前川國男自邸:窓越しに広がるセカイ
こんにちは
梅雨に入り、雨の日が続いています。
仕事だと製品を運んだりするので天気が悪いと、ちょっとやだな、って思ってしまいます。
でも仕事とか抜きにして考えると雨が作る情景は好きでして、雨も悪くないなぁ、って思いますし、そうした風景を見ながら作業できたらいいなって思ったりもします。
で、余談はここまでとして、
以前に小金井公園内にある江戸東京たてもの園に行ったお話を何度かさせていただきました。
今回はその中で訪問した内の一つ、「前川國男自邸」のお話をしていこうと思います。
日々の合間にのぞいてもらえたら嬉しいです。
それでは始めますね。
■建築家 前川國男と自邸
最初に、建築家 前川國男氏と自邸についてザックリお話していきます。
実は現在でも前川建築は現存してまして、首都圏では東京上野にある東京文化会館や東京都美術館などが挙げられます。
次に前川國男氏の自邸についてですが、
東京都品川区上大崎に1942年(昭和17年)に建てられました。
当時は戦時中であり、建築資材などに制限がある中で建てられたと言われています。
和風な外観ではあるものの、中に入れば中央部(リビング)に位置する2階まで吹き抜けた大きなリビングが広がります。そこは壁一面が開口部で日中は照明などは要らないほど明るさを感じます。
装飾性が抑えられた空間に配置された格子や障子は民家とはまた違った印象を受けますし、マス型の組子(または格子)の幾何学的なグリットはモダニズム建築でも違和感なく空間に馴染むんだ、ということに気づきます。
大胆に開放し、それを成立するための緻密な納まり(仕掛け)によって、伝統的な木造建築とはまた違った近代的(モダン)な空間が広がっています。
さらには、柱によってぐぐぐっと持ち上げられた屋根下に開放的な空間が生まれている感じとかは建築家ル・コルビュジェに師事した経緯も考えると、ピロティ的な考えが反映されているのかもしれませんね。
今見ても古さを感じませんし、内部の仕上げや家具は木製なので時間が経って丁度いい「味」が出ていて建築に馴染みがなくても身近に感じられる雰囲気だと思います。
■窓越しって良いな
では、ここからは前川國男自邸でボク個人として好きな場所をツラツラ綴っていこうと思います。
やはり自邸ではリビングルームの吹き抜けた壁一面の開口部から差し込む光が包む大空間が見所です。
そして引き分けられた建具の外に広がる風景はとても素敵ですし、気持ちが良いです。
ただ、ボクが良いなって思ったのはシンメトリーの両脇に配置された部屋で、さらに言うと窓越しです。
そこにはカウンター的な広めの板になっていて、なにか出来そうな、つまりそこで物書きや読書しても良いですし、飾り棚にしても良い、というフレキシブルなサイズ感になっています。
また窓の建具(ガラス戸、網戸、障子)は壁まで引き込む仕様になっていて、開けると建具は窓から消えます。
そのため、より明快で開放的になりますし、ガラス引戸で閉じても透明ガラス故に辺りの風景がそのまま内部空間の一部となっていて建築でよく言う、自然を取込む、とはこういうことなのかと思わせてくれます。
外を感じながら過ごす、ってなぜ気持ちが良いのか考えることがあります。
例えば多くのビルなどは窓より壁が多く、その窓もカーテンやスクリーンで隠してしまい、人工素材で囲まれた建物にいるとなんだか息苦しく、ビニール臭さがどうも苦手です。
使用されている素材によって匂いが弾かれてしまうのでより一層って感じでしょう。(反対に自然素材は吸収するので消臭効果がある)
前川國男自邸の窓からは晴れた日は日差しに照らされ風に揺れる木々が見えたり、雨の日には湿った空気にのって草木の匂いがします。
苦手な方もいるかと思いますが、ボクは好きです。
晴れても雨でも雪でも、そこから見える景色は計算のない映像作品のようですし、そう思うと全ての景色を肯定的に受け入れることが出来そうです。
また、窓に配置された障子が「見る」だけではなく、障子が生み出す柔らかな光が部屋を包んでくれますし、晴れた日には外の景色が影絵のように障子に映り込み不思議な姿を「見せてくれる」だろうと想像してしまいます。
こう話していくと、窓の外ってとても多様で変化に満ちた世界が広がっていますよね。
たった窓一つ、だけどそこには
優しさや温かさ、柔らかさ、があってとても豊かです。
ということで、後半は窓越しのカウンターを見て、良いな、って思った理由をお話させていただきました。
前川國男自邸は中も見学可能で、日本的なモダニズム建築を体験出来ますので、興味のある方はぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
今回はこの辺りで失礼します。
ではまた。
▼こちらも江戸東京たてもの園でのお話です。
▼合わせてご覧ください。
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