第十三章 龍鬼と白き竜3

「……」

「……」

戦意喪失したかのようにその場から動かずじっと射貫かれるのを待つ龍鬼に弓を構えたまま戸惑い躊躇う神子。

「神子様早く奴を射貫かねば」

「何してんだよ。早くやれよ」

その様子に亜人と伸介がたまらず声をかける。

「……やっぱり、私にはできません。龍鬼さんを殺すなんて」

「君がやれないというのなら僕がやる」

弓矢を下ろしうなだれる彼女の様子に刹那がそう言うと短剣を片手に龍鬼へと向けて駆け込む。

「刹那さん、待って!」

「……」

刃を振りかぶる姿に神子がたまらず悲痛な声をあげた。

「……感謝します。賢者……様」

「君に安らかな死を……」

苦しそうに声を振り絞り倒れ込む龍鬼へと彼女はそっと優しく声をかける。

「刹那さんどうして。話し合えば、分かり合えたかもしれないのに。殺さなくても助けられたかもしれないのに……」

「彼は邪神の半身だ。いつ理性を失うか分からない。そうなれば彼は君を殺す。そうなる前に殺してあげる事の方のが彼のためなんだよ」

涙目で訴えてくる神子へと刹那が淡々とした口調で説明した。

「でも……」

「それに君はなにか勘違いしている。僕が殺したのは「白竜」としての彼であって「龍鬼」ではない」

それでもといいたげに食って掛かる神子へと彼女はまあ待てと言った感じに話す。

「え?」

「うっ……」

その言葉の意味が解らず目を瞬く彼女の耳に龍鬼のうめき声が聞こえてきた。

「龍鬼さん?」

「神子、様……?」

驚いて彼の姿を見詰める神子に自分がなぜ生きているのか不思議そうな顔で龍鬼も呟く。

「白き竜神よ。君の中にある邪神とのつながりを断ち切った。もう君は白竜ではない」

「賢者様……」

不思議そうな彼等へと刹那が説明するその言葉に彼が呟きを零した。

「白き竜よ。君を縛り付けていた楔はもうない。これからは君の望むままに自由に生きるといい」

「有難う御座います。……神子様。俺に名を与えてはくれませんか?」

相変わらずぶっきらぼうだが優しく諭すように話す彼女の言葉に、お礼を言うと神子へと真っすぐな瞳を向けて尋ねる。

「はい。では……「龍樹(たつき)」さんではどうでしょうか」

「畏まりました。主よ今この時より貴女のお身をお守りする竜神として貴女に仕えることを約束いたします」

こうして龍樹という名を与えられた白き竜は神子を加護し守る守護竜として彼女の側にいる事となったのだった。

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