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【連載】ターちゃんとアーちゃんの歳時記 師走

クリスマス

 朝起きたら、ベッドに掛けた大きな袋にクリスマスプレゼントが入っていました。
「やったーっ」
 二人は大喜び。ターちゃんは、アーちゃんのが気になるようです。

「ねっ、ねっ。ターちゃんが、やってあげるね」
 ターちゃんは自分のを脇に置いて、アーちゃんの包みをバリバリ破り始めました。中からドラえもんの絵の箱が顔を覗かせます。
「あっ、ドーエモン」
 アーちゃんが手を伸ばそうとすると、
「ターちゃんがやってあげる、ねっ。アーちゃん、壊しちゃうといけないからね」
「うん」

 車輪で動く台座の上に、空気で膨らませるビニール製のドラえもんの人形が乗った玩具です。空気を入れると、丁度アーちゃんの背丈くらいになりました。
「大きいね」
 ターちゃん、ドラえもんの裏蓋うらぶたを開けて電池を入れ、スイッチをいれます。車輪が回るのを確認すると、おもむろ床に置きました。
 勢いよく走り出したドラえもんは、物にぶつかる度に向きを変えます。ターちゃんは、それが面白くて、進む方向にわざと手を差し出して向きを変えさせます。

「アーちゃんもやってみな。面白いよ」
「だめ、駄目。そんなことしたら直ぐに壊れちゃうわよ」
 ママが、たしなめます。ターちゃんは、しばらく独占して遊んでいましたが、それ以上の動きをしないことが分かって、やっとアーちゃんにおもちゃを返しました。
「ここがスイッチ。ブーンって動くから、手を出すと危ないからね」
「ありがと」
 アーちゃんは、ドラえもんのおもちゃを大事そうに抱えます。

 さて。
 ターちゃんはというと、みんなに背を向けて自分のプレゼントを開けにかかりました。
 アーちゃんがのぞこうとすると、背中で隠してしまいます。回り込むと、ターちゃんはすかさず向きを変えます。
「だめだぞ」
 強い口調でさえぎるターちゃん。
「見せてあげなさいよ。自分だけずるいよ」
 ママの口添えも空しく、ターちゃんは箱を抱えて自分の部屋に行ってしまいました。

「ドーエモンねぇ、こうするとねぇ……」
 手で行き先を遮りながら、パパに説明し始めます。

 ママも、ターちゃんが散らかし放しにした包み紙を片づける手を休めて、聞いています。


大掃除

「お願いね」
 今日は大掃除です。ママから頼まれたターちゃん、アーちゃんを従えて、家の前の道路を掃いています。
 ターちゃんは、自分の背丈より長い竹箒たけぼうきを器用に使いながら、枯れ葉やゴミを集めます。アーちゃんは、両手でチリ取りを引きずりながら、その後を追います。

「あら、偉いわねえ」
「おっ、お手伝いか。感心だなあ」
 時折、近所の人が通りすがりに声を掛けて行きます。その度に二人は手を止めて、恥ずかしそうに下を向いています。

「終わったよ」
 一時間ほどして、二人が戻ってきました。
められると、嬉しいでしょう。」
 とママが尋ねると、
「うん」
「偉いねって言われたら、そんなことないです、って言うのよ」
「そんなこと言ったら、もっと誉められて、もっと恥ずかしいよ」

 ママは、思わず笑ってしまいます。とってもシャイなターちゃんなのでした。

ターちゃんとアーちゃんの歳時記を、睦月から師走まで読んで頂いて、ありがとうございました。
現在、ターちゃんもアーちゃんも二児のパパになっています。二人も、子供の成長に一喜一憂しながら、パパとして成長していくのでしょうか。


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