見出し画像

美しく躍動する生命

2019年に世界同時発売されたカズオ・イシグロの『クララとお日さま』。
この本をわたしはかれこれ4回読み返しています。

『日の名残り』、『私を離さないで』の流れを汲む作品で、病弱な少女ジョジーとAIを搭載した人工友人クララとの心の交流を描いています。カズオ・イシグロの描く子どもは大変美しく、躍動する生命を感じることができます。
たとえば、少女が家に人工友人のクララを招いたのには、親のある思惑が隠されています。

この作品にも、私たちは知らないけれど彼らは知っている物事がたくさんあります。時代はおろかどこの国に住んでいるかもわかりません。

しかし、少女とクララは自然の中でのびのびと過ごし、時には喧嘩をして気まずくなったり、その翌日にはなんとなく仲直りしたりします。病弱なジョジーを心から心配し、ある行動を起こすクララの姿も印象的です。

SF的要素のある思惑や背景が見え隠れする中で、子どもが美しく成長していく様子と自然の美しさや優しさが描かれています。

人工友人はあくまでも子供のために造られたもので、子供の成長とともに役目を終えることになります。限られた時間の中で、二人がかけがけのない、しかし脆くもある友情を築いていく様はとても美しく、心とは何かを問いかけてくれます。

この記事が参加している募集

読書感想文

海外文学のススメ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?