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戦争のない世界の実現に成功した星の話

物語の設定

宇宙人が未開の星に移住するという設定で、架空の星に経済と環境の両立を実現する理想社会をつくってみました。

その星に住む移住者たちは、環境問題だけでなく、いま我々が有効な解決策が見つからず困っている様々な課題の克服も試みています。

ここでは、移住者たちがどのようにして難題を解決したのかを続き物で紹介していきます。
ガイド役は、理想社会の創造に携わった移住者が務めます。
では、お楽しみ下さい。

前回の話

前回は、宇宙移民の考えた政治の暴走を防ぐイノベーションを紹介しました。
その記事はこちらです。

最初の記事はこちら
次の記事はこちら
これまで書いた記事の目録はこちら
持続可能な社会のつくり方について書いた記事はこちら
理想社会の設計方法について書いた記事はこちら

今回の話

今回は、宇宙移民の考えた世界平和を実現するイノベーションを紹介します。

世界は今、ロシアのウクライナ侵攻でロシアと欧米の対立が深まり、ロシアの攻撃がウクライナの味方をする国々に向けられる可能性があるとても危険な状態におかれています。
また中国による台湾侵攻の脅威もあります。
さらに北朝鮮のミサイル発射による威嚇いかくも激しくなっており、戦争の足音が近づいている恐怖を感じるようになってきました。

非民主主義国のほうが多数派になる逆転現象が発生するなど、民主主義が退潮しているのではないかという懸念も広がっています。
それによりたとえば、香港の民主化運動の弾圧や新疆しんきょうウイグル自治区での人権問題など中国政府の非人道的な行為に対して、国連などの場において中国支持派の非民主主義国に圧されるケースが増えてきました。
そのようなことになるのは、中国が非民主主義国や民主主義が後退している国を支援して味方を増やしているからだと言われています。

これでは国際的な会合で、民主的に多数決で問題解決をするのは難しくなります。
そしてそれが原因で、核兵器が使用される世界大戦が勃発することになったら、温暖化と合わさって地球は快適に暮らせる環境でなくなり、人類にはもう明るい未来が訪れることはないでしょう。

そういう悲惨な結末を迎えないためには、手遅れにならない今のうちに、世界平和を実現するアイデアを出し合う必要があると思います。
宇宙移民は、軍拡競争で抑止力を高めなくても世界平和を実現できる方法を考えました。
戦争がない世界をつくるには何が大切なのか、ぜひ参考にしてください。

平和憲法を改正してもしなくても平和は守れない

私が前に住んでいた星の故郷の国は、戦争放棄と戦力不保持を誓った憲法をもっていました。

それに対し、次の2つの意見に割れていました。

  • 平和憲法を守る

  • 平和憲法を改正して、国を守れるようにする

しかし、そのどちらを選んでも平和を守ることはできません。
私たちはそれを故郷の星の失敗から学びました。

なぜそのような結果になるのか?
まずは、その理由を説明しましょう。

平和憲法で平和を守れない理由

平和憲法で平和を守れない理由は、それがその国の平和を守るためでなく、他の国の平和を守るためにつくられたものだからです。

私の故郷の国が平和憲法をつくることになったのは、前の世界大戦に敗北したからでした。
それで戦勝国から世界平和のために二度と戦争をしませんと憲法に明文化することを求められたのです。つまりこれは不戦国にする誓約書なのです。

それでも平和憲法を守るべきだという国民が多かったのは、平和憲法には戦争を遠ざける効果があったからです。

なぜなら喧嘩を買わなくなると、喧嘩になるリスクが低下するからです。

しかし一方的に喧嘩を売ってくるおかしな国がなくなるわけではありません。
そしてそのような話し合いが通じない国に襲われても何もできなければ、やられっぱなしになってしまいます。これでは国民を守ることはできません。

