コロナ禍の私は、タバコの香りを受け入れる。
ーー その人は椅子を引かずに帰ったの タバコふかした喫茶の隣人 ーー
新宿に、気に入った喫茶店がある。
新宿駅に着いたら、まずは紀伊國屋書店で良さげな本を2・3冊調達する。その後、満を持して店に向かう。至福。
今日は、心地の良いカウンターの席が空いていた。というか、店内はガラガラだった。4連休なのにな。。
冷たいミルクコーヒーを頼む。
しばらくして、私の隣に男性が座った。顔は見えなかった。歳も分からなかった。ただ、彼がタバコを吸い始めたことだけは分かった。私の髪の毛は、タバコの煙をぐんぐんと吸い込んでいく。髪の毛は、既に臭いだろう。非喫煙者にはキツイ。
しかし、なぜか今日はタバコの香りを愛おしく感じた。理由は明確。煙を介して「人」を感じたからだ。コロナ禍で、そんな些細な繋がりさえも遮断されていたことに気がつく。
彼は、珈琲を飲むと、カウンターに椅子を仕舞わずに帰った。無骨に放り出された椅子は、彼がそこにいた痕跡。
2つの椅子を整え、店を後にした。
おしまい。
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