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バイトテロとコーポレートガバナンス

飲食店やコンビニなどのアルバイトによる不適切動画の投稿が社会的な問題となっています。食材を粗末にしたり、什器を不衛生に取り扱ったりとひどいものです。外食やその他食物を扱う店舗にとっては食品衛生は最重要事項であることは言うまでもなく、動画で扱われた食物が実際には顧客に提供されていないとしても、これらの動画の拡散により評判は大きく傷つくことになってしまいます。

被害のあった企業はニュースリリースで再発防止策に努めること、従業員教育を徹底することを謳っています。もちろん教育が重要であることは言うまでもなく、今回の事件に対する初手として適切と言えるでしょう。しかし従業員教育は万能薬ではありません。最初から悪意を持って組織に入ってきた場合、教育を行ってもその従業員の行動を変化させることはなく、やはり問題の芽は残ったままとなってしまいかねません。

これは少し視野を広げるとコーポレートガバナンスでも同様の問題があるとも言えます。コーポレートガバナンス・コードにより外形的には様々な変化が日本企業にここ数年で見られました。しかし企業の取締役がその変化が必要とされた意味や背景を理解せずに、外形だけを整えてもバイトテロ同様問題の芽は残ったままとなってしまいます。役員研修が必要なのは言うまでもありませんが、その中に必ず含めなければならないのは役員が持つべき倫理観についてです。

英国のコーポレートガバナンス・コードでは企業文化が企業の長期的な成功には不可欠であると明言しており、外形的な整備だけでなく、企業の構成員の意識や倫理観の重要性を説いています。時々、コーポレートガバナンスの仕組みの一部分を取り上げ、無意味と論じる人がいますが、適切な倫理観を持たない構成員がいれば、どんな仕組みも有効性を大きく失ってしまうでしょう。

バイトテロを愚かな若者の問題と切り捨てずに、自社の企業倫理を再考するきっかけとしてほしいと思います。


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