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現代語俳句への旅 38 〜百年のこと〜


「 百年のこと 」
~現代語俳句集~

また一人あかるみに出て十五夜よ

手かざしてぬける改札きょうの月

ひとの世を知ってしみじみ名月よ

柿食べてにっぽんがあるむねの奥

秋すずめとんとんとんと跳ねて空

旅びとが吹きゆくかぎり草絮とぶ

とかいとはなんの栄華ぞ銀杏ちる

船に風まったくもってさわやかよ

はるかさよ飛鳥寺まであきのそら

じぶんへのいのりしすかに星月夜


なが生きの幸よ不幸よけいろう日

しんじれば都会は花野かもしれず

いちまいの大ガラスまど鳥わたる

イヤホンできくピアノ曲秋を行く

ビルの窓ひとつともって夜寒さよ

神だなにかしわ手打って朝寒むよ

あしあとは波打ちぎわへいわし雲

村というひとかたまりの秋の灯よ

和歌集と夜ふかしをして虫のこえ

いまの世のいまの故郷の良夜こそ


モンブランの朝日のように栗一つ

ゆめかたれきのこづくしの食卓で

じゃかいもがほくほくと口幸せよ

いちょう散る街よ今年もあと三月

長ながと生きてようやく秋晴れか

とおぞらへメール飛ばして秋の島

竿しなる鰡ひっかけのいちにちよ

たましいが羽ばたくさまの露草よ

ぼうえん鏡みらいに向けて星月夜

そののちの百年のこと子規の忌よ




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