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宇宙移民に学ぶ買い物難民と中心市街地衰退の解決策

物語の設定

宇宙人が未開の星に移住するという設定で、架空の星に経済と環境の両立を実現する理想社会をつくってみました。

その星に住む移住者たちは、環境問題だけでなく、いま我々が有効な解決策が見つからず困っている様々な課題の克服も試みています。

ここでは、移住者たちがどのようにして難題を解決したのかを続き物で紹介していきます。
ガイド役は、理想社会の創造に携わった移住者が務めます。
では、お楽しみ下さい。

前回の話

前回は、宇宙移民の考えた低コストで防災力を最強にするイノベーションを紹介しました。
その記事はこちらです。

最初の記事はこちら
次の記事はこちら
これまで書いた記事の目録はこちら
持続可能な社会のつくり方について書いた記事はこちら
理想社会の設計方法について書いた記事はこちら

今回の話

今回のテーマは商業です。

商業は住民の生活になくてはならないものであり、地域経済の活性化にもとても重要な役割を果たします。

しかし多くの地域では、シャッター通り商店街や買い物難民の問題が発生しており、それらの問題の有効な解決策が見つからず困っています。

また中心市街地の活気を取り戻すために多額の資金をかけて再開発を行っても、大した効果があがらなければ、税金の無駄遣いに終わってしまいます。
少子化や人口流失などで税収が落ち込んでいる厳しい財政状況で、そのような浪費を続けることは財政破綻に陥る地域を増やしてしまうことになりかねません。

国も世界一と言われるほど大きな借金を抱えています。
こうした問題を抱えた地方と商業施設が過剰にある首都から成るコストパフォマンスの悪い構造では、ますます借金が膨張して国も立ち行かなくなる恐れがあります。