また世界平和のために他国が戦っているのに平和憲法を理由に我関せずでは、自分の国が攻撃を受けた時、他の国から同じ態度をとられてしまう可能性もあります。

平和憲法で国の安全が保てるのなら、私の故郷の国に平和憲法にすることを強要した戦勝国も平和憲法にしているはずです。
しかしその戦勝国は平和憲法とは真逆で、世界一の軍事力をもつことで自国の平和を守るという発想でした。

もし平和憲法で世界平和を実現するのならば、すべての国を平和憲法にするしかありません。

矛盾を避けられない平和憲法

前述したように平和憲法には、こちらが戦争をする気がなくても、一方的に喧嘩を売ってくる国から平和が脅かされるという問題があります。

この問題に対処するには、どうしても軍事力が必要になります。
そうしたことから、平和憲法は必然的に矛盾を抱える運命にあります。

ちなみに私の故郷の国はこの問題に対し、次の2つの方法で対応していました。

  •  自衛隊をもつ

  • 同盟国に守ってもらう

つまり、防衛は自分たちで行い、攻撃は同盟国に頼るという役割分担で国を守ろうとしたのでした。

護憲派の国民からは当然、「自衛隊は戦力を使うのだから平和憲法に違反している」という抗議がありました。
それに対して政府は、「正当防衛のために使うのだから暴力にならない」とし、さらに「必要最低限度の実力行使しかしない」と述べ、自衛隊は違憲ではないと主張しました。

同盟国に守ってもらう方法は、自分たちは反撃に加わらないので、憲法違反にはなりません。

しかし自分ではやり返せないから、誰かに頼んで敵をやっつけてもらうのは、自らの手を汚さない共犯者に過ぎません。

しかも私の故郷の国が守ってもらっていた同盟国は、祖国に平和憲法を強要した世界一の軍事力をもつ戦勝国でした。
これでは虎の威を借る狐のようになってしまい、他国から見ればますます卑怯な国に見えてしまうでしょう。

憲法改正で平和を守れない理由

私の故郷の国は、国を敵国から守るために次の3点の憲法改正を行いました。

  • 憲法に自衛隊を明記する

  • 敵基地などへ先制攻撃ができるようにする

  • 同盟国のために戦えるようにする

上記の3点のうち、「同盟国のために戦えるようにする」のが国の平和を守るのにどうして必要なのか、理解できない人がいるかもしれません。

確かに、同盟国のために戦うと、やらなくてもよい戦争を増やしてしまうことになります。

しかし同盟国の立場になれば、自分だけが同盟国のために戦うのでは、Win-Winの関係になりません。
そのような不平等な状態が続いたら、同盟国からいつか同盟を破棄されてしまうでしょう。

私の故郷の国の政治家たちが、国の平和を守るには同盟国をもつほうが得策だと考えた理由は、次の2点です。

  • 同盟国の支援があったほうが、防衛力を強化できる

  • 独力で同等の軍事力をもつよりも防衛費を小さくすることができる

同盟国もそれを同盟の目的にしているはずです。
だから彼らは、同盟国のために戦う憲法にする必要があると考えたのでした。

では、なぜこの憲法改正で平和を守れなくなるのか。
その理由は、次の3つです。

  • 大きな戦争に巻き込まれるリスクが高くなる

  • 政府が信用できない

  • 同盟が当てにならない

次は、この3つの問題について説明していきましょう。

大きな戦争に巻き込まれるリスクが高くなる

戦争ができる国にするということは、平和憲法であるよりも戦争に巻き込まれるリスクが高くなります。
なぜなら、売られた喧嘩を買う国になるからです。

さらに、やられる前にやることも可能になるので、喧嘩を売って自ら戦争を増やすことにもなります。

また同盟国で起きた戦争にも参加するとなれば、戦争に巻き込まれるリスクは倍増します。
もちろん、同盟国を増やすほど、参加しなければいけない戦争が増えてしまうので、そのリスクは格段にあがります。

同盟国を増やせば、敵対勢力も同盟国を増やして挑んでくるので、戦争の規模も大きくなります。
また覇権争いをしている国と同盟を組むことも、軍事大国どうしの戦争になるので、大きな戦争に巻き込まれるリスクが高くなるといえるでしょう。

