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減税しても犯罪の少ない社会の実現に成功した星の話

物語の設定

宇宙人が未開の星に移住するという設定で、架空の星に経済と環境の両立を実現する理想社会をつくってみました。

その星に住む移住者たちは、環境問題だけでなく、いま我々が有効な解決策が見つからず困っている様々な課題の克服も試みています。

ここでは、移住者たちがどのようにして難題を解決したのかを続き物で紹介していきます。
ガイド役は、理想社会の創造に携わった移住者が務めます。
では、お楽しみ下さい。

前回の話

前回は、宇宙移民の考えた商業を活性化するイノベーションを紹介しました。
その記事はこちらです。

最初の記事はこちら
これまで書いた記事の目録はこちら
持続可能な社会のつくり方について書いた記事はこちら
理想社会の設計方法について書いた記事はこちら

今回の話

今回のテーマは防犯です。

警察庁のあげた刑法犯認知件数の総数を見ると、平成14年をピークに減少が続き、令和3年には戦後最少を更新するなど、世界で最も安全な国であるといわれる日本の治安はますます良くなっていることが伺われます。

しかし令和3年に警察庁がとったアンケートでは、最近の治安の状況について悪くなっていると感じていると回答した人の割合が64%と、犯罪が減少している現実とは違った結果になっています。
令和2年のアンケート結果と比べてみても、最近の治安の状況について悪くなっていると感じていると回答した人の割合が8%も増えており、よりそのギャップが鮮明になっています。

こうしたギャップが生まれる原因には、メディアの発達で昔よりも多くの事件をクローズアップできるようになったことで、犯罪が増えていると錯覚してしまうことがあるかもしれません。

しかし治安が悪化する方向へ進んでいるのは錯覚とはいえない状況になってきました。
犯罪は、恐慌や戦争などで急増すると言われています。
貧困やストレスが増加したり、政治への不満などが高まったりすることで、窃盗や殺人、テロなど様々な犯罪が発生しやすくなるからでしょう。

今の世の中を見ると、不景気で収入が増えないのに、あれもこれも値上がりし、その上、増税など国民の負担を高める政策ばかりが行われています。
国の借金も少子高齢化も日本は世界最悪であることを考えると、国民負担率は上昇し続け、生活苦で追いつめられる人や政治への不満が増えていくことが予想されます。

すでに、治安の悪化を証明するような事件も増えてきました。
たとえば、無差別大量殺人事件や元首相への銃撃事件などです。
日本はもはや安全な国とは言えなくなったと実感する人が増えたのは、余所事よそごとと考えていたような凶悪事件の増加を見ているからでしょう。

さらに、いつ核兵器が使われるかわからない戦争も起きており、新たな戦争が起こるリスクも高まっていることを感じさせる威嚇いかくも多発するようになってきました。
世界秩序が崩れたことで世界経済の悪化も進んでおり、ますます私たちの生活は苦しくなっていく恐れがあります。

