【小説】ばんそうこう
柔らかな素材の白い開襟ブラウス、スリットの入った黒いロングスカート、9センチのピンヒール。そんな格好であてもなく街を歩き続ける。道ゆく人は、誰も私のことなど気に留めない。美容院の予約時間はとうに過ぎている。今となってはもう行くつもりもない。何度か携帯に着信があったが、煩わしくて電源を切ってしまった。
また行く場所を一つ失った。明日になったら新しい美容院を探さなくてはならない。伸び切ってしまった髪は、もう自分ではどうすることもできないのだから、美容院に行く他ないのだ。束ねた髪