憲法改正をして防衛力を強化しても国の平和を守れると限らないのは、戦争も勝者と敗者がいる勝負の世界だからです。

敵対勢力に負けないために、多国間で軍事協力する体制をつくれば、勝利する確率があがるかもしれませんが、どちらに転ぶかは戦ってみなければわかりません。

たとえ勝利しても激戦になれば、自分の国も膨大な数の犠牲者を出してしまいます。これでは国民を守れたとはいえなくなります。

またそれで敗戦国の敵愾心てきがいしんが強まり、報復戦争が繰り返される未来になれば、戦争ができる国にすることは、世界平和を実現できる最善策とは言えなくなります。

政府が信用できない

憲法改正案をつくるのは、政治家です。
そして、それで認められた戦力をどのように使うか決めるのも政治家です。
なので、憲法改正でいちばん重要になるのは、政治家を信頼できるかどうかです。

私の故郷の国は、その点において問題があったため、政府の暴走を止められなくなってしまいました。

私の故郷の国の政府の宿願は、敗戦前の国家に戻すことでした。
敗戦前の国家は、国家権力がとても強く、政府が行う戦争に国民は批判できませんでした。
また当時の政府は、国民を戦争で自由に活用できる権限ももっていました。

その絶大な権力を取り戻すために、与党の政治家たちは様々な手口を使い、敗戦前の憲法に巧みに近づけていったのです。

敗戦前の憲法は、政府の権限で戦争ができることが認められていただけでなく、国民の自由や権利を侵す法律をつくることが認められていました。
つまり政治権力よりも国民をしばる憲法だったのです。

政府が憲法にしばられる対象を自分たちから国民に変えたかった理由は、せっかく大きな軍事力をもてても、憲法や世論に抑え込まれてしまうと、自分たちの野望を達成するためにそれを活用することができなくなるからでした。

しかし憲法改正には、国民投票という高いハードルがあります。
戦力をもてる憲法にすることは「敵国の脅威が高まっているなかで、軍隊をもたない平和憲法は時代に合わない」と訴えることで、国民から理解を得ることができますが、国民の人権や自由を侵害できる憲法に変えることは、適当な理由を見つけることは難しいので、同じ方法は使えません。

そこで政府は、裏技や脅しなどを使って、その壁を突破しました。
具体的には、以下のような手口です。

  • 新しく法律をつくったり、法改正を行ったりする時に、こっそりと政府を批判できなくする法律に変えてしまう

  • 憲法改正の手続きが必要な重大な事項も、法案採決で与党が絶対的な力を得られている有利な立場を悪用して強行採決してしまう

  • マスメディアに圧力をかけて、政府批判をできなくしたり、政府寄りの報道をさせたりする

  •  インターネットで自由に情報発信をしたり情報を集められなくしたりする法律をつくり、政府に都合の悪い情報が国民に届かないようにする

  • インターネットで誰が政府に批判的な書き込みをしたか調査できる権限をもてるようにする

  • 政府に都合の悪い情報を隠蔽できるように、情報公開を厳しく守らなくてもよくなる法律をつくる

  • 真実がばれないように、政府が秘密にしたい情報をもらした公務員を厳しく罰せられる法律をつくる

  • 都合の悪い事実を隠した愛国教育に変えることで、国民を洗脳する

  • 内閣が持つ人事権を使って、憲法の番人である最高裁判所を黙らせるなど、三権分立を機能不全にする

  • 同じくその人事権を使って、内閣法制局長官や官僚をイエスマンで固めるようにし、自分たちの考えた憲法を通りやすくする

  • 国家権力と対立する弁護士を懲戒できるようにする

  • 緊急事態が起きたと政府が認めれば、内閣が政治権力を自由に行使できる法律をつくる

  • 監視力を強化し、政府に批判的な国民をマークできるようにする

  • 憲法改正がしやすくなるように、憲法改正の発議に必要な条件を緩和する

  • 地方自治体の権限を小さくすることで、中央集権的な政治を行えるようにする

それにしても与党の政治家たちは、どうしてこれほど敗戦前の国家に戻すことに固執したのでしょう。
それは敗戦を屈辱と感じ、先祖の無念を晴らすことを政党の目標においていたからでした。