その悪い予感が的中して犯罪が増加すれば、治安維持のために予算も人員も増やさなければならなくなります。

しかし今ですら、警察官の人手不足は深刻です。
少子化も止まらないので、さらに人手が足らなくなるでしょう。

予算も、人口減による税収減などで足らなくなる一方なので、防犯力を強化するのは難しくなるに違いありません。

そうなると、防犯は自分で強化するしかなくなり、防犯にお金をかけられない人を守るのは難しくなる安全格差社会になってしまうかもしれません。

これから登場する宇宙移民は、低コストで防犯力を強化できる方法を発明しました。
また効率よく犯人を捕まえる方法や犯罪者にさせない方法も考えました。

では、その秘策を見ていくことにしましょう。

治安の悪化を止められなくなる4つの問題

私たちが防犯イノベーションを行う必要があると考えた理由は、私たちが前に住んでいた星の失敗を見たからです。

とくに私の故郷の国は、治安の悪化にうまく対応できませんでした。

私の故郷の国が治安を維持できなくなった理由をあげると、次の4つです。

  • 犯罪が激増した。

  • 犯罪が高度化した。

  • 警察の人手不足が深刻化した。

  • 財政難で予算が不足した。

つまり人員も予算も足らないのに、その処理能力をはるかに超える仕事量になったことで対応できなくなってしまったのでした。

しかし故郷の星の失敗から、この4つの問題が防災イノベーションで克服しなければならない課題になることもわかりました。

この課題を解決するには、まず問題の原因を知る必要があります。
そこで次は、この4つの問題が発生した原因を究明していきましょう。

犯罪が激増した原因

私の故郷の国で犯罪が激増した最大の原因は、格差社会の進行がありました。

格差社会とは、富裕層と貧困層の両極化など個人間の格差が拡大している社会のことを指すだけでなく、首都一極集中など地域間の格差が拡大している社会、さらには富裕国と貧困国など国家間の格差が拡大している社会を言います。

格差社会が犯罪増加につながる理由は、犯罪をしなければ生活できなくなるほど困窮したり、生活苦から抜け出せず自暴自棄になったり、格差社会になる改革を行った政治家に強い恨みをもつ人が増えたりするからです。

格差社会がどのように犯罪に影響するのか、関連性のある犯罪をいくつかあげて簡単に説明しましょう。

✓  殺人
生活が苦しく絶望感が強くなったり、割に合わない仕事に強い不満を抱えて怒りや恨みが募ったりすると、無差別殺傷事件などの殺人事件が起きやすくなります。

生活難になると夫婦喧嘩も激しくなりがちになるので、家庭内での殺人も発生しやすくなります。
また貧困は、嬰児えいじ殺しや一家心中も増加させます。

✓ 傷害
傷害事件も殺人事件と同様な理由で起きやすくなります。

✓ 窃盗・強盗
窃盗や強盗も、低収入で食べていかれなくなる人が増えると増加します。

私の故郷の国では万引などの窃盗犯の割合は、若者よりも中高年のほうが高かったです。
その背景には少子高齢化社会がありましたが、それ以上に若者よりも中高年は就職が厳しく、特に高齢者は年金が少なくなる一方で生活難に陥りやすかったことが大きな原因でした。
また少子化で頼れる子どもが少なくなったことも、高齢者を追い込むことになりました。

移民の窃盗も目立っていました。
移民は国民よりもさらに低賃金で重労働を強いられ、社会保障や地域社会などでも差別を受けるため、窃盗をしないと生きていかれなくなっていたからです。

✓ 詐欺
詐欺も格差社会が進むと増加します。
待遇の良い職場に就職できるチャンスが少なくなり、真面目に働いても貧困から抜け出せなくなると、詐欺で荒稼ぎしようと考える人が増えるからです。

私の故郷の国では、だましやすい高齢者をターゲットにする特殊詐欺が多く発生していました。

✓ 器物損壊
器物損壊も格差社会が進むと増加します。
格差社会でストレスや不満が高まると、怒りや恨みを物にぶつけることが増えるからです。

✓ 放火
格差社会が進んでストレスや恨みが深くなると、鬱憤うっぷん晴らしや腹いせで放火をする人が増加します。

生活難が極まって自殺目的に自宅を放火する人も増えます。

✓ 性犯罪
低収入で仕事が不安定になると、性犯罪が増加しやすくなります。
性欲を晴らしたくても、結婚ができなくなったり、風俗へ行くお金もなくなったりするからです。

また過重労働でストレスが溜まるのも、性犯罪にストレス発散を求める人を増やしてしまいます。

✓ 虐待
虐待も格差社会でストレスがたまると増加します。

生活が苦しくなるとドメスティック・バイオレンスが増え、離婚率があがります。
それにより、ひとり親世帯が増えることも、格差社会を広げます。
その結果、児童虐待がさらに増加する悪循環に陥ってしまいます。

