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アメリカのママ友と育休について語ってみた

アメリカ南部に来て、最近はじめての友人が出来た。まだ知り合いになったばかりだけど。

スペインに留学していた経験があり、第二言語でコミュニケーションを取る難しさ、歯痒さをよく理解してくれる天使のような彼女。

子供の年齢も近いことから、近所の公園でプレイデートをすることになった( デートしているのは大人。子供はてんでばらばらに遊んでいる)。

■ 日米の育休事情

わたしが現在育休中であることを伝えると、彼女はとても驚いて「日本ではどのくらい育休が取れるの?」と聞いてきた。
「基本的には1年間だけど、会社によっても異なっていて、わたしの場合は2年間。例えば学校の先生とか、公務員だと3年間取れる人もいるよ。」

“Oh  My  God ! ” (本場の、本気のやつだ。)

アメリカは各々の州によって産休、育休制度は異なるが、わたしの住む南部の州の育休事情は相当ひどいものらしい。彼女の話では、州の公務員でさえ育休(maternity leave)が取れない。短いのではなく、全く、無い。

実際、州の仕事をしている彼女の義理の妹さんは現在妊娠中だが、育休は1日も取れない。産後数週間は傷病休暇(sick leave)で凌ぎ、その後はナニー(ベビーシッター)に預けて復帰するか、仕事を辞めるかの二択となり、悩んでいるそうだ。

実際ナニーに預けるのにもお金がかかる。時短勤務などという気の利いた制度はもちろん無く、フルタイムで復帰するとそれだけ預ける時間も長く、高額になる。自分の給与とナニー代を天秤にかけ、またその仕事が本当に続けたいものなのか、生まれたばかりの赤ちゃんを預けることに見合うものなのかどうかを考えなければならない。

かたや里帰り出産で、産後も実家でのうのうと暮らし、ありがたいことに育休期間中に海外帯同までさせてもらっている自分。次元が違いすぎて、上手く言葉が出てこなかった。

近くで一連のやりとりを聞いていたママさんもこれに反応。

「わたしも先生をやっていたけど、この子を産んで(育休が無くて)仕事を辞めたわ。」

「日本はすごいねー!」

「というかこの国がひどすぎない?」

「いや本当にそうそう!」

という具合に皆で口々に感想を言い合った後、最終的に

 ”Vote November!” (大統領選挙に投票しよう!)

と言って話を締め括っていたのがとてもアメリカらしかった。

義理の妹さんのこともあり、自身が第三子を妊娠中なこともあり、他の国の産休、育休制度がどうなってるのかがちょうど気になっていた彼女。
その後も2人で日本の育休制度の話を続けた。

育休取得の制約(最初の1年はあまり制約がないが、延長には保育園の不承諾通知書が必要なこと)。育休期間の給与の有無(⇒無給の会社が多いが、給与の何割かは育児休業給付金として受け取れる)等々。

中には上司や同僚から職場復帰を急かされる人もいるし、長々とお休みを頂くと今度は2人目、3人目の産休、育休が取り辛くなることも。何度も取得することを躊躇してしまう…というような、ワーママあるあるな悩みについても伝えてみた。

それでも制度上は育休の連続取得も可能だし、3人連続でも取ろうと思えば恐らく取れるはず。

そう聞いた彼女は、精神的なハードルの高さ、という弊害は置いておくとして、物理的には長期間の育休が取れること、それ自体が素晴らしい。総じて、日本は最高!日本に移住しなきゃ!と終始褒めちぎってくれた。

■ 南部は子どもが多い?

こちらの公園に行くと、日本に比べて兄弟の数が圧倒的に多いなと思う。見たところ3人兄弟が多い。自分が2人兄弟だったからか、今まで3人兄弟は考えたこともなかったけれど、兄弟がたくさんいるのって素敵だなぁと日々感化されている。

そんな話を彼女にしたところ、こんな話をしてくれた。

アメリカも地域によって全然違う。兄弟が多いのはもしかしたら南部(the South)だからかもしれない。

例えばミネソタとか、北部の州だとそこまで子沢山ではなく(平均2人くらい)、仕事も早期復帰しているイメージがある。南部の、自分の身の回りではやはり兄弟は多い気がする。あくまで個人的な肌感覚の話だけど、と。

アメリカ社会が子沢山なのではなくて、南部だからだったのか。子供の数にも地域差があるなんて考えたこともなかったので、興味深い話だなと思った。

子供を3人産んでいる人はお仕事はどうしているのか。育休制度が整っていないとなると、やはり専業主婦なのかな、という常々抱いていた疑問も口にしてみた。

仕事は続ける人もいるけど、身近ではやっぱり辞めてしまう人や、パートタイムが多い。

南部で、少なくとも自分の周りの人たちに限って言えば、自分のキャリアよりも家族を、子どもに囲まれた生活を選ぶ人が多いのかもしれない。

そう語っていたのが、とても印象的だった。

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今までも、育休を頂いていることに対して会社や同僚にはとても感謝していたものの、自分の中で「出産したら育休を取得する」というそれ自体はどこか当たり前に感じてしまっていた部分があった。

今の日本の育休制度に色々と思うところはあるけれど、それでもやはり、国としてきちんとした制度が整っていること、それを大きな制約無く利用出来ていること自体が、途轍もなくありがたいことだったのだと、今回アメリカの事情を聞いて実感した。

一方で、育休制度が整っているからこそ(?)なのか、産後は早期復帰して働き続けよう!と盲目的に職場復帰をすることを是とする風潮がある(とわたしは感じている)が、アメリカ南部と比較すると、結果的には1人の女性が生涯に子供を産む人数はとても少ないようにみえる。

出産後も仕事を続けさせてもらえる環境があることはありがたいが、南部の女性を見ていると、仕事にすぐさま復帰することが本当の幸せなのか、家族や子育てを生活の中心に据える生き方もあるのではないかな、と一度少し立ち止まって考えてみたくなった。

これからの働き方、というより、これからどういう生き方がしたいか、について深く考えさせられた一日だった。

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