私の故郷の国の政党の大半は、敗戦で政党の名前を変えましたが、前身は侵略戦争を推進した政党でした(しかし彼らは侵略戦争と認めず、自分の国と共存共栄の仲間になる地域の平和を守るための戦争であったと主張していました)。
しかも政治の中枢にいるのは世襲議員ばかりでしたので、先祖が果たせなかった夢を叶えることが与党の悲願になってしまったのでした。

そういうことから、戦勝国に押しつけられた憲法であることも彼らは我慢がなりませんでした。

なので、彼らはこれを改憲を正当化するもうひとつの理由にし、「押しつけられた憲法は自分たちでつくった憲法と言えないのだから、自分たちの手で新しい憲法をつくらなければならない」と主張しました。

しかし強要されていなかったら、主権が国民にあるとし、基本的人権の尊重が最重要だとする憲法にはなっていなかったはずです。つまり民主主義国家になっていなかったということです。
その証拠に、自主的に作り直した最初の憲法案は、主権を君主においたもので、前の憲法とほとんど変わらない内容でした。

改憲を正当化するこの2つの理由、つまり「時代に合わないから変える必要がある」も「押しつけられたものだから変える必要がある」も、論点のすり替えで正しい判断をできなくさせる手口です。

繰り返しになりますが、重要なのは、憲法改正を主導する与党の政治家が信用できるかどうかです。
表面的には変わったように見えても、私の故郷の国の政府の本性は、国民の命を戦闘機や魚雷ごと敵機に命中させる道具に使う怪物のままでした。
その怪物を縛っていたのが、戦勝国に押しつけられた憲法だったのです。

しかし憲法の縛りを解く権限を怪物に与えてしまったことで、怪物が解き放たれてしまいました。

その結果、私の故郷の国は、健全な民主主義国家とはいえない「ブラック国家」になってしまったのでした。

同盟が当てにならない

同盟が当てにならない理由をあげる前に、私の故郷の国と同盟国の関係を少し話しておきましょう。

前にも触れましたが、私の故郷の国の同盟国は、世界一の軍事力をもった国でした。
またその国は、前の大戦では私の故郷の国の最大の敵国でした。
そして敗戦国になった私の故郷の国の憲法を、自分の国を守る戦力すら持つことのできない内容に変えさせたのもその国でした。

そうなるとその国は、私の故郷の国が再び戦争ができる国になる憲法に変えるのを許さないはずです。
ところが、それを止めないどころか、世界平和のために一緒に戦わないのはおかしいと批判しました。

どうして同盟国は真逆のことを私の故郷の国に求めるようになったのか。
それは、私の故郷の国が自分の国に絶対に歯向かわない、従順な飼い犬のようになったと認めたからでした。

なので、私の故郷の国と同盟国は対等ではなく、私の故郷の国は同盟国に従属する関係になっていました。

同盟が当てにならない理由は、このように世界は不変ではなく、どの国も変化の影響を受けないわけにはいかないからです。

それでは、同盟が当てにならなくなる変化の例をいくつか挙げてみましょう。

同盟国が守ってくれるとは限らない
主従関係にある同盟では、従属国は宗主国に服従しなければならないのに対し、宗主国は従属国ほど約束を守らなくてよい強みをもっています。
なので、協力できる戦争とそうでない戦争を選ぶことができ、自分の損になる戦争だと判断すると、助けてくれなくなる可能性があります。

■ 世界の敵になる可能性
同盟国でポピュリズムが台頭して、世界を敵にまわす行動をとる人物がトップになることもありえます。
しかし誰がトップでも同盟国の機嫌をとらなければ国を守れぬ従属国の弱さから、そのトップが起こした不正義な戦争に加担すれば、世界から敵視される国になってしまいます。