生活難で親の介護費用を出す余裕がなく、しかも少子化で一人で親の介護をしなければならなくなる人が増えることも、高齢者虐待を増加させます。
仕事と親の介護の両立が大変になって、ヒステリックになりやすくなるからです。

✓ 交通事故
格差社会では、安い賃金で過重労働をさせるブラック企業が増えます。
価格競争が激しくなって、バス会社や運送会社、タクシー会社などの交通事業でブラック企業が多くなると、交通事故が増加します。

私の故郷の国では、過労が原因で、居眠り運転をして事故を起こす運転手や、運転中にくも膜下出血や心筋梗塞などを発症して事故を起こす運転手が増加しました。
中には、運転手が意識を失って乗客の半分以上が亡くなる痛ましいバス事故もありました。

また格差社会で怒りやストレスがたまると、あおり運転や飲酒運転も増加します。

地域間の格差も、交通事故増加の原因になります。
私の故郷の国では、人口減少で公共交通が衰退した地方はマイカーをもたないと生活ができなくなったことで高齢者ドライバー事故が増加し、大きな社会問題になりました。

✓ 企業犯罪
格差社会が進んで価格競争や下請けいじめなどが激しくなると、偽装や手抜き工事などの不正を行わないとやっていかれなくなる企業が増えてしまいます。

収入が減ると、生活が苦しくなったり、借金を返せなくなったりするので、着服などの不正も増加します。

✓ テロ
弱者を追い詰める改悪ばかりを行う政治になると、首相など与党の政治家に殺意を抱く人が増えます。

✓ 薬物乱用
ストレスや不安が強くなる格差社会では、現実逃避のために薬物に助けを求める人が増えます。
アルコール中毒やギャンブル中毒も同じ理由で増えます。

なぜ格差社会が加速したか

犯罪が激増した背景に格差社会があるといっても、格差社会の問題を解決するのは容易ではありません。
なぜなら格差社会は様々な要因がからまりあって生じる問題だからです。

様々な要因のなかから、とくに大きな要因をあげると次の3つになります。

  •  不況

  • グローバル化

  • 少子高齢化

まず、不況が格差社会の大きな要因になる理由は、私の故郷の国では格差社会の扉を開けたのが大不況だったからです。

その大不況で多くの企業の経営が苦しくなり、人件費削減に走ったことで、収入が減ったり、リストラされたりする人が増えて格差が拡大したのでした。

さらに政府も経営者の味方をするように、安価に人材確保でき、解雇もしやすい非正規社員をすべての職種で雇えるようにしたことが格差社会を助長しました。

次に、グローバル化が格差社会の大きな要因になる理由は、国外の強敵と激しい価格競争をしなければならなくなることで、人件費の安い国に勝つためにさらに人件費が削られたり、人件費の安い国に工場を移すことで仕事を失う人が増えたりするからです。

おまけに政府が規制緩和を進めたことで、ライバルがさらに増え、価格競争も一層激化、格差がますます拡大することになりました。

またグローバル企業が稼いで景気が良くなったと言われても、それを実感できる人が少なくなりました。
グローバル企業が稼いだ富の多くは、国外の従業員や下請け企業、取引先に流れ、その地で消費されるので、国内に流れる富が減ってしまうからです。

グローバル化でトリクルダウン効果が薄まります

最後に、少子高齢化が格差社会の大きな要因になるわけは、支出を減らし収入を増やす仕組みにしないと公的年金制度や健康保険制度などを維持することができなくなるという理由で、国民負担率の上昇が止まらなくなるからです。

私の故郷の国は世界一の借金大国であったので、余計に国民への負担が重くなる改悪が行われました。

格差社会がひどくなると、再犯者を減らすのも難しくなります。
前科者にはさらに厳しい世の中になるため、刑務所にいるほうがマシだと考え、刑務所に入るために犯罪をする人が増えてしまうからです。

