第九章 腕輪を受け継ぎし者と集いし兄弟達3
「優人、久しぶりだね」
「お前が来ることは分かっていた。待っていたぞ。俺より大きくなるとは……兄としてはちょっと複雑な心境だな」
真人が柔らかく微笑み言うと栄人が複雑そうな顔をして毒づく。
「お兄さん? ごめんなさい私てっきり栄人さんの方が弟さんかと」
「誰がちび助だって? 俺はこう見えてももう19歳だ」
神子が驚きつい口に出して言うとそれに彼が怒って眉を跳ね上げた。
「まあまあ、栄人お兄様落ち着いてください。血族の中の誰か一人は体が小さいまま大きくなれない人がいるって聞かされていたでしょう。イヨ様もそうだったって聞いてます。だから栄人お兄様も体が大きくなれないかもしれないってお母様たちに言われていたじゃないですか」
「その通りだが、弟より年下にみられて腹を立てない兄はいまい」
その様子をなだめるように少年が言うと栄人が腕組みしてぶっきらぼうに呟く。
「栄人お兄様は相変わらず血の気が多いお方ですね。神子様だって悪気があっていったわけではないのですから、どうかお怒りを鎮めて下さい」
「……まあいい。こうして俺達兄弟が三人そろうのも久しぶりだな」
「そうだね。大人になってからは皆それぞれ散り散りになっていたから」
くすりと笑い少年が言うと腕を組んだままの状態で彼が笑顔になり話す。真人も同意して答える。
「ですが、信託の神子様が現れた事によりまたこうして集結できました。そしてその時こそ僕達が神子様方のために力になる時であり、僕達兄弟の絆で困難に立ち向かう時でもあります」
「優人は昔からどこか遠くを見ていたと思っていたが、なるほど。この時が来ることもそして自分が何をなさねばならないのかも全てわかっていたというわけか」
「それでぼく達をここに呼び出したってわけだね」
少年の言葉に兄達が納得して頷き合う。
「はいそうです。お兄様達に神子様達と出会わせるためここに来るようにお願いしたんです」
「あのさ、さっきからお前ら兄弟だけで話し進めて納得するなよな。少なくとも神子さん達は理解できていないみたいだからさ」
微笑み大きく頷いた少年へと置いてけぼりになっている神子達の様子を見て紅葉が声をかけた。
「ごめん紅葉私もよく分かってないの……」
「私もこればっかりはさっぱりだね」
そこに紅葉へと信乃が申し訳なさそうに声をあげる。レインも難しい顔をして答えた。
「信乃とレイもわかってなかったみたいだぞ」
「ま、そういうわけだからちゃんとわかるように説明してやってくれないか」
蒼の言葉に紅葉が言うと説明してくれと頼む。
「これは失礼いたしました。はじめまして皆さま。僕は優人。……今でこそ伝説の聖女として英雄伝に歌われる異世界からの救世主と言われる麗奈様。僕達兄弟はその麗奈様の血をひく末裔の者。そして僕こそ腕輪を継承せし者。これが伝説に出てくる神々や精霊が宿る腕輪です」
「それが伝説の腕輪……」
「実在していたのか……てっきりただの伝説かと思ってたぜ」
優人が微笑むとそう言って語り左手首を上げると金色に輝く腕輪を見せる。その様子に神子が興奮した様子で観察すると、伸介もまさか伝説が本当だったとはといった感じで呟く。
「腕輪を継承した日より僕の運命は決められておりました。それは悪しき存在……そう邪神を打倒すために神子様方に力を貸す事。そして今度こそこの因縁深い相手をこの世から消し去る事。その使命を課せられております。ですから本日より僕達兄弟は神子様達の力になるべくあなた方の旅に同行したいと思います」
「これで役者はそろったってわけだ。後は伝説の賢者が現れれば怖いものなしって事だな」
彼の話を聞いて喜一がにやりと笑うとそう言った。
「ぼく達兄弟が力を合わせれば神子様達のお役に立てることでしょう。よろしくお願い致します」
「神子様のお身は必ずや護ると約束しよう。俺に全て任せてくれ」
「はい。真人さん、栄人さん、優人さん。これからよろしくお願い致します」
真人が微笑み言うと栄人が力強い口調で宣言する。それに神子も心強いといった感じで微笑んだ。
「ボク達の力を邪神に見せつけてやろう」
「ワタシ達にどーんと任せてね」
「ケイトさんとケイコさんもよろしくお願いします」
ケイトが言うとケイコも笑顔で胸を叩く。その様子に彼女は勿論だって感じで頷き答える。
こうして腕輪を継承せし少年……優人とその兄である真人と栄人が仲間となり、またからくり人形のケイトとケイコも加わって、こうして集い合った者達でいよいよ邪神のいる迷いの森へと向けての旅が本格的に始まるのであった。
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