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彫刻のやりがい三つ(前編)


今年4月にクライアント様邸に納品した作品「波おだやかに」
ガラス部分は、ステンドグラス作家がデザインした作品。

私の制作のあり方。

私は石の彫刻を制作しています。

この10年弱は、作って発表して売ってというよりは、ご依頼いただいて制作することの方が多いです。

20歳で石彫を始めて、30代後半からは特に受注制作で身を立てたいと思うようになり、
40代前半から少しづつそれが実現してきました。

幸せなことです。

その幸せ感というのは、ご依頼いただいた方に直接お役に立てる、喜んでいただく顔が見えるという具体的な実感から来るものだと思います。

展覧会で多くの人が良いと言ってくれる、というのも勿論幸せです。

私の個性として、一対一の濃い関わりから作品が生まれて、喜ばれると役に立てたという実感が得やすいのだと思います。

もう一つ、その制作に携わる期間、自由になれる感覚があります。
勿論、納期までに限られた時間で限られた資金で制作をやり遂げる責任があります。
その責任が全うできる範囲で采配は自分が持てるという意味で、自由を感じられます。

数あまたいる優れた制作者から私にご依頼いただけることはとても有難いことです。

彫刻のやりがい三つ
その有難いというのは、文字通り難しさが有ることで、「無難」ではありません。
そして、その難しさ、ここでは「やりがい」と言います。これにはいくつかの種類があります。

①表現したい主題(テーマ)について、それが伝わるようなかたち、空間づくりにたどり着けるか。まさに自分でも見たことない作品イメージを創り上げる、創作そのもののやりがい。

②その造形物、造形表現の技術的な難易度のやりがい。

③その作品を完成させるのに必要な期間、集中して仕事ができるように時間と経済のバランスをとって仕事を成り立たせるやりがい。

①創作のやりがい

①の創作のやりがいということで言えば、私が携わってきた受注制作では、作家が日頃から取り組んでいる自分のテーマで自由に創作しているのと異なって、テーマや題材はクライアント様から提示されることがほとんどです。

それは、私が「クライアント様のご希望のテーマに合わせて創ります。」ということを表示している制作者だからなのですが。

クライアント様から提示されるテーマは、私が作家として取り組んでいるテーマとは異なるので、それまでまだ取り組んでいなかった表現内容に向き合う機会となります。
それは、とても学びの深いことです。
クライアント様がそれをかたちになさりたい意図や、言葉ではこうおっしゃっているけれど、頭の中でイメージしているものはどんなものだろう?という、その人の持っているイメージに近づくコミュニケーションがとても大切です。
その方の言動や暮らしぶりから、その方の審美眼や美的感性を知ることも大切だと思います。

私は、クライアント様に寄り添ってそういうコミュニケーションをとって作品を創っていくことにも向いていて喜びを感じるタイプです。

芸術家というのは、自分のテーマと強い作家性で上を目指すもので、私は自分の作品を作りながら、人に添う制作もしているので、その点では、そう多くない作り手なのだと思います。

②技術的な難易度のやりがい


②その造形物、造形表現の技術的な難易度のやりがいについて。
私は先に書いたように、クライアント様ご希望のテーマに沿って受注制作をします、と表示している彫刻家です。ですから、その都度、創る作品が異なります。
これまでの経験によって、こうしたらこうなるだろうという読みを入れつつ、何かしら毎回、新しい創意工夫が生まれます。
やったことがないことでも、根気よく時間をかければできるものや、他のプロフェッショナルに意見を聴いてみることもあります。
これまでやってきたことから、10のうち半分以上もかけ離れたことであれば、クライアント様の望みを叶えられる他の作家を紹介すると思いますし、他の作家も入れた協働制作の提案をすると思います。
けれども、これまでの経験値と新しい調査をしてみて、できると想定できるものはやってみればやれるものだと思っています。
それが、次のステップにもつながり、やりがいなのです。

③時間と経済のバランスをとって仕事を成り立たせるやりがいについて。


最後に、③その作品を完成させるのに必要な期間、集中して仕事ができるように時間と経済のバランスをとって仕事を成り立たせるやりがいについて。

これは今、私がじっくり味わっているところです。
どの仕事もそうかと思いますが、これは本当にやりがいがあり、しかもとても大切なことです。
彫刻やアートの分野で仕事していきたい方は、とても興味があり、悩みがあるところだと思います。

③は後編へ続く。


このnoteは私がイクコクサカ を見つめる場所でもあるので、次回、後編であらためてじっくり書きたいと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。




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