうはいかなかったかも。
盛り上がりこそ次回乞うご期待、って感じですが、こびとプロレスの来し方や行く末を思うと、重い話になりかねません。
だから、このくらい潔くてもいいのではと。いっそ爽やかなくらい。

プロレスは”強さ”を見るものです。
勝ち負けが見たいなら、ボクシングでも巨人戦でもいい。
たまたま勝つことはある。
けれど。
痛みを引き受けることに。打ちのめされて、なお立ち上がることに。
たまたまなんてない。
技を決めた時よりも、技を受け切った瞬間。
フォールに持ち込んだ時よりも、フォールを跳ね返す瞬間。
そんな瞬間に感じる強さに惹かれるのです。
だって、戦い(と書いて旅)は明日もずっと続くから。
だから、いつも勝ってるレスラーはつまらない。
自らの逆境を演出装置に変えてるのが、いいレスラー。

だとすると、こびとプロレスはまさにプロレスの粋なんじゃないでしょうか。
やれ障害だ、やれ差別だ、やれ見せ物だと、外野がシノゴノうるせーなと。
俺はプロレスしたいんだと。文句あんなら試合見てから言えや、と。
これ以上の強さ、ありますか?

娘が言いました。
「すぐ終わっちゃったね」
「いやー早かったね」
「でも」
と言って、娘が少し言い淀みました。
「でも?」
「小さい人、わたしあんまり見たことない」
そうなんですよね。娘はあまり街で見かけたことがないらしい。
たしかに、そうかもしれません。
もし低身長症の方が出歩きづらいのだとしたら、そのやりづらさは明らかに社会の側の問題です。私が言うのもおこがましいですが。
だって。プロレスラーにだってなれるんですから。なめんなよ、と。

私は娘に言いました
「あ。もしかして、大人って気づいてないだけかもよ、それ」
「そうかも」
「きっとどっかで隣り合ったり、すれちがったりしてるよ」
本当はそれが普通なはずです。
似たようなレスラーばかりの団体を想像できないように、
いろんな人が目に映らない街や社会もまた、なんだか気持ちが悪いです。不自然に偏っていて。
知らないものは見えづらい。知ることで、娘の社会への解像度も上がるといいなと。

「こびとプロレスの試合、こんど生で観に行こうぜ」
「やだ。いかない」
「なんで」
「人がやってるプリキュアのやつ(つまりショーですね)にいきたい」
私は、同時にプロレス・リテラシーも上げて欲しかったのですが。

いつか生でみたいなー。
新人レスラー募集中だって。
選手、増えないかなー。


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