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クロミミ(黒見千 くろみゆき)
2022年6月30日 21:50
夢の中で彩夏は父を殺した。 いや…あれは自殺だったはずだ。 夢の余韻をかき集めるように、そう結論づけた。 汗に湿ったシーツは思考を束縛する。まだあの夢から醒めきっていないようだ。頭の中では夢が断片的に浮かび上がっては消えていった。気の遠くなるような執拗さは何かを戒めるようでもある。普段は目覚めと共に跡も残さず消え去るのに、今回は薄れる気配すらない。その点においても、なんだかいつも
2021年6月9日 22:58
二一時を過ぎた頃、わたしの街は眠りにつこうとする。昼間は街で一番のにぎわいを見せるこの交差点にさえ沈黙が訪れて夜が深くなる。そのなかで、こわれたように点滅し続ける黄色い信号のひかりをぼんやりと眺めているのがわたしは好きだった。 通りにはほとんど人影がない。夜になると、その街の本当の姿が見えてくるような気がする。そうして、それをながめていることが小さな秘密のように思えてくるのだ。それはひどく