読書メモ『元気なチームは「リズム」で作る~「調子」に乗れる組織の育て方~』金井 壽宏, 橋田“ペッカー”正人, 加藤 恭子共著
「人的資本経営」が話題になっています。従業員を「人材」ではなく「人財」として扱い育てていくこと、人事部門を「管理部門」ではなく「経営戦略部門」に変革していくことが企業には求められています。
個人のスキルアップと同時に、チームの力が問われています。チーム力を作るためにさまざまなチームビルディング研修が注目されています。
そのような中で『元気なチームはリズムでつくる』という本が出版されました。
著者はリーダーシップ論で著名な経営学者の金井壽宏先生と日本を代表するパーカッショニストのペッカーさん、そして芝浦工業大学デザイン工学部で教鞭を奮っている加藤恭子先生。
金井先生は日本におけるキャリア研究の第一人者で、著書は100冊のを超えています。私は会社の研修でお話を聞きました。「一皮むけた経験」を学び、自分の一皮むけた経験をブログに書きました。
●書評】仕事で「一皮むける」/発想する代表社員宣言
http://kurakakeya.livedoor.biz/archives/50900524.html
加藤先生は米国で『人的資本管理と労使関係論』で博士号を取得されています。リズムを使ったチームビルディングを授業で実践されています。
出版社はヤマハミュージックエンタテイメントホールディングスですから、異色なビジネス書です。
なぜ「リズム」が元気なチームを作ると言えるのか、この本の冒頭には、このように書かれています。
金井先生は「リズム」を意識するとなぜ理想のチームが作れるのか、「リズム」と「ビジネス」をつなぐ6つのキーワードを示します。金井先生も音楽がお好きで、バンドの話やドラムサークルの話が組織論の中に事例として入っていて、読みやすく、リズムがチームに必要であることの理解を深めます。
ペッカーさんはドラムサークルとの出会いを語ります。歴史的にリズムがチームビルディングに使われてきたことを説明します。そしてドラムサークルが企業に寄与するものを示します。
ところで、「ドラムサークル」とは何でしょうか? この本では次のように説明しています。
私が最初にドラムサークルに触れたのは会社の会議室でした。2016年2月16日です。当時私は若いメンバーと企業向けの音楽ビジネス企画を議論しており、その中でメンバーの1人から「ドラムサークル」と言うアクティビティを提案されたのです。
ペッカーさんをお呼びしました。ペッカーさんといえばの数々の著名アーティストのレコーディングやツアーに参加されている大御所ですから、ずいぶん緊張してお迎えしたことを覚えています。ところが会議室に入ってきたペッカーさんはとても気さくな方で、緊張はすぐに解けました。
会議が始まると、ペッカーさんは、おもむろに鞄の中から卵形のシェイカーを取り出し、会議に参加しているメンバーに1つずつ手渡しました。「まずはシェイカーを振ってみましょう」とさっそくこの本で紹介されているリズムワーク『ワン・フォー・オール・オール・フォー・ワン』が始まったのです。
『ワン・フォー・オール・オール・フォー・ワン』のやり方は、次のようにていねいに説明されています。
このリズムワークは、ひとりであることと集団であることの違いを体感するものです。ひとりで演奏する時は、心もとなくなり、 リズムも不安定になります。皆んなが戻ってくると元気になり、リズムも安定します。まさにチームの役割を意識できるのです。
私はこの体験で、ドラムサークルの可能性に魅せられてしまいました。それ以来ドラムサークル普及のお手伝いをしています。
さて、2018年2月9日、私は田町の駅でペッカーさんと待ち合わせて芝浦工業大学へ行きました。私の前職で同期だった長谷川先生(退職後に大学で教鞭をふるっていました)から社会人を対象にしたMOT(Management of Technology、技術経営)のワークショップの授業でドラムサークルをやりたいと相談を受けたのです。そこで初めてお会いしたのが加藤恭子先生です。
長谷川先生の研究室で、ペッカーさんは、さっそくシェイカーを取り出して、『ワン・フォー・オール・オール・フォー・ワン』を行いました。これには加藤先生もはまってしまい、ドラムサークルを使ったワークショップの実施が決定しました。
ワークショップではさまざまなドラムサークルのリズムワークが実施されました。この本では加藤先生が執筆を担当した第4章で、先ほど引用した『ワン・フォー・オール・オール・フォー・ワン』と同じように、12種類を詳しく説明しています。
この本は、元気なチーム、強いチームつくりにはリズムが大切であり、ドラムサークルを活用する研修がチームビルディングに好適であることを明文化しました。チームビルディングでのドラムサークル活用が普及するための一助となることを願ってやみません。
追記(2022/11/10)
この本のPR動画を作らせてもらいました。
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