現代語俳句への旅 38 〜百年のこと〜
「 百年のこと 」
~現代語俳句集~
また一人あかるみに出て十五夜よ
手かざしてぬける改札きょうの月
ひとの世を知ってしみじみ名月よ
柿食べてにっぽんがあるむねの奥
秋すずめとんとんとんと跳ねて空
旅びとが吹きゆくかぎり草絮とぶ
とかいとはなんの栄華ぞ銀杏ちる
船に風まったくもってさわやかよ
はるかさよ飛鳥寺まであきのそら
じぶんへのいのりしすかに星月夜
◇
なが生きの幸よ不幸よけいろう日
しんじれば都会は花野かもしれず
いちまいの大ガラスまど鳥わたる
イヤホンできくピアノ曲秋を行く
ビルの窓ひとつともって夜寒さよ
神だなにかしわ手打って朝寒むよ
あしあとは波打ちぎわへいわし雲
村というひとかたまりの秋の灯よ
和歌集と夜ふかしをして虫のこえ
いまの世のいまの故郷の良夜こそ
◇
モンブランの朝日のように栗一つ
ゆめかたれきのこづくしの食卓で
じゃかいもがほくほくと口幸せよ
いちょう散る街よ今年もあと三月
長ながと生きてようやく秋晴れか
とおぞらへメール飛ばして秋の島
竿しなる鰡ひっかけのいちにちよ
たましいが羽ばたくさまの露草よ
ぼうえん鏡みらいに向けて星月夜
そののちの百年のこと子規の忌よ
いつも
ご覧いただき
ありがとうこざいます
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