学校図書館司書の仕事。その3 図書管理システムの導入について。




今年に入って、こんなご質問を学校の先生方からよく伺います。

「図書管理システムを導入するメリットはなんですか?」

と。そんなわけで、今回は図書管理システムを導入するメリットデメリットに関して語っていきたい。今回は、学校図書館限定でお届けします。

次回は、公共図書館におけるメリットデメリットを考えてみたい。


ーーーー図書管理システムとはなんぞや。ーーー

近年は、パソコン(インターネット上)にて蔵書を管理するのが一般的。大量の本を管理するための専用システムをパソコンに入れて管理している。そのため、従来の手書きのカードなどは一切廃止され、貸し出し返却等も全て本に付与したバーコードをバーコードリーダーで読み取ってよ行われる。一般的には、同じ市の図書室・図書館は同じ会社の図書管理システムを使用する。そうすることで、市内全体の図書の動きなどを把握しやすくなる。このメリットに関しては後述。

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【図書管理システム導入のメリット】

・貸出返却をスムーズに行うことが可能。

・資料の状態(貸し出しかどうかなど)を検索し
てすぐに把握できる。

・欲しい資料を検索し、図書室にあるか確認できるので、重複して同じ本を購入しづらい。

・データを同じもマーク(資料一冊一冊に関するデータの集合体)から取り込むので、データにブレがない。

・市内に同じ本が何冊あるのかすぐに確認可能。

・市内で定期便が運行できれば、学校間などで資料をやりとりし、貸出することができる。(市内の図書館を一つの大きな図書館として扱うことが可能になる)これにより、結果的に資料費の無駄が削減される。ただしコストと時間の関係である程度の面積の市に限る。(市内で40分以上かかる場所がある場合は厳しいと考えられる)また、司書の兼務校数が多くとも3校以内でなければ十分な価値を発揮しづらい。(配達された資料を必要なときに受取にくい)

・請求記号(913ア)などが自動的に割り振られ、わざわざ調べる必要がない。また、市内である程度統一されるので、学校が変わっても仕事をやりやすい。

・いらない資料の除籍の処理が容易。

・新しく購入した本のリストを作成することが容易。

・定期監査資料の作成が容易。

・資料が重複している場合、すぐに把握できる。

・システム導入の際、TRCのシステムを導入すれば、バーコードや背ラベルの付与、本の保護カバー掛けなどが完了した状態で届くので、新刊受け入れの作業が短縮される。(トーハンなど他社は除く)

・市内の学校図書館が一つのシステムで管理されることで、他校にいても他の学校の資料状態を確認することができ、兼務がしやすい。


・資料予約の管理をシステムが行なってくれるので、管理がしやすい。(ただし、資料予約の運用に際しては司書がほぼ常勤であることが望ましい)

・資料台帳などが一切不用になる。(データ上で自動生成が可能なので、後から紙で出力することは可能。)


・公共図書館も同じ管理システムを使用している場合は、学校のシステムから直接公共図書館の本に予約をかけることができる。これと同時に図書運搬の定期便も確立されていれば、なお良い。




【図書管理システム導入のデメリット】


・システムによって全ての図書を管理するため、新刊の受け入れ作業をはじめとした司書業務の専門性が増す。これにより、業務を司書以外が代行することが難しくなる。

・ある程度ITに関する知識がなければ扱えない。

・システムに不具合が起こった場合、全機能が利用できなくなる場合がある。また、その修復も専門業者でなければ行うことができない。

・返却や貸出に於いて、バーコードのスキャンミスが発生した場合、データ上は貸出になっているのに、実際には貸出されていないなどの齟齬が発生する場合が散見される。(対抗策として、バーコードスキャンの2度打ちなどがあるが、完全とは言えない。)

・新刊の受け入れ作業においては楽になるわけではない。むしろ手間は増える。(そのかわりデータの正確性・統一性が増す)

・市内の学校全ての学校図書館が同じシステムで繋がっているため、作業中にうっかり他校のデータを改竄してしまう場合がある。



・他校のIDでログインした状態で貸し出しなどの処理を行うと、不正なデータが発生してしまう。





さて。図書管理システムのメリットデメリットは以上の通り。


うちの市では今年から実は学校図書館での図書管理システムが本格始動となったのですが、正直なところ学校側には不評。

なぜか。


司書がいない時が多すぎるからだっっっ!!!

ひどいところだと、月に2回程度しか司書がいません。ありえん。

デメリットにも書きましたが、図書管理システムを導入することによって専門性は増すのです。なので、誤解を恐れずいうのであれば、司書の仕事は大変になることはあっても楽になるわけじゃない!!!某小学校の校長先生がこの点を勘違いされていて。

校長「クロミミ先生、書架整理をして欲しい。ひどい状態だから」(いろいろあって前年度に図書室の間取りが変わって本の場所がぐちゃくちゃ。クロミミは今年度から着任)

クロミミ「わかりました。確かに私もその点は気になっていました。でしたら、ブックトークのお時間を減らしていただけませんでしょうか。でなければ、今年度中に終えることは難しいです」

校長「そこは努力次第でしょう」

クロミミ「いいえ。月に2回しか来校させていただけませんので、現状では厳しいと考えます。できる限りのことはさせていただきますが…。現に、新しい本の受け入れ作業があったときなどは限界まで作業してやっと仕事が終わります。」

※在校中の3分の2程度の時間は図書の授業と本の回収に費やされている。他にも新刊の受け入れや委員会の本の選定、除籍作業などで後の時間は大体食い潰されてしまう。

校長「図書の受け入れなら、前にわたしもやったことがあるけれど、そこまで時間はかからなかったよ?」

クロミミ「校長先生。失礼ですが、それはシステム導入前のお話ではないでしょうか?おそらくシステム導入後は先生がご存知の頃より新刊の作業に時間と手間がかかるようになっているはずです。(新刊の展示なども含めると)新刊作業は1日仕事と言わざるをえません。図管理システムのメリットは司書業務の簡便化とは別のところにあります。もしも、残業の許可をいただけるのであれば、可能ですが。いかがでしょうか。」(なぜかこの学校は残業を極端にさせない。ていうか定時と同時に追い出される勢い)

校長「わかりました。できる限りで構いませんからひとまず作業を進めてください。残業はしない方向で」

クロミミ「了解しました」


とまあ、こんなことがあったのです。もちろん校長先生のお気持ちもよくわかります。図書室のこともよく見てくださっていますし、私としても図書室は是が非でも整えたい。ですが、できないことがわかりきっていることを出来ます、とは言えません。

では、何が問題か。人事に問題があります。システムを導入した時点で、本来なら兼務をすべきでない。いや。兼務を少なくとも減らすべきなのです。4校、5校を兼務していては支障があります。


なぜか。

前述した通り、専門性が増すのです。
こうなってくると、システム導入のメリットを十分に引き出すことができず、司書がいないにもかかわらず、専門的なシステムを扱わなくてならなくなったデメリットばかりが目立ちます。


だからこそ、司書たちにも「システム導入のメリットとは?」という問いが投げかけられるのです。


だからこそお願いしたいのは、システム導入と共に人員を増やすこと。せめて一人3校兼務までに収まるように配置されることが望ましいでしょう。そうすれば少なくとも週に一回は、司書がいることができるようになるはずです。


学校図書館関係者、並びに市教委関係者の皆様方におかれましてはこの点を重々ご理解いただき、人事への働きかけをよろしくお願いします。


それではまた次回。







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