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マイ・エレメントは僕が願っていた理想の世界

“もしも”火・水・土・風のエレメントたちが暮らす世界があったら…?
そんなテーマを持った映画「マイ・エレメント

ディズニー&ピクサーが世に送り出した本作品は、ファンタジーの枠に収まらず、とっても考えさせる、そして感傷的になる内容だった。

映画に登場する都市、“エレメント・シティ“は、さまざまなエレメント(元素)が暮らす街。それでも違う元素が本質的に交わることは少ない。エレメント・シティの中にそれぞれのタウンを持ち、常に同じ元素同士でつるみ、違う元素に対する嫌悪や差別がそこにはある。

僕の脳裏に真っ先に思い浮かんだのが、イギリス・ロンドン。ロンドンは多人種の街で、白人だけでなく、さまざまな国をルーツに持つ移民が多く存在している。

そのロンドンに、僕は2年ほど住んでいたことがある。

きっかけはThe Clashというロンドン出身のバンドだ。人種差別が全盛期の時代で、白人でありながら、黒人の音楽と積極的に交わる彼らのスタイルが、若かりし僕の生き方や信条に多大な影響を与えることになった。

とはいえ、僕がロンドンに行った当時でも人種差別は、社会的な問題としてまだ残っていたのも事実だ。

そんな当時、スポーツブランドNIKEが、人種差別への意識を高めることを目的に、「Stand up, speak up」というキャンペーンを実施。

特に人種差別が根強く残っていたサッカーの世界で、アンリやリオ・ファーディナンドなど、黒人をルーツに持つ選手たちが積極的に声を上げていた。

黒と白の2連リングが発売され、売上の一部が差別撲滅の団体に寄付されるという仕組みで、僕はロンドンにいる2年の間、肌身離さずそれを身につけていた。

でもそんな理想とは裏腹に、日本人に対しての差別は明らかにあった。

卵を投げつけられる、目の前で猿の真似や、つり目をされる….。ほとんどの人が良い人ではあったけど、一部の心ない人がいたのも事実だ。あんなに憧れていたロンドンに住むことで、僕は「自分が日本人である」ということを強く実感させられたのだ。

そこで僕は、黒と白の2連リングに重ねるように、黄色いリングを身につけることにした。黄色人種としての誇りを持って、理想を貫く決意を新たにしたのだった。

「お前の腕に身につけているものは何だ?」と聞かれることも増え、僕の思いのたけを話し仲良くなったジンバブエ出身のおっちゃんに、お酒を奢ってもらったこともあった。

メキシコ人の友人・Davidにも同じように僕の思いを話したことがある。

話を聞いたDavidは一瞬押し黙ったあと、おもむろに自分が身につけていたブレスレッドを、僕に差し出してきた。

「いいか。俺は黒人でなければ、白人でもない。ましてや黄色人種でもない。俺たちは、このブレスレッドのように“褐色“だ。これは家族からもらった大切なものだけど、お前にあげるよ。その代わり、黒・白・黄に加えて、“茶“を、肌身離さず身につけてくれ」

Davidの思いを託された僕は、ロンドンにいる間中、シャワーを浴びてる時も、眠る時でも、常に4連のリングを身につけていた。

差別はいまだに根絶やしにされることはないけど、理想を持って生きることはできる。

マイエレメントの火・水・土・風が一緒に暮らし、違う元素同士でも触れ合うことができたように、黒・白・黄・茶が、本質的に交わりあう未来がもうそこまで来ている。

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