これから登場する宇宙移民は、これらの問題を解決する方法を発明しました。しかもそれはとてもコストパフォーマンスに優れています。
今回はそれを紹介していきます。

では、その秘策を見ていくことにしましょう。

商業イノベーションが必要な理由

商業イノベーションを行わないと、方向性を間違えた「まちづくり」に税金が浪費され続け、持続可能なまちづくりに失敗することになります。

私たちが考えている商業イノベーションに必要な方向性とは、次の3つです。

  • 費用対効果を高くする。

  • 平等に便利にする。

  •  環境負荷を低くする。

これらの方向性が重要だと考える理由を説明すると、以下の通りです。

  • 費用対効果を高くする。
    【理由】費用対効果が高くないと財政難になり、持続可能なまちづくりができなくなる。

  • 平等に便利にする。
    【理由】一部の住民しか恩恵を受けられないまちづくりは失敗である。

  •  環境負荷を低くする。
    【理由】環境破壊を広げるまちづくりでは、持続可能な社会を実現できない。

これに対して、私が以前住んでいた星の故郷の国は真逆のことを行っていました。

しかし私の故郷の国は、真逆の方向に進もうと考えていたわけではありません。
私たちと同じ方向性をもっていたにも関わらず、なぜか逆の方向に進んでしまったのです。

どうしてそうなったのか?
まずは、その原因を考えてみましょう。

費用対効果を悪化させる原因

私の故郷の国のまちづくりの費用対効果を悪化させていたのは、実効性の低い中心市街地の再開発と際限のない郊外化でした。

中心市街地の再開発がうまくいかなかった原因には、商店主や地権者の意欲の欠落や合意形成の難しさなどいろいろありましたが、最大の原因は郊外に進出した大型店でした。

中心市街地の商店街が郊外の大型店に勝てなかった理由をあげると、次のようなものがあります。

  • 郊外のショッピングセンターに比べて中心市街地の店の多くは、品揃えが悪く、値段も安くなかった。

  • 郊外のショッピングセンターが明るくモダンで広々としていたのに比べ、中心市街地は古臭く狭苦しい店ばかりで、ここで買物をしたいと思えなかった。

  • 郊外のショッピングセンターの駐車場は広くて無料であったのに対し、中心市街地の駐車場のほとんどは有料で狭くて駐車しにくかった。

  • マイカー社会で電車やバスを利用する人が減ったことで、中心市街地の駅前に商店街があることの強みが失われた。

  • 人口が増加する郊外に対し、中心市街地は空洞化が進んでいた。

  •  後継者問題がない郊外のショッピングセンターに対し、中心市街地の商店街の多くの店は後継者問題に悩んでいた。

  • 郊外は地価が安く大型店を出しやすいのに対し、中心市街地はシャッター通りにも関わらず家賃が高いため空き店舗が埋まらなかった。

一方、際限のない郊外化も、費用対効果を悪化させる拡散型都市構造を進めてしまうので、財政悪化の原因になっていました。

また郊外の幹線道路沿いには、同種のロードサイド店舗が近くにいくつもあるなど、オーバーストアの無駄が生じていました。

そうしたチェーン店にある広大な駐車場も無駄を生んでいました。
店側には集客力を高めるために必要でも、全体的な視点に立てば商売に使える土地を奪う大きな無駄になるからです。

この他、中心市街地にも郊外にも、立地に恵まれる場所にミスマッチな建物があるなど、有効活用されていない問題がありました。

平等性を低下させる原因

平等性の低下を招いていたのは、次の4つの原因でした。

  1. 一極集中

  2. 無秩序な居住エリアの拡散

  3. 出店競争

  4. 少子高齢化

1.一極集中の問題
一極集中とは、首都に経済・政治・行政など国の中核機能が集中することです。
その結果、首都は転入者が増えて繁栄するのに対し、地方は転出者が増えて衰退してしまいます。

私の故郷の国が平等に便利に暮らす環境をつくれなくなってしまった原因は、一極集中で首都と地方の格差が激しくなってしまったことにあります。

また一極集中で地方が衰退してしまうと、物価も上昇するリスクが高まります。
私の故郷の国は食料自給率がとても低く、農業を支えていたのは地方に残った高齢者でしたので、地方が衰退して生産者である高齢者も亡くなってしまうと、ますます他国に食料を依存しなければやっていかれなくなってしまったからです。

私の故郷の国が食料自給率の低さに危機感を抱かなかった理由は、かつては世界の工場と言われるくらい経済力があったので、工業製品を輸出して食料を輸入するほうが合理的だったからです。

しかしグローバル化が進んで強敵が増えたり、世界人口の増加や温暖化による不作・不漁などで食料不足が生じたりすると、食料自給率が低い国ほど食料不足と物価上昇が激しくなってしまいます。

しかも私の故郷の国は島国で、海を隔てた遠い国から輸入しなければならなかったので、余計に多く運送費を払わなければなりませんでした。
その上、原油も不足して燃料費が高騰したことで、さらに運送費が上昇し、とんでもない物価高になりました。

それに加えて、増税や水道光熱費の値上げなども止まらなかったので、生活苦に追い込まれ、生活必需品を買えなくなる国民を増やすことになってしまいました。

2. 無秩序な居住エリアの拡散
無秩序な居住エリアの拡散も、格差を拡大する原因になります。
無計画な開発が同時多発的に進められていくと、インフラ整備や都市機能の充実が間に合わなくなってしまうからです。

こうした問題は、過集中により都心部の地価が高騰した結果、都心部の周辺地域に住居を求める人々が続出することなどで発生しました。

無秩序な居住エリアの拡散は地方でも発生しましたが、地方は首都よりも大きな社会問題を抱えることになりました。
特に大きかったのは買い物難民の問題です。

拡散型都市構造にすると大量の買い物難民が生まれる理由は、職場や商業施設、医療施設などが無秩序に散らばってしまうことで、車がないと生活ができなくなってしまうからです。