同盟国が弱体化する可能性
同盟国がいつまでも世界一の軍事力をもった国でいられる保証はありません。
同盟国と激しい覇権争いを繰り広げてきた敵国が新たな覇権国になれば、同盟国と一緒に立場が悪くなり、国の平和を守れなくなります。

■ 同盟を破棄される可能性
国力が著しく低下し、同盟国に頼るばかりで力にならない国に落ちてしまうと、同盟国にはメリットがなくなるので、同盟を解消されるリスクが高まります。

同盟国との関係が悪化する可能性
改憲で、同盟国の価値観と合わない国に変わったり、政権交代で、同盟国との不平等な関係を解消することをマニフェストに掲げている政党が与党になったりすると、同盟国との関係が悪化することがあります。

■ 敵国にされる可能性
将来性を考えて別の国との同盟に切り替えると、裏切ったことで前の同盟国から激しく憎悪されるようになり、許せない敵国のひとつに加えられる恐れがあります。

自主憲法を制定しても独立国になれない

私の故郷の国の与党の政治家は、自主憲法をつくることで独立国になれると考えていましたが、同盟国との格差があまりに大きく、しかも国力の低下に歯止めがかからなかったので、むしろその差が開いていく一方となり、ついに同盟国と対等の力を得ることは叶わず、主従関係を修正することはできませんでした。

同盟国に主導権を奪われ、いいように利用されても、国内世論よりも同盟国の意向を尊重し、それに追従するということは、同盟国の民意に支配されている状態です。これは独立した民主主義国家の姿ではありません。

私の故郷の国は、憲法改正で同盟国のために戦える国にしたことで、独立国の夢を果たせるどころか、民意で正しい未来を選択する力を奪われることになったのでした。

核兵器の抑止力も当てにならない

核兵器は、人間の考えた兵器のなかで最も破壊力の強い兵器です。
故郷の星では、核保有国に核兵器を使わせないようにするには、自分の国も核兵器をもつのが最善策だと考え、核の威力を競い合うことで抑止力を高める政策が多くの国で行われていました。

この方法が核戦争を防ぐ効果がある理由は、拳銃を向けあうのと同じ状態をつくれるからです。
つまり、引き金を引いたら自分も終わりになるかもしれないと互いに強い恐怖心をもつような状態をつくれれば、容易に手出しができなくなるということです。

しかしこの方法も、絶対ではありません。他の解決策と同じで、ある程度までは効果的であるという域をでないのです。

たとえば、我慢の限度を超える事態が発生したり、恐ろしい独裁者が現れたりすれば、核のボタンが押される可能性は大いにあります(残念ながら、故郷の星はそうなってしまいました)。

また相手が先に核兵器を使えば、核抑止論は簡単に崩壊します。
「自衛のためにやむを得ず反撃した」という口実が成り立ってしまい、核兵器を使って反撃ができるようになるからです。

核兵器の使用が抑制された戦争であっても、激戦が何年も続けば「戦争を終わらすために核兵器を使うのが正義である」という間違った理屈が生まれ、それが核戦争を招いてしまう可能性もあります。

軍拡競争の愚かさ

軍拡競争で抑止力を高める方法で恐ろしいのは、同時に破壊力も高めてしまう副作用があることです。
つまり軍拡競争で抑止力を高めるほど、人類を滅亡させる威力をもつ兵器の開発が進み、その保有を増やすことになるということです。

またこの方法は、コストがかかりすぎることも問題です。
軍拡競争で抑止力を強力にして平和維持を目指すアプローチは、見方を変えれば、起こる確率が低いことに、各国が競い合ってお金を注ぎ込んでいることになります。
これではまるで、保険に過剰に入って、余裕が奪われている人のようです。

それで軍事産業が儲かるという見方もありますが、使う予定のないものを買い込む散財は、家族に迷惑をかける道楽と同じになります。
軍事費に使われるお金が貴重な税金であることを、忘れてはなりません。

