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いいインフレ・悪いインフレ(需要と供給で考える)

原油や食料品などの価格上昇を受け、日本でもインフレ懸念が高まってきた。メディアなどには「悪いインフレ」との言葉が見られるが、この言葉がどう理解されているのだろうか。

「不景気とインフレが一緒に来るのが悪いインフレ」などと解説されているが、もう一つぼんやりしている気がする。

経済というのはどこまで言っても需要と供給である。だから、そこから説明すべきである。

通常、インフレとは消費が拡大し、需要が高まることを想定している。供給が一定で需要が高まれば価格は上昇する。作られるモノの量が同じで欲しいという人が増えるのだから当然である。普通の状態というか、アベノミクスで目指していた物価上昇はこのインフレである。需要を喚起することで一定程度のインフレにしようとしていた。

一方、今回懸念されているインフレは、需要が高まるのではなく、供給の低下が予想されている。原油などのエネルギー資源や小麦など食料品が、ロシアやウクライナから入らなくなることがその理由だ。

この場合でも需要が供給を上回るから、物価は上がる。つまりインフレになるのは同じである。

需要が供給を上回るという点ではいいインフレも悪いインフレもないのだが、モノが減るのは不景気、消費が増えるのは好景気と言われれば、感覚的にも納得できるだろう。

日本などの先進国の場合には、供給が低下することはあまり起こらないし、起こっても一時的なものがほとんどである。内戦が勃発するような途上国ならともかく、日本で急に多くの工場が停止するとか、突然輸入が停止するなど、そう頻繁にあることではない。

あるとしたら、大規模災害か、今回のような戦争である。

今回の供給懸念は、コロナ禍からの回復で米欧の需要が急速に伸びているのに比べて途上国では回復が遅れるなどして元々供給不足が起こっていた上に、ウクライナでの戦争が重なってさらに深刻化しているのである。

そう考えれば、アメリカの中央銀行であるFRBが景気後退局面にも拘わらず金融引き締めの方向に動いていることも理解しやすい。

本来は金融引き締めは景気の過熱に対応するもので、つまりは需要が十分以上に拡大しインフレが行き過ぎた場合に発動する。だがアメリカは今でもインフレで、今後は供給の低下でさらにインフレに向かうと予想される。これ以上のインフレは耐えられないだろうから、景気に悪影響があっても引き締めざるを得ないのだ。

ちなみに金融緩和・引き締めも、通貨の需要と供給で説明できる。経済を理解するには、あれこれと細かな用語の意味を追うよりも、需要と供給で考える方が近道なのである。

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