また自動車社会が進展すると、路線バスなどの利用者が激減して地域公共交通も衰退してしまいます。それも買い物難民の増加に大きな影響を与えることになりました。

商業施設から離れた場所に暮らす高齢者のみの世帯はマイカーを手放すと、買い物にとても苦労することになりました。
まとめ買いをすることで買い物頻度を減らしたくても、体力の低下した高齢者は多くのものを持ち帰れないので、逆に買い物頻度を増やさなければならなかったのです。

医療機関も離れていれば、通院も大変になりました。
診療を受けた後、足腰の弱った体で、さらに薬局にも行かねばならない苦労もありました。
カツカツの年金暮らしではタクシーを思うように使えないので、大変でも徒歩で移動せざるをえなかったのです。

そういう不便を味わいたくなくって車を手放せない高齢者が多くいましたが、これも大きな社会問題を起こしていました。
それは、高齢ドライバーによる重大事故です。

高齢者事故を減らすため、自動車メーカーは競うように事故を起こさない車の開発を進めていました。
しかし安全性能が向上するに従って価格も上昇するので、生活が苦しい高齢者は簡単に車を買い替えられませんでした。
その結果、この問題もなかなか改善しませんでした。

買い物難民の問題は、過疎化が進んでいる地域ほど深刻でした。
高齢者のみの世帯でも子供が近くに住んでいればいろいろ助けてもらえますが、仕事のない不便な田舎に行くほど子供は遠い都会に出てしまうからです。

そうなると頼みの綱は宅配サービスや移動スーパーですが、それも過疎地になるとエリア外になるケースが多くありました。

買い物難民の問題を解決すべく、運賃割引や移動販売の補助金など行政も様々な対策を講じていましたが、根本的な解決策ではないので、その多くは赤字の垂れ流しになり、税金の無駄遣いが上乗せされていきました。

3.出店競争
出店競争が起こると、歩いて買い物に行ける距離にあった環境が破壊されるリスクが生じます。

とくに激戦区では変化が激しく、利便性が安定しなくなります。
また超大型ショッピングセンターの進出で一強多弱構造になってしまうと、小さな商店が潰れたり、店舗撤退が増えたりして、近所で買い物をするのが難しくなってしまいます。

出店競争は、産業空洞化や離農を進める一因にもなります。
客の取り合いに勝つためには、ライバル店よりも少しでも安い商品を並べることが重要になります。
そうなると、人件費の安い国でつくられた製品が競争力をつけてしまい、生産拠点を海外に移す傾向が進んでしまうからです。

4.少子高齢化
少子高齢化で平等性が低下する理由は、人口減少と高齢化による税収減で財政が悪化することにより、格差是正に必要な予算をつくれなくなってしまうからです。

それどころか、社会資本の維持管理・更新すらも難しくなり、選択と集中で人口の少ない地域から見捨てられていくことになります。

人口減少が加速すれば、首都も例外ではなくなります。
私の故郷の国は後先を考えずに首都に過集中を進めた結果、地方都市の何倍も維持費用がかかる金食い虫の都市になり、人口縮小と高齢化の進展につれ、分不相応な大都市の老朽化問題に対応できなくなってしまいました。

環境負荷を高くさせる原因

環境負荷が高くなる理由は、無計画な宅地開発が行われることで自然破壊が無駄に拡大してしまうからです。

そして無秩序な居住エリアの拡散で家族それぞれがマイカーを持たざるをえなくなるのも、環境問題を悪化させます。
マイカーの使用頻度や走行距離が増えることで環境負荷を高めてしまうだけでなく、自動車の生産量も増やしてしまうからです。

また、そのような無駄の多い都市を維持するために経済を大きくしなければならなくなることも、環境負荷を高めてしまうことになりました。

商業イノベーションの成功のカギになる3つの適正化

私たちは故郷の星の失敗から学んで、次の3つを適正にすることが商業イノベーションの成功に重要になると考えました。

成功の秘策を見つけたぞ!

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