軍拡競争では世界平和は実現できない

核戦争の脅威をなくすには、核廃絶を実現するしかありません。

しかし、いったん核兵器をもってしまうと、それは不可能になります。
他の国が先に核兵器を捨てないと、こちらも捨てることができないからです。
つまり、どの国もそれが核兵器を捨てる条件になってしまうと、先に核兵器を捨てる国を待つ状態が続くだけになり、永遠に核廃絶は実現できなくなってしまうということです(このスタンスを改めないで核廃絶がゴールであると言っている国は、国民に嘘をついていることになります)。

脅し合いで保たれる平和など偽物ですし、そのようなことはまともな大人のすることではありません。
そういうまともでない人たちが権力を握っている世界では、必ず戦争が始まり、エスカレートの末に核兵器が使われ、核戦争に発展することになるのです。

平和連合でも戦争を止められない

故郷の星では世界平和と安全を維持するために、世界のほとんどの国々が加盟する「平和連合」と呼ばれる機関をつくりました。

平和連合で構築されたのは、集団的安全保障体制です。
集団的安全保障体制とは、平和連合の加盟国が相互に武力による攻撃を行わず、話し合いで解決することを約束し、もしこのルールを破った場合は残った加盟国が集団で違反した国を征伐するというものです。

それにより次の3つの効果が生まれ、世界平和が実現できると考えられました。

  • 平和連合で話し合いの場をつくれば、民主的な方法で問題を解決することが可能になる

  • 平和連合の応援があれば、弱い国の平和も守れる

  • 平和連合を相手にするとなれば、どの国も戦争がしにくくなる

しかし現実には、平和連合は正しく機能しませんでした。
何が問題だったのでしょう。

一番の問題は、各加盟国の主権は平等と言いながら、結局は力の強い国が決定権をもつ組織になっていたということです。

平和連合の戦争への対応は理事国が会合を開いて決めることになっていましたが、常任理事国はすべて大きな軍事力をもつ強国ばかりで、しかも任期のある非常任理事国と違って、常任理事国には入れ替えがありませんでした。

さらに常任理事国には、敵対関係にある国が入っていたのです。
なので、敵対関係にある国が関わる戦争では意見が割れやすく、その上、常任理事国が1カ国でも反対をすれば、その決議案は採択されないというルールになっていたため、平和連合には世界平和の実現に最も必要な、軍事大国の起こす戦争を止める力はありませんでした。

私の故郷の国が自衛隊をもつことになったのも、常任理事国同士が起こした戦争で、守ってくれるはずの平和連合が機能しなくなったからでした。

世界法も頼りにならない

暴力のない社会にするには、司法的に解決をする法治国家にするのが最も効果的です。
故郷の星は、国際紛争問題もこの方法で解決しようと、世界法と世界司法裁判所をつくりました。

しかしそれもうまくいきませんでした。
うまく行かなかった理由は、世界法が穴だらけの未熟な法であったためです。
そのせいで、紛争の原因になる領土問題を解決できなかったり、独裁者が威嚇行為を繰り返すのを止められなかったりしました。

世界法がそのような甘い法になってしまった理由は、各国が合意した範囲内でしか規範をつくれなかったからです。
そうなると合意しないほうが得だと考える国が出てくることから、世界法がゆるいものになってしまったのでした。

しかも国家を超えた世界には、国内のように違反者を逮捕してくれる警察がいなかったので、自分で問題解決するか、平和連合に頼るしかありませんでした。

しかし平和連合も、前述したように常任理事国の合意がないと決議案を採択できないため、常任理事国のどこかの国が損をするような問題には対応できませんでした。
これでは結局、不公平な司法制度になってしまいます。

主権平等が実現されている世界なら、常任理事国が正義で、その他の国が不正義ということにはならないはずです。
常任理事国の戦争責任を理事国でない国と等しく問えない組織では、軍事大国が正義の名のもとに行う戦争をなくすことはできません(私の故郷の国が敗戦国になった世界大戦でも、その戦争の原因になる事態を起こし、私の故郷の国を戦場にして無差別殺人をした戦勝国の責任は一切問われませんでした)。

