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3行日記 #211(墓参り、無花果、まじんのランプ)

八月十三日(火)、晴れ
立秋、寒蝉鳴、ひぐらしなく、ヒグラシが鳴き始める。
立秋、荷花艶絶、かかはなはだえん、蓮の花はすばらしく艶やか。

午前、墓参りへ。バケツに水を満たして、ひしゃくと一緒に持っていく。墓の頭上に水をかける。持ってきた歯ブラシで、角の黒ずんだところをごしごし磨く。乾いたタオルで拭き取った。風が強く吹いていたが、昨日とちがって雲がなく、日差しが強かった。

午後、バスで駅前を経由して、路面電車で田原町へ。きれいな待合室があったので入ってみたが、クーラーがなくガラス張りで熱が蓄まってサウナみたいだった。すぐに退散。ご当地コンビニに寄ってラムネを買う。県立美術館でやっているエジプトの展示へ。空いていると思っていたが、ものすごく混んでいた。立ち上がった鳥のようなオブジェがかわいかった。ファラオのように装飾された、お風呂に浮かべるゴムのアヒル、バスタオルを買った。母校が臨時駐車場として開放されていたので、久しぶりに敷地のなかに入った。山部の部室があった建物が、ガラス張りの新しい建物になっていた。

近くにギャラリーを見つけてふらっと入る。分室ニホ。マンションの二階の部屋がギャラリーになっていた。大学を卒業したばかりの二十代の作家の三人展、ひとりは短歌、ひとりは詩、ひとりは小説を展示していた。ベランダからは、高校のグラウンドが見渡せた。敷地の境目にイチジクの木があり、食べごろをむかえた実が熟していた。また来たい。

夜、近所の公園で花火をした。以前に三条会商店街近くの玩具屋で見つけて買っておいたものだ。まずは線香花火。高級そうに見える立派なパッケージに包まれている。数本火を点けたあと、少し風が出てきたので、すべり台の下にある、丸い穴のなかに入る洞窟のような遊具のなかでやることにした。子ども用の十分に大きいとは言えない穴に片脚を突っこむ。縮こまってもう一方の脚を収め、かがんだ背を起こそうとした瞬間、穴の縁に腰骨を打つ。うぐっ、痛い。苦労をして洞窟のなかに入ったつもりだったが、はたしてそのなかから、外の風景が見えた。なんと、その遊具の反対側からは、小さな穴をくぐらずとも、大人が十分出入りできる入口があった。線香花火に火を点ける。勢いを残したまま道半ばで玉を落とすもの、蓄えた火薬を使い果たし、小さく弱い火の玉のかすかな明かりも消えるまで見守られながら生涯を閉じるもの、さまざま。続いて、アラジンの魔法のランプを模した「まじんのランプ」という昼花火をやった。パッケージの表には、絶対願いが叶う、とありその裏には、らしいよ、と書いてあった。着火したら五メートル以上離れてください、と注意書きがある。そんなに離れるのか。花火を置いて火を点けようとしたところだったが、大事をとってもう少し距離を離した。五メートルという距離が、期待感を高める。身をかがめて着火。ジュワっと音を立てて導火線の先が赤くなった瞬間、反復横跳びのように勢いよく飛び跳ねて遠ざかる。とそこで、横から青い風船がぷわっと膨らみはじめる。このまま大きくなって、轟音とともに割れるのか、そうよぎった束の間、風船はすぐに勢いを失い、力なくしぼんでしまった。

#3行日記

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