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「建具のいろは」はここにあった:建具というものを考えてみた#03


こんにちは

郡上八幡のお話を前回させていただきました。
水の街と言われている以上に水と人の暮らしの密着度が高く、決して観光用ためだけではない街の風景にとても深みを感じた、そんなお話でした。


さて今回は旅日記の続きを綴っていこうと思います。

郡上八幡を後にして向かった先は飛騨高山の高山市です。ここの街には良く訪れています。
ボクの中では1、2を競うくらい好きな場所、子供頃に連れて行ってもらった思い入れもあるのですが、1番は飛騨高山にある建築に魅了されたからです。
そしてその建築がボクにとって建具を深く知るための原点であり教科書的な存在である、

そのようなお話をしていこうと思います。


■ちょっとふらっと

その前にまずは飛騨高山の古い街並み界隈を見ていこうと思います。
郡上八幡からの流れもあり、目に入ってくるのは道脇の水路。やはり高山の街も川が流れてそこから水路が街中を巡っています。
そして川沿いで開かれている宮川の朝一は観光客と地元の人とが交流することが出来るポップアップ的な露天商店、その風景を見ると高山に来たなぁと感じさせてくれる地域のアイコンだと思います。

これまでコロナ禍で行けない時もありました。
久しぶりに来れてぐるっと歩いていたのですが、街並みは建物の高さが低く抑えられ通りを歩いていても気持ち良く、さらに街を歩いていると聞こえる川の音、橋を渡る時に見通せる自然の風景、そこから見下ろすと川の側で休む人々。

街の中に川があって作り出される風景は素敵で、そんな空間ってなんだか気持ちも和みます。

この感じ伝わりますか?

雰囲気を味わうようにふらふらしている内に一番の目的地、国の重要文化財の建築「吉島家住宅」

■吉島家住宅

 吉島家の初代は文政6年(1823)に没した休兵衛で、代々生糸、繭の売買、金融、酒造業を営んだ。吉島家の日記によると明治8年(1875)高山の大火後、翌9年に再建した。しかし明治38年(1905)再び類焼し、本宅表側の店二間通りだけが焼け残ったとある。四代吉島斐之は明治40年再建を行った。大工は主屋を川原町西田伊三郎が、座敷を吉城郡上宝村の内山新造が建てた。

高山市役所ホームページより抜粋

吉島家住宅という日本の伝統的な建築に出会ったのが約5年前。当時のボクは本腰を入れて設計や創作に打ち込もうと決めた時でした。

もう少し具体的に言うと家業の倉島木工所で新たな道としてオリジナルの製品を作り、ゆくゆくは新規の事業として成り立たせるための取組みを始めた時期でした。

その時にボクの恩師に、まずは建具とは何か、を知るところから始めなさい、と言われ色々調べてた中で一枚の写真に出会いました。
それが高山市にある国指定重要文化財「吉島家住宅」の建築写真。

改めて恩師に聞くと、建具を知るなら吉島家住宅は絶対行った方が良い、と進められて行ったのがこの建築と関わる始まりです。

実際に入口を入って見上げると現れる柱、梁の立体的に組まれた圧倒的な構造美、視点を下げると奥の奥まで続く空間に建具が行き交うように組み込まれてる姿はなかなか圧巻です。

■「建具のいろは」はここ

建具が行き交うように、と表現したのも部屋を仕切るモノがほぼ建具だったからです。
逆を言えば、入っている建具を外してしまうと、何にもない、ただただ広〜い空っぽの部屋があるだけ。

なので、本当にどのように区切って部屋数を作るためには建具が必要不可欠だったのがわかります。
特に大問屋という商家のため、人の行き来も多かっただろうし、お客さんと店側の人との動きも分けなくてはなりません。

それらを整理するための一つとして建具を使って区切り、通りにしたり個々の部屋にしたりしていたのではないかと感じます。

そう、以前お話しした建具が空間を作っていた、という内容は吉島家住宅から学び得たことだったんです。


障子や板戸や格子など建具の作り方という技術的な話ではなく、建具という存在は建築の中において、どんな役割を持ったモノなのか、という視点で持って考え、そこから設計や創作に活かしていくこと。

それをきっと恩師が伝えたかったメッセージだった気がします。

吉島家住宅の文化的価値を見出す活動をしたのが恩師の師でもあった建築史家の伊藤ていじ氏だったことは行って初めて知った事実でありました。
伊藤ていじ氏から恩師が教わったようにボクも同じ道を辿っているんだなぁと感慨深い気持ちにもなります。

思い入れのある場所でついつい長話になってしまったのですが、飛騨高山という場所は子供の頃の思い出から大人になった今は学びの場になっています。
すぐ行けるところではないのですが、これからも機会があれば伺いたい原点です。

ということで
今回は旅日記を交えて建具のお話をしました。

吉島家住宅はじめ飛騨高山を気になった方がいらっしゃいましたら下記のリンクをご覧になってみてください。


最後にもう一つ、吉島家住宅の隣にある日下部民藝館で開催されている落合陽一さんの作品展も面白かったです。
行く予定がある方はぜひお立ち寄りください。

それではここまでお付き合いくださりありがとうございました。

ではまた。

日下部民藝館 落合陽一さんの展示風景

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