世界司法裁判所も、訴えられる側の国が裁判に応じないと、裁判に進むことができませんでした。
その上、1回しか裁判ができませんでした。

このような中途半端な法の支配では、法律で平和的に問題解決ができるはずがありません。

世界平和イノベーションをしなかった故郷の星の末路

故郷の星は世界平和を実現する有効な手段を見つけられなかった結果、ついに核戦争を使う世界大戦を勃発させてしまい、故郷の星を放射能に汚染された死の星に変えてしまいました。

子孫の未来を奪うことになった世界大戦は、民主主義国と専制主義国が対立する覇権争いから始まりました。
私の故郷の国の同盟国がライバルの専制主義国家に世界一の座を奪われるのを恐れ、友好関係にある民主主義国と連帯してその敵国をサプライチェーンから除外するなど悪巧みを行ったことで、対立が先鋭化して戦争になってしまったのでした。

しかし戦争は民主主義国側が圧される展開になりました。
その理由は、次の2点において専制主義国のほうが勝っていたからです。

  • 非民主主義国が多数派になっており、その専制主義国家のもとに経済支援で味方につけた多くの非民主主義国家が集まったことで、民主主義国側を凌駕りょうがする兵力を得ることができたから

  • 世論にしばられて思うように攻撃を進められない民主主義国家に比べ、専制主義国家は世論にしばられずに思い通りの攻撃を迅速に行えるから

また平和連合の常任理事国が対決する戦争になったことで、平和連合も完全に機能しなくなってしまいました。
これにより世界法も無力化してしまい、違法な武力行使が平気で行われるようになっていきました。

民主主義国であることが不利だという認識が広がると、続々と強権化する民主主義国が現れる事態にもなりました。

そして大半が非民主主義化したことで、いつしか民主主義と専制主義の戦いでなくなり、他国を侵略して少ないパイを奪うことを目的にする独裁者同士の戦いになっていきました。

民主主義が全滅すれば、民主主義的な方法で決着をつけることは不可能になります。自分勝手な独裁者だけの世界では協調はありえず、戦争は激化する一方でした。

こうして故郷の星は、二度と修復が不可能な死の星になってしまったのでした。

私の故郷の国の末路

この世界大戦に巻き込まれたことで、私の故郷の国はどうなったか。
とても残念ですが、国家消滅してしまいました。

国家消滅の原因は、軍拡と戦争で人口が激減したことにあります。

私の故郷の国は、以前から人口減少が激しく進んでいました。
その原因は少子化です。

軍拡と戦争は、少子化をさらに加速させることになりました。

まず軍拡と戦争が引き起こした増税や物価高によって国民が貧困化したことで、子供を増やすことができなくなる夫婦をさらに増やしてしまったからです。
私の故郷の国は食料もエネルギーも自給率がとても低く、輸入に依存しなければ成り立たない弱点をもっていたので、戦争でそれらの調達が困難になったことが大打撃になりました。

その上、夫や息子が兵隊に取られたことで、子供をつくることすら困難になってしまいました。

そして最後は、女性までも兵隊にしなければ軍隊を維持できない事態になり、国家を支える子孫を完全に残せなくなってしまったのでした。

私の故郷の国が激戦地になったことも、人口を減らす原因になりました。
激戦地になった理由は、敵国に近い私の故郷の国がミサイルを配備するのに絶好の場所であるとし、同盟国がそこに重要な軍事基地を置いたからです。

この他、軍事費に予算を奪われて年金制度と健康保険制度が破綻し、餓死する高齢者が激増したことも、人口減少の原因になりました。

以上のように、福祉の充実で国民の生活を守るよりも、防衛力の増強で国民を外敵から守るほうを優先した政策が、逆に国防力の衰退を早めるという皮肉な結果を招いてしまったのでした。

故郷の失敗から学んだ解決策

私たちは世界平和イノベーションを行うに当たって、故郷の星の失敗から学んで、世界平和を実現するのに必要なことを洗い出す作業からはじめました。

その結果、次の7つの事項が世界平和の実現に必要だと考えました。

成功の秘策を見つけたぞ!

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