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【取次制度黙示録③-1】書店の品ぞろえは、どうして画一的になるのか?

書店の品ぞろえは、どのように決まるのか??

世間のみんながそこそこに、本にも読書にも興味があって、好感度も悪くないのに、順調にその数を減らし続けている書店業界。
その書店をみんなが訪れる時に、もっとも重視する大きなポイントは『品ぞろえ』ではないだろうか??
自分の探している本、推しの作家の新刊既刊、自分が興味のあるジャンルの在庫が豊富、そもそも大型書店の膨大な品ぞろえに触れていたい、知らないジャンルも棚を見ることで興味が湧いてくる、、、
等々リアル書店を訪れる読者には、色んなニーズや目的が存在する。
これに対して、書店はそれぞれどんな感じで品揃えをしているのかな?

勿論、品ぞろえのロジックは一通りではない。
様々な要素が重なりあって本棚や売り場を形成していくのだが、本稿では主にダメダメな感じの品ぞろえになる過程を記すことになる。

なぜ、わざわざダメなパターンを紹介するのか??

いま「パターン」と表記したが、ダメな例失敗例イケてない売り場には、ほぼ確実に明確な規則性が存在する。現代日本の名将、野村克也監督が好んだ故事の通りだ。

『勝ちに不思議の勝ちあり 負けに不思議の負けなし』

詳細は後述するが、この規則性に現在の書店業界の行き詰まりの原因がまさに詰まっているからだ。
そしていつものことながら、あんまり頭を使っていない書店の経営者、書店の中間管理職の多くはこの原因をほとんど理解できていない。。。

逆に良い品ぞろえや目を見張るような売り場作りには、ハッキリとした規則性が存在しない。自店の顧客や需要に合わせた棚、卓越した書店員の存在、スタッフの思い入れの強いおすすめ、提案したい作家や価値観により変幻自在の売り場作りが行われてオンリーワンの存在と化している。このような売り場作りを類型化するのは困難だ。

そしてここに書店業界の問題点と希望が双子のように隣り合わせで存在している。ダメダメなパターンを紹介することで、これからのリアル書店に何が求められているのか炙り出すのが本稿の目的である。

CASE.1 そもそも本を注文していないケース


一般の読者の皆さんはびっくりされるかもしれないが、実はこのパターンがもっとも数多く見られるケースとなる。
多くの書店が一斉に同じような本を同じように注文しているよりは、むしろ自主的に本の注文をせず、自動的に届く同じような本を並べているだけなのが実態である。

注文をしない書店には、高齢の個人が経営するの地方の10坪書店なども該当するが、幾つかの大手チェーン書店がここに該当することが、品揃えの画一化が顕著となる原因だ。

レンタルビデオに併設されている書店チェーンやイ〇ンモールで良く見かけるチェーン店、全国各地のロードサイドでよく見かける書店チェーン。。
この辺の書店チェーンでは、取次から届いた本を何の吟味もしないでそのまま棚に並べて、業務用端末で刊行日が古い本順、売れていない本を順に機械的にチェックして順番に返品する。こんなシステマティックなオペレーションを日々行っている。


基本的に店舗で注文をしないので書店員の思い入れもなく、個店、地域の事情なども加味されない。意思のない本の品ぞろえが日々続く店舗群となる。
注文はシステム化自動化され、売れ筋の新刊や季節に合わせたフェアなどの注文は本社本部にて一括で行われて店舗の意思など無関係に行われる。
チェーン店の一部では書店員が独自に本を注文をすることが推奨されないことすらある。いい年して10年近いキャリアのある書店店長でも自分の意思で本の注文をしたことをない人が普通に存在する。
この手の書店での書店員の仕事は本部本社に言われたとおりに本を並べるだけだ。
一見ビジネスとして、近代化合理化されて洗練されている印象もあるかもしれないが、結果的には一番愚かでつまらない品ぞろえ、個性のまったく無い書店と化す。
昭和や平成の序盤迄はこんな無個性書店の経営効率が良かった事もあるが、勿論現在のリアル店舗で通用するスキームではない。過去の成功体験を疑いもせず、アップデートもせずに続けているだけである。


んで、金太郎飴書店って何が良くないの??

書店員が注文をしない書店が無個性でつまんない品ぞろえになるのは何故なのか?
取次が書店に見計らいで送品したり、大手チェーン店の本部が一括で注文する本の多くがいわゆる売れ筋の本、ベストセラーとなる。
そう金太郎飴書店には、ベストセラーばかりが並ぶことになる。
出版業界、書店業界の結構なベテランな中の人も
『書店はそれで食べているんだから。売れてるものは置く。「ベストセラー」とか「売れ筋」は、そりゃあ置きますよね。』と宣う。
はたして、本当にその通りなのかな??

勿論現在においては、世間の最大公約数=売れ筋ベストセラー『だけ』のリアル書店は、成立しないし存在意義すらない。
これも昭和の発想の名残で、現在およびこれからのリアル書店の存在意義が理解できていない人たちの安直な願望に過ぎない。

ネットやECが発達した現在では、書店における売れ筋の価値が変化している。多くの読者はヒット商品、売れ筋を探しにリアル書店を訪れる訳ではない。
自分の知らない世界や作品、ストーリーとの偶発的な出会いを求めてリアル書店を訪れる。
ほしい本が決まっている時はスマホからECでサックと変える世の中なのだ。
売れ筋しかないリアル書店は、予定調和に包まれた退屈な空間でしかない。現在の書店経営者や取次関係者はこの現実への理解が壊滅的にできていない。

そして、本との驚きを持った出会いができる書店の品揃えは人(書店員)の介在が絶対に必要となる。
実際には,不連続だけど実は関係している本の関係性の演出はAIをもってしても、しばらくは難しいのではないだろうか??
勿論、人(書店員)の弛まぬ努力も必要不可欠となる。

別にベストセラーを置くな、と言っている訳ではない。
ただベストセラー『だけ』を置いてるリアル書店はもはや成立しない。
売り場の書店員が研鑽を積み、知見を深めて自分自身で良書を読者に提案勧める努力をしなければならない。
努力しない、努力ができない書店は徐々に金太郎飴書店になれ果ててしまう。金太郎飴書店はゾンビ書店と同義語でないかと考えている。

品ぞろえの話はどうしても長くなってしまう。。
CASE.2以降はまた次回に。



















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