見出し画像

ストレスに学ぶ:ハンス・セリエの哲学

The Stress of Life (Hans Selye)

医学用語として「ストレス」という言葉を始めて使った医師、ハンス・セリエ(Hans Selye)。
「長年時間をかけてストレス研究をしていたことが、ストレスだった!」と書いていたところには笑ってしまいましたが、彼の著書である "The Stress of Life" には、多くのことを教えてもらいました。

最後の方のチャプターで、科学者である彼が哲学を語っているところが、興味深かった箇所のひとつだった。「科学者が哲学を語るのは危険」としながらも、それでも書かずにはいられないと言い、ストレスを感じた時どうしたら良いかを、提案しています。


適応能力

人はストレスを感じると、脳(脳下垂体)から副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、副腎からストレスホルモンであるアドレナリンやコルチゾールが分泌される。
この状態が慢性化すると、身体にどんな変化が起こるのか:

  • 副腎肥大

  • 胸腺が縮む(免疫低下)

  • 消化器系の潰瘍

免疫力が落ちたり、胃潰瘍になったり、というのは、慢性的にストレスホルモンを分泌し続けることによる身体への影響です。

ハンス・セリエは、「適応能力」が健やかに生きるための一番の鍵になる、と言っています。
人は生きている限り「ストレスがない状態」などあり得ず、(季節、環境、起こってくることすべてがストレスだから)、その時々の変化に、いかにうまく適応できるかできないかが、その人の心身の状態を決めてしまいます。


適応エネルギー

 人は「適応エネルギー」を備えて生まれてくると言います。
「適応エネルギー」には種類が2つあるそうで、ひとつは「表層にある適応エネルギー」。これは、いつでも使えるエネルギー。
もうひとつは、「深層にある適応エネルギー」。これは貯蔵してあるもので、「表層の適応エネルギーがなくなったら、この深層にあるエネルギーを使う」ことになる。
 
適応エネルギーの量には限界があって、このエネルギーが「私たちの命」である!ってなんかちょっと、東洋的な考え方に似ているような気がしてならなかった・・・。

気を付けて生きないと、生まれた時に備わっていたエネルギー量はどんどん減っていきます。
外の環境、食べる物、内部環境など、ストレスになるものすべてに気を付けて、この「適応エネルギーを、はやく使い果たしてしまわないようにしましょう!」と言っています。そのエネルギーがなくなる時は、命がなくなる時だとか。


好奇心を持って生きる

ハンス・セリエは「好奇心を持って、好きなことをして生きること」を、提案しています。

定年に向かって毎日同じことをして、本当にやりたいことを考える時間もなく、「明日になったらもっと楽になる」と信じながら生きているけど、その「楽になるかもしれない」明日が来ることは永遠になく、ただ日々が過ぎ、目的なく生きている・・・。

そんな生き方をしていることを認めるのが怖くて、益々仕事にかまけ、もっともっと忙しくしたり、仕事中毒になったり、「忙しい病」になったりする。

ハンス・セリエは、それは、おかしいよねっ、と言うのです。

 「好きなことって役に立たず、報酬にも繋がらない。でもね、好きなことをすること自体が、報酬そのものなんだよ」って(深い・・・)。
 
好きなことって子どもの頃は、しょっちゅうしていた。
「好きなことをすること自体が喜びだった」から、それは「喜びを得るために、何かをする」ってことではなかったはずだよねって。

子どもの頃、野原で見つけた虫や花に感動したことがあったはず。
大人になっても、心のどこかで、それを覚えている。
 好きなことをして生きるって、簡単なことではない。好きなこと、見つからない人もいるし、あったとしても、好きなことしてたら、生活できないって事実もある。
 
でも、ハンス・セリエは言うのです。
画家は報酬をもらうために、絵を描くだろうかと。
科学者は報酬や名誉のために、感謝して欲しいために、研究をするのかと。
いいえ、感謝してもらいたいために研究をする科学者なんて、いないだろうと。
 
「楽しいからやる」。
 
もう少し保守的な回答なら、「科学のための、科学だから」かもしれない。「感謝や名誉のため」なんて答えるのは、恥ずかしいことだ。。。


自己観察

  • 戦わなくて良い相手(事柄)にかかっていくことは、エネルギーの無駄使い。

  • 戦わなくてはならないことを黙認しているのは、使うべきエネルギーを使えてない。

自分の生き方や自己を観察し、そんなことを見極めながら、「喜びを与えてくれるもの」と、「喜びを得るために行っていること」の違いを、知ることが、大切です。(深い・・・)。

そして生きている限り、ストレスは避けられないのだから、上手に適応できるよう、ストレス解消法を持ちましょう。


ストレス解消法

 「気分転換」が、ストレス解消に効果があるそうです。
確かにストレスがある時、散歩に行ったり、買い物したり、ケーキ食べたりして、気分転換すると、効果がある。
 
でも、「過剰なストレス」の場合、気分転換では効かないそうです。
過剰なストレスがある時は、「即効性のあるストレス解消法を実践できるようになることが大切」だと、ハンス・セリエは言っています。
彼はそれらの方法を、「ヨガやTM瞑想、禅、自分で行う睡眠療法、ハレ・クリシュナ(チャンティング)、その他などなど」、と挙げています。
 
ハンス・セリエがこの本を書いたのは、1956年。1976年に内容が見直されている(私の理解が正しければ・・・)。
科学者である彼は、「ヨガ云々が、ストレスに効くかどうかは、これから解明されていく必要がある・・・」としながらも、「これらの方法は、眠りよりも、深いリラクゼーションを与える」とまで、書いています。


Reference 

The Stress of Life(英語)の本へのリンクはこちらです。 

日本語でも短いバージョンが読めます。

General Adaptation Syndrome の動画はこちら。
ストレスが慢性化するとどうなるのか。
3つのステージを例に取り、説明をしています。

いいなと思ったら応援しよう!