【連載】ターちゃんとアーちゃんの歳時記 睦月
初詣
「初詣に行こうか」
夕食の時、突然パパが言い出しました。
「初詣って、何?」
とアーちゃん。
「それはね……」
パパが説明しますが、ほとんど首を傾げています。二人が理解したのは、今日だけは夜更かしをしても叱られないということ。
「準備はいいか?」
待っている間が寒いからと、ママ。着膨れた二人を車に乗せて、除夜の鐘を合図に神社へ向かって出発です。
駐車場から神社に向かうと、既に鳥居から商店街まで、長い行列ができていました。待ち時間は読めません。
暇を持て余したターちゃんは、ちょっかいを出したり、ふざけたりしていましたが、次第に大人しくなりました。アーちゃんも、待ちくたびれて、しゃがみ込んでしまいました。
「眠くなっちゃった」
「少し寝てな」
パパの背中で、待つこと三十分。やっと本殿に到達しました。
「何か、お願いするんだよ」
二人は、パパを真似て、鈴を鳴らし、お賽銭を上げて柏手を打ちます。
参拝が終わると、境内の焚き火で暖を取ります。時折はぜる火の粉と煙を避けながら、パパが尋ねました。
「ターちゃんは、何をお願いしたんだ?」
「お年玉、いっぱいもらえますように」
「バーカ。アーちゃんは?」
「眠い」
「じゃあ、帰ろうか」
アーちゃんは、何をお願いしたのかな。パパの背中で初夢を見始めたようです。
お正月
「新年おめでとう」
「おめでとう」
挨拶を返しながらも、何がおめでたいのか分からないターちゃんとアーちゃん。だけど、今日は特別にみんなから小遣いがもらえることを、ターちゃんはちゃんと覚えていました。
挨拶もそこそこに、目が催促しています。
「はい、お年玉」
「ありがとう」
ほとんど引ったくるように受け取ると、満面の笑みで早速袋を開けたターちゃん。
硬貨が一枚しか入っていないのを見て、大きく膨らんだ喜びが、しゅんと萎んでしまいました。アーちゃんのはと覗くと、百円玉が三枚。
「アーちゃんの方が多い」
枚数の多少は理解できても、貨幣の価値は未だ解らないようです。
「ターちゃんのは一枚だけど、五百円玉だからね」
いくら説明しても、納得できないターちゃん。とうとう、その矛先をアーちゃんに向け始めました。
「アーちゃん、交換して」
アーちゃんは、困った顔。
「分かった。袋を寄越して。ほら、一、二、三、四枚。これでいいだろう」
パパが、百円玉に両替してくれました。
「うん」
アーちゃんより一枚多いので、ターちゃんはすっかり満足顔。
「バカだな。五百円だから、ほら、もう一枚」
未だ解らないターちゃんですが、お年玉が更に一枚増えて大喜びです。
「大事に使えよ」
パパが言っている側から、イトチャン(近所の駄菓子屋の店名)で何を買おうか思いを巡らすターちゃんでした。
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