現代語俳句への旅 36 〜天球儀〜
「 天球儀 」
~現代語俳句集~
これ以上踏みいらず山ほととぎす
目つむってしずかな光ひぐらしよ
はるばると呼びあうことよ秋風鈴
あれからのこれからの鐘へいわ祭
年々よ身にしみてくるへいわの鐘
たましいが呼びあってこそ迎え盆
せんそうもえきびょうも越え盆踊
鳥わたる見えるかぎりの山河越え
京よりも奈良のふかさよあきの色
星あかりたたずむ橋の名もしらず
かがやいていのちの故郷あまの河
月を見て三日こころのしずかさよ
◇
うみのいえ太陽わかちあってこそ
たいようの塔あるかぎり暑い野よ
蛇口からしたたるみずよ夏のはて
なんとなくくちぶえがでて初秋よ
つぎつぎにあきがとびたつ飛行場
ひとそだて都市そだててよ秋の土
りんごひとつ置かれ現代アート展
たびびとをわれにかえらす秋風よ
とうめいな傘でゆく都市秋しぐれ
待たされて月スクランブル交差点
マンションは足おとばかり月の夜
ベランダよこよい大きな月のなか
◇
身にしみて東京ギターつまびく夜
行くことはかえることあの秋夕焼
おおぞらはいつかの自分鳥わたる
無になってなにを釣るひと秋の雨
ひととしてただいっぽんの蘆よ秋
中年の笑顔くしゃくしゃぬくめ酒
秋さばよそこらあたりのうみの幸
きつつきとともにさかえて山村よ
むくどりよ建ったばかりの一軒家
来世にはらい世のなやみ曼珠沙華
立って見て居てみて月の明るさよ
なんというあおよ月から地球の出
ほしぼしがながれてここに天球儀
いつも
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