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うまく書かなければならないという「呪い」

もともと文章を書くのが好き。

といっても、mixi時代にやたら長文を書いてみたり、Facebookになってからもやたら長文を書いてみたりというその程度なんですが。
何も小さな頃から自分のノートに自作の小説を書いたりするという天才性に関するエピソードをもっているわけでもなんでもないのは悲しいところ。

ただ、「なんでもやっていいよ?」と言われると僕は文章を書くんだと思う。

そんな僕が全く文章を書いていない時期があった。
社会人になって、シェアハウスに住んで、あまり向いていないリア充生活をしていたとき、全く書いてなかった。

自分の見てる世界を、たまたま会った人に熱烈に語ってはみるものの、

「こいつは何を言っているのだろう?」

という表情を向けられるだけで、何も積み上がっていかない。

まぁでもそんなもんかと思いながら日々を過ごしているとき、友達に「なんか書いてみれば」と言われて書いてみたのが、これ


なんのことはない、ただの漫画の紹介。
普段から人に勧めてるようなことをそのまま文章にしただけ。

だけど、これがすっごく心地よかった。
僕としてはこれが「ブログ」という認識もあまりなく、ただ自分の好きなものを紹介するのに選んだにとどまる。

これがたまたまはてなブックマークの新着に取り上げられ、500人ほどに読んでもらえた。


・・・衝撃だった。


これが伝えるということか!
これが届くということか!!
そんな風に感じ、だったらもっと!と考え、ブログ論みたいな本を読み漁り、様々な工夫を加えていった。

あるとき、Facebookの方にシェアをしてみると、そちらも思いの外反響が大きく、スタートアップ業界にいたというのもあったとおもうけど、「ブログの人」みたいになっていった。

そうすると僕はもっともっと欲しくなる。
いいね!も欲しいし、シェアもしてほしい。
「だったらどうすればいいのか?」
を考えるのは苦痛ではなかった。

そんな中、明らかに反響の大きいものの傾向がわかってきた。
こういう種類のものだ。

株式会社アカツキを退職しました。
弁護士を辞めました。
西粟倉村を辞めました。

いわゆるレアな体験。
考えてみれば当たり前で、自分ではできない体験をした人の話はぼくもみてみたい。

そうすると、自分の中のレアな体験を多く書くようになる。
ただ、人はそんなに多くのレアな体験をするわけではない。
これもあたりまえだ。

さらに言えば、僕よりレアな体験をしている人はめちゃくちゃいる。
特に第一線で活躍している起業家、プロスポーツ選手、アーティスト、研究者の方々のレア体験、世の中の輪郭を一つ広げるような体験に一般人である僕の体験が勝てるわけがない。

そんな風に考えて、書くのがどんどんどんどん窮屈になっていった。

最近では、「情報をうまく整理してまとめること」ばかり得意になり、そのようなものしか書いていない。

僕にとって「書くとは?」「書く意味とは?」「書く価値とは?」そんなふうに考えていたときに、この文章に出会った。


「エッセイって、なんの意味があるんですかね?」

この一文から始まる文章は、それ自体とてもエッセイ的で、コラム的であった。

本エッセイの中に、コラムとエッセイについての違いについての言及がある。

「コラムは批評を書く人による批評未満のもの。事実やロジックの組み立てが重要。エッセイはフィクションを書く人による文学未満のもの。情報よりも追憶を誘うことが魅力」

コラムは、読むと賢くなったような気分にさせるクリティカルな形式。一方、エッセイは読むと、思わず自分の過去を思い出してしまうような陶酔性がある、という違いがあるらしい。

この文章を読んだとき、僕の中の「問い」全てに答えが出た気がした。
何が「答え」かは、その瞬間何もわかってはいなかったけど、確かに感覚としてあった。


感動し、それを嘉島さんに伝えたあと、一晩じっくり考えてみた。


僕は文章を書くことを、情報の伝達と捉えていたんだと思う。
であれば、レアな情報を、なるべく伝わりやすく伝えることにこそが文章の価値。まだ世の中に出ていない情報を、世の中に伝わりやすい形で文章にする。その際に必要であれば感情的技法も使う。
目的は、情報が相手に残ることだ。
これは上記の言葉を借りると、「コラム」である。


だけど、文章っていうのはそれだけじゃない。
相手の心にさざ波をたたせる。
それも1つの文章の意味になりうる。

情報を明瞭な論理で端的に伝えることも美しいけど、何も言ってないようで何かが伝わることも同様に美しい。

その人だけが持つ、現実の解像度、心の感度、表現の色気、それらがかけ合わさってできたもの。


「自分の書くものになんの価値もない」

そんな風に思っていた。
だけど、そこまで来たらあと一歩なのかもしれない。
そう感じている僕が、次に書く文章はきっと。



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