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「ドッツィーの手紙」が投げ掛ける動物愛護の新たな視点

訪日外国人旅行者数が急増し、その傾向は今後も続きそうです。2012年の836万人から2017年には2,869万人まで急増し、政府の「明日の日本を支える観光ビジョン会議」は2020年に4,000万人、2030年に6,000万人の目標を掲げています。これに伴い求められているのは旅行者の多様性への対応です。特に食事における配慮は日本の「おもてなし」の心を示す重要な側面ではないかと思います。

東京オリンピックを見据え、ベジタリアン向けやハラル認証等ここ数年で対応が進展してきた印象がありますが、「ドッツィーの手紙」は日本ではあまり意識されてこなかった新たな視点を提供しています。筆者のドッツィー・バウシュ氏は米国出身のサイクリングのオリンピック選手です。彼女は食用家畜のストレスを軽減する飼育方法を求めており、それは動物愛護の精神とともに栄養価にも影響を与え、摂取する選手のパフォーマンスの視点からも重要だと主張しています。

この動物愛護の視点は欧州ではBusiness Benchmark on Farm Animal Welfare(BBFAM)という団体による調査を経て、投資家にも注目されています。BBFAMは2012年より食品関連企業の同テーマに関する開示状況を毎年調査し、結果をウェブサイトで公表しています。食品関連企業とはいわゆるメーカーのほか、卸売・小売業や外食産業に属する企業を指し、最新の2017年調査では世界の110社の調査結果を公表しています。日本では小売業のイオンと7&Iホールディングスが評価対象となっていますが、6段階評価のうち最低で、ほぼ取組なしとの評価になっています。

もちろん飼育コストの上昇や調達ルートの変更等、即座の対応が困難な側面はあるほか、個人レベルでは同テーマに賛否両論あるのは容易に想像ができます。しかしこのような嗜好を持った外国人旅行者が訪れることを想定し、彼らに対して提供できる選択肢を準備しておく必要性はありそうです。



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