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夏読書〜お盆休みにいかがですか?エア「山の図書室」の本棚から。

今週の「時々、コラム」は久しぶりのおすすめ本紹介です。

学校が夏休みに入ったり、お盆休みがあったりと、時間ができる時期でもあります。空いた時間に本でも読みたいな…という方へ向けて、気軽に読める小説やルポルタージュを中心にご紹介します。

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◆「ノースライト」(著者:横山秀夫 新潮社)

個人的にミステリー系の作家の中では一番好きな横山秀夫さんの小説です。一級建築士の主人公が、自分が手がけた新築の家に実は依頼主が住んでおらず、入居した形跡もない…ということを知り、そこにあった一脚の椅子から真実を紐解いていく…というストーリーです。

建築に興味があり、椅子も大好き。なので新しい小説のテーマにまず惹かれ、描写から家の姿を脳裏に思い描きながら読み進めました。横山秀夫さんの小説はどこかいつも物悲しく、風景にひとつブルーグレーのフィルターがかかっているような世界観です。みんな何かを抱えたり背負ったりしてるんだよなあ…と、妙に主人公に親しみも沸くような、不思議な小説です。


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◆「舟を編む」(著者:三浦しをん 光文社)

大好きな三浦しをんさんの有名な小説。映画化もされて、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。

「辞書」を作る、という一つの大きなプロジェクトを通して様々なことを私たちに伝えてくれる、とてもみずみずしい小説です。クリエイティブな仕事も楽しいと思うけど、こうして一つのことにとことん実直に向き合う仕事ってきっとすごく大変で、日々の積み重ねで出来ているのだなあ…とあらためて魅力を感じました。『大渡海』という辞典を手に取ってみたい…紙のめくり具合を確かめてみたい…そんな風に思いを馳せる方も多いんじゃないでしょうか。まだ読んでいないという方はぜひ。


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◆「神去なあなあ日常」(著者:三浦しをん 徳間書店)

同じく三浦しをんさんの小説で、こちらも「WOOD JOB!」というタイトルで映画化されています。小説と映画の色合いがちょっと違っていて個人的にはぜひ小説を読んでほしい!と思うところではあります…。

林業という職種に対する知識がほぼない状態で読むと、同じく大した知識もないのに林業という職業に就職してしまった主人公の気持ちとリンクして、考えさせられることがとても多く、ユーモラスな描写の中にも、木を大切にし、木の中で生きてきたこの国のありようを問われているような気もしてきます。


◆「閉鎖病棟」(著者:帚木蓬生 新潮社)

こちらも映画化されて話題になりましたね。私は映画は観ていないのですが、映画のPRをテレビで観たことがきっかけで小説を読みました。

とある精神科病棟を舞台に、患者たちの日常を奪った殺人事件が起きることでストーリーが動いていきます。それぞれの登場人物の描写がリアルで、ぐっと引き込まれてあっという間に読んでしまいます。著者の帚木さんは精神科医なのだそうで、なるほど…と納得。この小説が出版されたのは1994年、実際に執筆されていたのは1983年くらいとのことですが、時代の流れとはまた違うところにある普遍性も感じて、新鮮な気持ちで読むことができました。殺人事件があるのですが、ジャンルはミステリーではなくヒューマンドラマだと思います。


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◆「あきない世傳 金と銀」(著者:高田郁 角川書店)

時代小説といえば…の高田郁さんの著書です。「みをつくし料理帖」「銀二貫」など人気の小説も多いですね。裕福ではないけれどきらりと光るものがある若い主人公が成長していくさまを描く本が多いのかな、と思うのですが、こちらの「あきない世 傳金と銀」も、幼くして奉公に出された主人公が詳細を発揮して呉服屋を立て直す…的なストーリーです。時代小説を読んだことがないという方でも、するすると読めてしまうと思います。

ですが、実はまだ2巻までしか読んでいません。サークル「くらしの学校 オンライン」の受講者の方からおすすめ本としてお借りしていて、続きは来週に受け取ることになっているのです。は、早く続きが読みたい…。


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◆「兄の終い」(著者:村井理子 CCCメディアハウス)

いつもユニークな本の翻訳をされていて、自らは「ぎゅうぎゅう焼き」なる料理の本を出しておられる、滋賀県にお住まいの翻訳家・村井理子さん。Twitterでのつぶやきが時々すごく面白くて、自分と同じく双子のお母さんで大きな犬を飼っている…ということもあって勝手にシンパシーを感じています。

この本は村井さんの実のお兄さんが孤独死をされ、その遺体を引き取り、著者いわく「小さくする」、つまり火葬して骨にするまでのお話です。こう書くとかなりヘビーな雰囲気なのですが、独特のあっさりした文章でストーリーが進みます。でも逆に身内が急死したらあまりの非日常さに思考停止になって、案外さくさくとものごとをこなしていくようになるのかもしれないなあ…と、リアルに感じたりしました。

登場人物がみんな温かくて、ひとりひとり皆さんに自分も「ありがとう!」と言いたくなるような本です。

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どの本も読みやすく、ちょっとしたお休みに1日~2日で読めるくらいの長さです(「あきない世傳 金と銀」を除く)ので、良かったら手に取ってみてくださいね。


*お知らせ …8月は「時々、コラム」の更新をお休みします。楽しみにしてくださっている方がおられましたら申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。



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