楠見清

『ロックの美術館』『もにゅキャラ巡礼』の著者、美術編集者/評論家による、今日のアート論…

楠見清

『ロックの美術館』『もにゅキャラ巡礼』の著者、美術編集者/評論家による、今日のアート論と明日のメディア論。ときどき昨日の犬の雑記など。

マガジン

  • 大東京の小さなお庭|山本ムーグと楠見清の往復ダイアリー

    • 17本

    山本ムーグ(バッファロー・ドーター)と楠見清(ロックの美術館)による交換日記。音楽、アート、自然や日々の生活についてとらえどころのないものを交わしながら明日の準備をしていきます。

  • 大東京オルタナティブ・アートブックフェア

    2019年から始まった大きな東京の[小さな=リアルな]アートブックフェアの専用マガジンです

  • メディアは抹茶味である

    [メディア時評]ゼロから作るのではなくすでにそこにあるものとの対話によって価値を生み出す技術=編集から考える、pubulication=出版とpublic=公共性のことなど

  • 首都大学東京大学院文化編集学フォーラム

  • Art at Outdoor|美術の扉の外へ

    [アート時評]作品、展覧会、アートに関する出来事について記します。感想、メモ、エッセイなどテキストの形式はさまざま

最近の記事

【大東京オルタナティブアートブックフェア2020ショッピングチャンネル】 生放送のトーク+お買物番組のようなオンラインイベントをライブ配信。出演者とプログラム決定

ライブ配信日時=2020年12月29日(火)13:00開始 17:00終了 YouTubeで視聴する= https://youtu.be/eqcnRbeV6Es 【プログラム】出品・出演者 13:00-13:10 オープニング「大きなネットの小さなショッピングチャンネルへようこそ」 13:10-13:40 ゆめいろさがし(朗読音楽絵本を作り上演する団体です) 13:40-14:10 中澤希咲、瀬下裕里加、時田葵、山邊紗耶(メディアとコンテンツ編集を専攻する都立大4年生

    • 東京都立大学大学院文化編集学フォーラム「ウィズ・コロナ時代のカルチャー・デザイニング」オンライン開催のお知らせ

      東京都立大学大学院システムデザイン研究科インダストリアルアート学域では毎年大学院授業「文化編集学特論」受講生による研究成果を学外に向けて発表してきましたが、今年は新型コロナウイルス感染拡大による状況を踏まえ、大学院生による研究発表とディスカッションとワークショップなどイベント複合型のフォーラムをオンライン・フェスをイメージしながら開催いたします。 開催日時:2020年8月22日(土)14:00開演 16:30終演 17:00アフターパーティー有[すべて参加無料] それにし

      • 無を写し、空を表す──木村華子展 SIGNS FOR [ ]

         ビルのてっぺんにある屋外広告板が白くなっているのを見かけるようになった。こうしたビルボードはかつてドライバーからよく見える場所に競うように立てられ、当初は清涼飲料水やタバコ、バブルの頃は不動産開発から女性ファッション雑誌まで、そしてバブル崩壊後は消費者金融の巨大広告が乱立していた。しかし、ふと気がつくと近年は不況やインターネット広告隆盛のご時世からスポンサーがいなくなったのだろう。見上げれば広告のない空きボードが取り残されたようにそこにある。  木村華子が被写体にするのは

        • 2020年5月5日火曜日晴れ夕方小雨のち曇り。手を動かせど心は動かず、いっそ手を止めてみるも頭は働かず

          山本ムーグ様 ムーグさん、ご無沙汰してしまいましたが、お元気ですか? こちらはどうやらコロナ疲れでまいっています。いろいろと考えすぎなのかもしれません。あと、新しい映画や展覧会が観られないのもかなりこたえます。どうも元気が減退するばかり。 しきり直しにピアノに向かうことにしました。 曲はピアノが弾けない僕の十八番のこの曲で。 次に車を買ったらナンバーは「・4-33」にしようと決めているんです。ひらがなは選べないけれど、もし選べるのなら「む」がいいなぁ

        【大東京オルタナティブアートブックフェア2020ショッピングチャンネル】 生放送のトーク+お買物番組のようなオンラインイベントをライブ配信。出演者とプログラム決定

        • 東京都立大学大学院文化編集学フォーラム「ウィズ・コロナ時代のカルチャー・デザイニング」オンライン開催のお知らせ

        • 無を写し、空を表す──木村華子展 SIGNS FOR [ ]

