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SDGsに対する投資家の多様な対応

日本では公共・民間を問わずSDGsが浸透してきていますが、SDGsに関する行動を基に投資先を決める投資家の対応は多様です。世界でも代表的な3つの年金基金のインパクト開示の差について紹介したいと思います。

SDGsは様々な社会・環境問題の緩和を目標としているため、投資家は自身の投資先によりもたらされた社会・環境面でのインパクトを開示することになります。

ESG投資家であれば、それを開示するのが望ましいと思われるかもしれませんが、世界第2の公的年金基金であるノルウェー政府年金基金はこの考えを明確に否定しています。そもそも投資先が社会・環境面でのインパクトを実現できたのは同基金が投資したからであり、同基金が間接的にしか把握できない投資先のインパクトを開示する必要はないとの理由からです。確かに年金基金はその加入者に対する安定した年金財源を確保するために不断の努力を行っている上に、インパクト開示まで求められるとなると、業務負担増大が否めません。

一方、オランダの2つの年金基金はインパクトの達成目標を掲げて、その進捗を報告しています。医療関係者が加入する年金基金PFZWは2020年までに気候変動、水不足、医療の不足、食糧危機の緩和に資する企業・団体に200億ユーロ投資を行うと宣言しています。しかし足元の投資額は140億ユーロにとどまり、目標年が来年にもかかわらず達成するには相当の努力が必要な状況となっています。このような現状の理由として上記の4テーマに該当する投資先候補はあるものの、十分な収益性が見込めないことを挙げています。

もう1つはオランダ最大の公的年金基金であるABPです。ABPは2020年に投資先から発生している温室効果ガス(GHG)を2014年比25%削減する目標を掲げています。これに対し、2018年末時点で28%削減を達成しており、このままのペースを維持できれば、目標達成となる見込みです。

ここまで3つの年金基金のスタンスを見てきましたが、ESG投資家がSDGsに対する行動は多様です。収益性とインパクトを同時に追求するESG投資では手法によってメリット・デメリットがあるため、上記のどれが最も正しいと判定することはできません。しかしそれぞれのやり方でSDGs達成に向けた投資家以外の行動を促進していることは評価すべきでしょう。

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