犯罪が高度化した原因

犯罪が高度化した原因は、インターネットなどの科学技術が急速に進展したことにありました。

科学技術が発達するほど、巧妙に人をだませる技術も向上でき、自らの痕跡こんせきを消すことも可能になります。

また新技術を悪用して次から次へと新しい犯行手口が発明されるので、従来の捜査手法がすぐに陳腐化してしまう問題もあります。

さらにインターネットを使えば、国外からの犯行も可能になります。

サイバー犯罪者をつかまえるのが困難になるのは、以上の理由です。

警察の人手不足が深刻化した原因

私の故郷の国で警察官が慢性的に人手不足になった一番の理由は、予算の無駄遣いができないため欠員の数しか新規採用できず、しかも新規採用された者の2〜3割が警察学校でを上げて辞めてしまったからでした。

それに加えて、警察官のなり手も減っていました。
その原因は2つありました。

1つ目の原因は、少子化でした。

地方はさらに人口流出も激しかったので、余計に警察官の応募の激減に困っていました。
その結果、首都では一人の警察官が受け持つ住民の数が300人であるのに対し、地方はその倍を超える700人の住民を一人の警官が受け持つという深刻な人手不足になっていました。
これではキャパオーバーになってしまい、国民の安全を守れなくなるのも無理はありません。

2つ目の原因は、警察官の仕事が激務で魅力に乏しかったからです。

警察官の仕事は人々の安全を守る素晴らしいものですが、相手にするのは凶暴な犯罪者なので危険な目に遭います。

また夜勤があったり、休日もあまり取れず自宅に帰れない場合もあったり、他の職場以上に規律が厳しいのでストレスがたまったりします。
しかも公務員には基本の労働時間を定めるなど労働者の権利を守る法律が適用されません。
その結果、警察官を辞めたり、精神を病んでしまったりする人が増え、人手不足に拍車がかかってしまったのです。

警察の仕事が大変なことが知れ渡ると、他に選べる職場がたくさんある優秀な人ほど警察に就職したがらなくなります。
生産性の高い優秀な人が入ってこなくなるこの問題も、人手不足感を強める原因になりました。

財政難で予算が不足した原因

私の故郷の国が財政難になった原因は、格差社会の要因でもあげた不況や少子高齢化など外的要因もありましたが、政府自体も財政難の原因をつくっていました。

そもそも格差社会の扉を開いた大不況は、政策ミスが原因で発生したものですし、所得格差や地域間格差が拡大したのも、政府が派遣業種原則自由化などの規制緩和や首都一極集中を進めた結果です。

また財政が悪化しているにも関わらず、ずさんな財施運営を続けたり、愚かな軍拡競争に税金をつぎ込んだり、政治家の権力や利益を大きくするために公費を使い込んだりしていました。

格差社会が進んで治安が悪化したことで治安維持のための予算を増やす必要が生じたり、受刑者が増加したことで刑務所などの経費が増えたりしたことも、財政悪化を進める原因になりました。

警察が悪用される問題

犯罪を増加させる原因をつくっている政治を改善しなければ、防犯力強化の目的は間違った方向に行ってしまいます。

私の故郷の国では同じ政党が長く与党を続けた結果、政治腐敗がひどくなりました。
与党の政治家たちは自分たちの思うような政治が行えるように、人事権を使って三権分立を機能不全にしたり、数の暴力で国会を形骸化して悪事を秘密にできる法律をつくったり、政府を批判する者を罰することができる法律をつくったりしました。

警察は行政の長である総理大臣に逆らうことができないので、そういう悪い政治を行う国家権力を守るための暴力装置になってしまいました。

これにより、防犯力が強化されても国民は幸せになりませんでした。
防犯力強化の名の下にプライバシーが侵害される監視社会になったので、国民のストレスは余計に溜まってしまったからです。

また民主主義国家を破壊しているのは政府であるのに、民主主義を取り戻そうとする人たちがマークされ、逮捕される、おかしな世の中になってしまいました。

防犯イノベーションで取り組むべき4つの課題

私たちは防犯イノベーションで次の4つの課題を克服することが重要だと考えました。

成功の秘策を見つけたぞ!

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