        • 2020年5月5日火曜日晴れ夕方小雨のち曇り。手を動かせど心は動かず、いっそ手を止めてみるも頭は働かず

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        • 大東京の小さなお庭|山本ムーグと楠見清の往復ダイアリー
          17本
        • 大東京オルタナティブ・アートブックフェア
          1本
        • 首都大学東京大学院文化編集学フォーラム
          1本
        • メディアは抹茶味である
          4本
        • Art at Outdoor|美術の扉の外へ
          7本
        • KRAZY!展図録 日本語原稿[部分公開]
          8本

        記事

          2020年4月28日曇り時々雨。CDと青葉をザクザクと刈り取ったら

          山本ムーグ様  まず冒頭の写真はiPhoneをポケットにしまうとき偶然撮れた散歩中の犬の駆け足の様子。あとで見てこれは撮った覚えがないので妙な気分に。でもちょっと未来派ぽいので貼っておきます。  さて、レスポンスが遅くなってすみません。ここ3日間雑誌の記事を書いていたので。原稿仕事があるとどうしても日記とか手紙とか自分にとってピュアでありたい文章は手がつけられない。でも今日ようやくまとまって編集者にメールしたところなので今はちょっとすっきりしています。  コロナの影響で

          2020年4月28日曇り時々雨。CDと青葉をザクザクと刈り取ったら

          2020年4月25日晴れ。アローンは状況で、ロンリーは心境。いまみんなどっちなんだろう?

          山本ムーグ様  ムーグさんの「今何してる? ぼくはメトロポリタン・ミュージアムでリヒターをひとりじめしてきたよ」という短いポスト、面白かったです。ゲルハルト・リヒターの作品ももちろんすごいですが、美術館で作品が見られない状況で、The Metが閉鎖中の展覧会をヴァーチャル公開しているのも面白いし、あの大きな会場にムーグさん一人しかいない光景を想像したら奇妙な夢のワンシーンのようでなんだか妙におかしい気がしたんです。  作者が誰か知らない、前からあったこのGIFアニメ。今回

          2020年4月25日晴れ。アローンは状況で、ロンリーは心境。いまみんなどっちなんだろう?

          2020年4月22日曇り。 椿と山茶花と牡丹と芍薬の花を並べて想像するのは無理

          山本ムーグ様  クルマ=いちばんでっかいオーディオ機器っていう話、よくわかります。僕も自宅であまり音を出せないので運転するときには音楽を聴くのが半分目的化していました。バッファローもアルバム全部よく聴いてました(大音量でかけたいときのお気に入りは断然『Pshychic』)──といまこれ過去形で書いているのは、実は一昨年自家用車を手放してしまったから。なんか急に要らない気がしたんですね。このまま無理して運転していたら運転が嫌いになってしまうのが嫌だったというか。  で、クル

          2020年4月22日曇り。 椿と山茶花と牡丹と芍薬の花を並べて想像するのは無理

          2020年4月20日雨。家で仕事をしながらふと「密です」と独り言

          山本ムーグ様  柿の実の味を変えないために柿の木を接ぎ木するとは初めて知りました。接ぎ木の技術って一種の移植手術のようなもの? よく考えたら僕は紙を接ぐことがあります。観音開きや蛇腹折りなど本の中で折りたたんだページを作るとき、手製本だと自分で切った紙にのりで貼って接ぎ足すんです。そうやってページや拡張するみたいに(フィルムを編集するみたいに)植物も人の手でエクステンションできる。でも、新しい葉を茂らせて花を咲かせて次の実を結ぶのは植物だからこそ。  ムーグさんが植物との

          2020年4月20日雨。家で仕事をしながらふと「密です」と独り言

          2020年4月18日雨。この非常事態は植物にとっては関係ないんでしょうか?

          山本ムーグ様  ムーグさん、昨日は電話でどうも。さっそくですが、交換日記? 往復書簡? ネット時代なのに適切な言葉がないけれど、とりあえずふたりでnote始めましょう。  実はちょうど僕も誰かと文章を交わしたいと思っていたところでした。なんとなく今考えていることを言葉にして記しておきたい。やはり毎日家の中にいると日常に起伏がなくなって日にちの感覚がどんどんなくなっていくので日記をつけたほうがいいだろうと。  そんななか先週ムーグさんがFacebookで配信した山根淳史さ

          2020年4月18日雨。この非常事態は植物にとっては関係ないんでしょうか?

