第五章 光の女神と白銀の聖女2

「まず俺は翠宝山のお山を守る天狗だってことはさっき話した通りだ。俺は15年前ある男に頼まれて当時赤ん坊だった信乃を預かった。そして時が来るまでは安全な場所で育て上げる必要があった為、時空を超えてここではない別の世界で信乃を育てたんだ」

「別の世界?」

建物の二階へと上がるといずまいを正した紅葉がそう語り始める。その言葉に神子が不思議そうに首を傾げた。

「あんた達も昔語りで聞いたことあるだろ。聖女伝説を生んだ瑠璃王国の姫がここではない別の世界で育ちこの国へと戻ってきた事。そして腕輪を持ちし者が時空を超えてこの世界へとやってきて瑠璃王国の姫と共に邪神を破魔矢へと封じ込めた事」

「その話はとても有名だからな。子どもの頃から耳にたこができるほど聞かされた覚えがあるぜ」

彼の言葉に喜一がうんざりするほど聞いたといった顔で答える。

「信乃もまた瑠璃王国の姫同様に別の世界で育ち、時が来た為こちらに戻ってきた。……信乃。お前には話してなかったことがまだある。実はお前は瑠璃王国のアオイの血をひく末裔なんだ」

「「えっ」」

「はぁ?!」

紅葉が説明すると数拍黙り信乃の顔を見てそう話した。その言葉に神子と彼女は驚き同時に声をあげ。伸介も心底驚いた顔で信乃を見やった。

「なんと……」

「まじかよ」

「瑠璃王国の……末裔だと」

文彦も驚き言葉を呟くと喜一が盛大に驚いてまじまじと彼女の顔を見る。隼人も瑠璃王国の末裔の者が目の前にいる事実に理解が追いつかず驚く。

「神子さんが信託を受けたって蒼いから聞いてこっちの世界へと戻ってきたのさ。お前達が倒さなければならない存在を倒すのには白銀の聖女である信乃の力が必要不可欠だからな」

「白銀の聖女って?」

紅葉の言葉に神子が不思議に思い信乃へと尋ねる。

「ご、ごめんなさい……わ、私もよく分からないのですが。紅葉が言うには私には人を癒す力や守る力があるのだと。その力が神子様のお役に立つんだって言われました」

「神子様の治癒術の様なものでしょうか」

その視線を受けた彼女が共同不審な態度で目線を宙へと彷徨わせながらか細い声で説明した。話を聞いた文彦がそう問いかける。

「もっと強烈な奴だ。神子の治癒術は傷を塞ぐ程度だが、信乃の場合は傷そのものをなかったかのように再生し、体力も元通りに回復させる。さらに守りの力ってのは荒魂や悪鬼、魔物などを遠ざけたり、回避したり結界を張ることで攻撃を防げることができる」

「そんな力が私に本当にあるとは思えないのだけれど……でも紅葉が私に嘘をついたことなんて一度もないから、だから私は紅葉の言葉を信じて、この世界にきたんです。皆さんを守ることが私に課せられた使命だって紅葉が言うから……」

それに紅葉が首を振って違うといって説明した。それを聞いていた信乃が困ったような顔になり話すも、彼のことを信用しきっているといった様子でそう言い切る。

「お前達。神子の旅についてどの程度知ってるんだ?」

「神子は悪しき存在をこの破魔矢で射貫き封じる事。それが出来たら神子は神の下へと行き女神になりこの世界を守るのだと聞きました」

彼の問いかけに神子は自分が聞いた通りのことを口に出して答えた。

「なるほど……まあ。世間ではそう言われてるとは聞いていたが。まさか本当に伝書がねじ曲げられて伝えられてるとはな……」

「どういうことだよ」

それに何事か考え深げな顔で呟く紅葉へと怪訝に思い伸介が尋ねる。

「……お前達に会わせたい奴がいる。そいつの所に行けば俺がさっき言った言葉の意味が分かるさ。ってことでこれからよろしくな。神子殿御一行様」

「よく分かりませんが。天狗様と瑠璃王国の末裔の方がご一緒についてきてくださるなんてとても心強いです。よろしくお願い致します」

それには答えずにそう話すとこれから共に旅に同行するからよろしくといった感じで笑う。そんな彼へと神子も山の神である天狗様や瑠璃王国の末裔の人が一緒についてきてくれるなんてとても心強いと感じて笑顔で了承する。

こうして白銀の聖女と山の神である紅葉が仲間入りを果たした後、一行は宿屋を借りてそこで一晩過ごすと、翌日戻ってきた弥三郎と亜人とも合流して旅を再開した。


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