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緑色の島風〜沖縄ライフありんくりん〜 vol.14|『「油味」、それは琉球料理に大切な味覚〜シンプルな中に優しいうま味を。』(2023年3月号)

オキナワをもうちょっと知りたくなるマガジン「ハイサイ!ウチナータイム!」に寄稿している原稿を転載しています。最新版はコチラからご覧ください。

甘味・酸味・塩味・苦味・うま味、日本的な基本味覚はこの5つでしょう。
世界に目を向けると味覚の表現も様々で、なかでも「油味(脂肪味)」はメジャーな味覚です。

油脂分から感じられる、うま味や甘味にも近い味覚で、油を多用する中華圏の料理、タイやインドネシア、トルコなど世界各地に分布。
豚肉を多用する沖縄の食文化においても欠かせないものです。

「え? 豚の脂ってラード? ちょっと重たいよね〜」

そう思った方も、ラードの油味にはずいぶんお世話になっているはず。
ラーメン、炒飯、焼きそばなど、「おいしい」と感じる料理に使われていることが多いし、沖縄のお菓子「ちんすこう」もラードを使っているからこその、コクのある甘味を楽しめるのです。

もちろん摂りすぎはダメ。健康に大きく影響します。

でもでも。
摂り方を間違えなければ料理を格段に美味しくしてくれる強い味方になります。

ラードは 「うま味」 担当、調味料の位置付け

かつての沖縄では庶民はそうそう豚肉を食べることはできず、お正月やお盆といった大きな行事の時くらい。
豚を屠る(ほふる)際に丁寧に採ったラードを糧に、日々の暮らしを紡いできました。

昭和初期の沖縄の食生活を書いた本にはこう記されています。

「あんだたりーん」といって、各家庭で豚脂をしぼり、独特のあんだちぶー(油壺)に入れて備える。
豚脂は塩や味噌と同じように調味料の役目を果たし、豚脂を使うことにより料理にうまみが出る
暑い沖縄では、消耗する体力を補うために欠くことのできない必需品である。

尚弘子(代表)."日本の食生活全集47 聞き書 沖縄の食事". 農山漁村文化協会. 1983. p.324

チャンプルーのうまさは「油味」の成せる技

ゴーヤーチャンプルーだって、肉も卵も入れずに作るのが一番シンプルなスタイル。
上述の本にもゴーヤーと豆腐のみ、味付けは塩だけという作り方が紹介されています。

ソーミンタシヤー(素麺チャンプルー)も、少しのラードが入ることでシンプルながら随分とふくよかな味わいに。

そう。
琉球の家庭料理は、派手さはないけれどシンプルな中に、美味しさがギュギュッと詰まった料理なのです。

「手に入る素材を工夫で美味しく健康に食べる、琉球の庶民は食のミニマリスト」
そう言っても良いかもしれません。

九段の名店「みやらび」をオマージュして

東京・九段南で65年営業されている名店「みやらび」にお邪魔しました。
初代(お祖母様)のゴーヤーチャンプルーのレシピを守り、お肉は入れずに自家製のラードで調理しています。


みやらびのチャンプルーをオマージュし、お肉を入れずラードのうま味を生かしたゴーヤーチャンプルーを作ります。

1人前、大体の分量です。
ゴーヤー1/2本、島豆腐100g、卵1個、ラード小さじ1、サラダ油小さじ1
(木綿豆腐での代用方法は下に書きます)

  1. ゴーヤーは薄切りにして塩ひとつまみ(分量外)振って揉む。

  2. 島豆腐は一口大の大きさに割り、水気を切る。

  3. ラードとサラダ油を熱し、豆腐を炒める。

  4. ゴーヤーを加えて炒める。
    (蓋をして30秒くらい蒸し焼きにすると柔らかくなります)

  5. 香り付けにしょうゆを少々。

  6. 塩ひとつまみを加えた溶き卵でとじて完成。
    お好みで花かつおを。

肩肘張らずシンプルに、しみじみと味わい深い。

食は「ヌチグスイ(命の薬)」、医食同源の想いが原点にある、優しさが詰まったゴーヤーチャンプルーです。




木綿豆腐は島豆腐の代用として十分使えます。
(みやらびさんも木綿豆腐を使っています)
ちょっと一手間かけると更に美味しくいただけるので、よろしければ読んでみてください。


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