見出し画像

仏像の眼

「私達が仏像を見ているように見えて、仏像が私達を見ているのです。何百年も前から仏像を見ている人間を、仏像は見ています。」
誰かが言っていたニーチェのような台詞を仏像の前で思い出す。目の前の仏像の眼は閉じていた。
それを聞いたときは人の手によって無機物から形取られただけの像が私達のことを見ているはずがないし、大体世界に数千もある仏たちが全部現世に目を向けていたらもっと世界は良くなっているし、と思ってその言葉は軽く受け取っていた。
よく見ると仏像はうすらと眼を開けこちらを見ていた。思わず背筋が凍る。
宗教が持つ力を改めて実感する。お寺や神社の境内に入った時の神聖な空気感、お経を聞いた時にふと涙が溢れる感覚、仏像が眼を開けて自分の内側に触れようとしている今、この時。
わからない人にはわからない感覚なんだろう、きっと
魂と仏の共鳴
曼陀羅が映し出す宇宙
数多の人が向き合ってきた世界は仏の眼の中にある
きっとあの台詞はそういう意味で、仏像の眼と向き合う今、私も世界と向き合っているのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?