          エディトリアル・モデリングへの招待  ランドアートを模型で記述する試み──「位相─大地」を中心に

           首都大学東京大学院楠見清研究室はこのたび「エディトリアル・モデリングへの招待」展を開催します。本展は2019年度前期授業「文化編集学特論」(博士前期課程)を通じて行ってきたリサーチと考察を元にした実験的制作の成果で、模型言語(情報としての模型)のもつ批評性に着目し、美術史研究に役立て流ことでその可能性を探る試みです。  その最初の研究成果展として、今回は実体を喪失したランドアート、もの派の作品を題材にさまざまな模型の展示を行います。 模型を読む・模型で書く・三次元の言語で

          エディトリアル・モデリングへの招待  ランドアートを模型で記述する試み──「位相─大地」を中心に

          遠藤一郎「ちょっとほふく前進やってます」

          生きとし生けるものとの連帯遠藤一郎の今回の個展は一般には公開されない。作家自身がEメールで50通出したという招待券を持った人しか入れないという。 でも本当はそんなこともなく、招待券はアートセンター・オンゴーイングのホームページから誰でもダウンロードできると遠藤は笑うのだが、それでもこの展覧会は観る人を選ぶ。それは遠藤からのメールにあった以下の文言から察せられる。 はっきりと見たいと思ってくれる人、意識のある人に見てほしいと思うのです。それが大事で嬉しいです。必要な人は見逃

          遠藤一郎「ちょっとほふく前進やってます」

          百鬼夜行渋谷アタック大作戦3 このよにのこす

          路上(ストリート)から地下(アンダーグラウンド)へこのよのはるは「うたっておどれる似顔絵師」をキャッチコピーに活動する二人組の路上ユニットで、各地のアートフェスティバルにも現れるアーティストだ。長崎リサがギターとボーカル、なかやましょうごが鍵盤ハーモニカとパーカッションを担当する。もう少し言葉を足すと、リサは歌も文字も絵も時間や空間の分け隔てなくいつでもどこにでも発露することのできる超画家であり、しょうごはスティックを2本持っているだけでどこでもなんでも叩いてしまう超音楽家な

          百鬼夜行渋谷アタック大作戦3 このよにのこす

          Say Nothing Board 無言板[2]

          街のなかにひっそりとたたずむ、文字の消えた白い看板たち。伝達内容を喪失した役立たずの板も、見方を変えれば、現代絵画のように大きな時代精神や小さな無意識までをも映す鏡になる。ロードサイドの芸術談義は、路上に始まり禅に向かう──"言うことなし"の無の芸術とは? ブラックフライデーと無買日  文字の読めなくなった看板を、物言わぬ板=Say nothing board(無言板)と名付ける際のヒントになったものがある。Buy noting day(無買日)だ。  無買日とは、199

          Say Nothing Board 無言板[2]

          Say Nothing Board 無言板 [1]

          街のなかにひっそりとたたずむ、文字の消えた白い看板たち。伝達内容を喪失した役立たずの板も、見方を変えれば、現代絵画のように大きな時代精神や小さな無意識までをも映す鏡になる。ロードサイドの芸術談義は、路上に始まり禅に向かう──"言うことなし"の無の芸術とは? はじめに: 無言板とは何か 文字が消えた白い看板を見ていたら、Say nothing boardという英語が閃いた。何も言わない無言の看板。日本語で「無言板」とすれば、かつて駅にあった伝言板と字面も似ていて、造語なのにし

          Say Nothing Board 無言板 [1]

          光の虚と実 海野貴彦個展「光源郷」

          展示を見て、海野貴彦は一貫して風景画家なのだと思った。むろん一般的な意味での風景画家のことではない。 海野自身にとって重要なのはそのときその場所から見ることのできる光景をいかにして人びとに見せるか。そのために海野はいつも見晴らしの一番いい場所にすすんで登っていくような心意気の持ち主なのだ。 最初期にはグラフィティ調のドゥローイングを画布や衣服にオールオーヴァーに描く作風からスタートし、幾何学的な立体図形がリズミカルに増殖するイメージの絵画に延伸してきた。同時に、作家同士の

          光の虚と実 海野貴彦個展「光源郷」

          8. 細田守『時をかける少女』

          アニメ映画『時をかける少女[The Girl Who Leapt Through Time]』は、ある日突然タイムリープができるようになってしまった女子高校生・真琴の学園生活を描いた軽快なSci-Fiだ。コミカルとシリアス、淡い恋物語とやがて来る別れに少女の心の成長を織り込んだ脚本と演出。これは監督・細田守の本領発揮の傑作である。 ただ、実はこの作品にはいくつかの周期からなる前史──いや、むしろ輝かしい伝説といおう──がある。40代以上の日本人なら1967年に刊行された筒井

          8. 細田守『時をかける少女』