第五章 光の女神と白銀の聖女3

 町を出て山道を進んでいると前方から旅人だと思わしき女性が歩いてくる。

「ん。ちょっと待ちな」

「な、何でしょうか?」

すれ違う時に女性が立ち止まりまじまじと神子と信乃の姿を観察してきて、その居心地の悪さに聖女が怖々といった感じに尋ねた。

「あんたが今信託を受けて旅をしているっていう神子さんで、あんたは瑠璃王国の末裔の人なんじゃないの」

「!?」

女性の言葉に信乃は驚いて目を瞬く。

「ははっ。流石、目利きの良さは相変わらずのようだな。帝国の末裔の光の女神ちゃん」

「あんたこそよく私が帝国の末裔の者だって分かったわね。その通り。私はかつて瑠璃王国の姫と共に邪神と戦った帝国の王子、アレクシルの血をひく末裔のレインよ。私のことはレイって呼んで頂戴」

大きな声で笑う紅葉へと皆が視線を向けると彼がそう言ってにやりと笑う。それに女性もにこりと笑い答えるように名乗った。

「帝国の末裔!?」

「瑠璃王国の末裔の次は帝国の末裔かよ」

神子が驚いて目を白黒させる横で伸介がありえねえって感じで呆気にとられる。

「生きているうちに偉人の末裔の方達両方にお会いできるとは……僕達はとても恵まれているのでしょうか」

「こんな偶然あるものなのかな。ねえ、亜人ぼく夢を見てるわけじゃないよね」

文彦も驚きすぎて頭が混乱している様子で呟くと、弥三郎が自分の頬っぺたをつねりながら亜人に尋ねた。

「弥三郎様これは現実ですので、ご自身の頬っぺたをそんなに引っ張ってはなりません。引っ張るなら隣にいる遊び人の頬っぺたでも引っ張ってくださいませ」

「何でだよ! お前の頬っぺたを引っぱればいいだろうが」

その行為に慌てて亜人が止めるとそう言って聞かせる。彼の言葉に喜一が抗議の声をあげた。

「……とりあえず落ち着いたらどうだ。神子様も動揺しすぎて口が空きっぱなしだぞ」

「は、はひ……」

驚きすぎて逆に冷静になってしまった隼人がそう言って皆を諫めると、神子へとそっと声をかける。その言葉で現実に引き戻された彼女は恥ずかしさで頬を赤らめながら慌てて口をつぐんだ。

「で、あんた達今悪しき存在を倒すための旅をしてるんでしょ。うん、よし決めた。私も一緒についていくよ。瑠璃王国の末裔であるあんたと帝国の末裔である私がここでこうして出会ったのにも何らかの意味があるんだと思うしね。だから私も神子様の旅に同行するよ。こう見えても私剣の腕には自信があるんだよ。光の女神の異名は伊達じゃないって事。戦いなら私に任せて、あんたと神子さんくらいなら楽に守れるからさ」

「おお、さすがはアレクシルの血をひいてるだけはあって言うことがちがうな。頼もしい限りだぜ。な、神子さん」

「へ。そ、そうですね。えっとレイさんよろしくお願いします」

にやりと笑いレインがそう言って仲間入りを宣言すると紅葉が含みのある笑いをして神子へと同意を求める。それに彼女は驚いたものの頷き答えた。

信託を受けし神子と白銀の聖女と光の女神。彼女等が出会った事によりこの旅は古から続く邪悪な存在との因果により新たな運命の幕開けとなるのであった。

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