熊野孝哉

中学受験算数専門プロ家庭教師。『難関校合格への62の戦略』『算数の戦略的学習法・難関中…

熊野孝哉

中学受験算数専門プロ家庭教師。『難関校合格への62の戦略』『算数の戦略的学習法・難関中学編』など著書12冊。2023年進学実績:桜蔭、開成2名、聖光学院2名、筑波大駒場、豊島岡、早稲田。

最近の記事

【中学受験算数】ピークをどこに持っていくか

中学受験において「ピーク(※)をどこに持っていくか」ということを、はっきり意識しているケースは少ないかもしれません。 もちろん、改めてそう聞かれると、ほとんどの受験生や親御様は「入試本番にピークを持っていきたい」と回答されますが、実際の取り組みに反映されているケースは少ないと思います。 (※)受験生の中でのポジション(偏差値、順位)が最も高くなる時期。 例えば、偏差値が5年前半56→5年後半59→6年前半63→6年後半61の場合は、6年前半がピークということになります。

    • 【中学受験算数】聖光学院2024年1回の新傾向問題の解き方

      今年度の入試も終盤に差し掛かりましたが、特に注目を集めたのは聖光学院の新傾向問題(第1回大問5)ではないでしょうか。 大学入試の共通テストを意識した出題かもしれませんが、中学受験塾でこういった問題を指導するケースは少なく、大多数の受験者は戸惑ったのではないかと思います。 ここでは(1)(2)の解き方を紹介しますので、興味のある方はご参考ください。 選択肢を見ると、2月と3月が①~③は「30%→10%」、④~⑥は「20%→30%」となっていますが、後者だと図1のグラフの形にな

      • 【中学受験】学校別模試の判定はブレやすい

        多くの難関校受験生にとって、合格可能性を確認する最も有力な判断材料となるのは学校別模試です。 首都圏の場合、学校別模試の中でも信頼性が最も高いのは学校別サピックスオープン(以下「学校別SO」)で、主な難関校(開成、桜蔭など)については11月23日に2回目の学校別SOが実施されました。 学校別SOの最大の特長は「圧倒的な受験者数」で、例えば2020年11月の開成SOでは920人(本番受験者1051人の約88%)が受験していました。 問題そのものは難易度が高すぎる場合もあります

        • 【中学受験算数】過去問演習では、複数の分析記事(難易度評価)を確認する

          過去問演習を行う際、ネット上に公開されている分析記事(難易度評価)を参考にされている方も多いのではないでしょうか。 私も今年(2023年)の入試直後に渋幕、開成、桜蔭、聖光学院の分析記事を書きましたが、特に有名校の場合は業者、個人を問わず、多数の分析記事が公開されています。 その際におすすめしたいのは、1つの分析記事だけでなく、複数の分析記事を確認するということです。 同じ問題についても難易度評価が分かれることは意外に多く、複数の記事を確認することで、過去問演習の結果を正し

        【中学受験算数】ピークをどこに持っていくか

          判断ミスの多くは、データを確認しないことが原因になっている

          中学受験において、塾選びに始まり、学習法の設計、受験校の選択など、親御様が意思決定を迫られる機会は多々ありますが、その際、データを十分に確認せず、直感で判断を下しているケースも多いのではないでしょうか。 データの活用状況と判断の精度について傾向を分類すると、次のようになります。 A:データを十分に確認し、判断ミスも少ない B:データを十分に確認するが、判断ミスは多い C:データを十分に確認しないが、判断ミスは少ない D:データを十分に確認せず、判断ミスも多い 私が過去に

          判断ミスの多くは、データを確認しないことが原因になっている

          開成模試の成績と合否分布

          私は開成模試の結果を分析する際、算数と算数以外(国語、理科、社会)の結果をそれぞれ7段階で表し、その組み合わせを見て判断しています。 2010年~2023年開成を受験した30人について、その分布をまとめたのが次の資料です。 縦は算数、横は算数以外の結果(複数回受験している場合は平均値)をA~Gの7段階で表し、それぞれの組み合わせについて合否結果(「3-1」であれば、合格者3人と不合格者1人)を記載しています。 算数は30人中26人がボーダー以上(A~D)ですが、実際の合否

          開成模試の成績と合否分布

          『プラスワン問題集』を使う理由

          算数の定番教材は色々とありますが、その中でも代表的な教材の1つが『プラスワン問題集』(東京出版)です。 実際に使用していなくても、存在は知っているという方は多いのではないでしょうか。 ただ、2000年の発売ということで扱っている問題自体は古く、その点で不安を感じる方も少なくないかと思います。 最近の入試傾向に対応していないことを指摘し、使用効果に疑問を呈している受験指導者もいます。 教材の使用効果を正確に測ることは難しいのですが、私は生徒に実施している実力テストの結果から

          『プラスワン問題集』を使う理由

          【中学受験算数】問題集は「仕分ける」ことで効率的に進められる

          問題集に取り組む場合、1つ1つの問題を順番に解き進めていくというのが標準的な方法です。 ただ、途中で難しい問題に詰まって考え込んでしまったり、解説を読んでも理解できずに時間を浪費してしまうなど、効率的に進められないケースも多く見られます。 そのような相談を受けた際、私がおすすめしているのは「仕分ける」感覚で取り組むということです。 真面目なお子様ほど、時間がかかっても「自力で解く」ことにこだわる傾向がありますが、無理に解こうとするのではなく、各問題に対する自分自身の状況を評

          【中学受験算数】問題集は「仕分ける」ことで効率的に進められる

          【新刊】「比」を使って算数の文章題を機械的に解く方法(8月3日発売)

          新刊『「比」を使って算数の文章題を機械的に解く方法』が8月3日に発売されます。 2007年に初めて本を書かせていただいてから、本書は13冊目(改訂版を含めれば28冊目)の出版ということになります。https://www.amazon.co.jp/dp/4753935485/ 本書は、15年前(2008年)に発売された『「比」を使って文章題を速く簡単に解く方法』のアップグレード版として、旧版のコンセプトは残しつつ、全体を書き直したものです。 内容のサンプルを公開いたしますので

          【新刊】「比」を使って算数の文章題を機械的に解く方法(8月3日発売)

          難関校受験生が「本格的な応用問題」を開始する時期【中学受験・算数】

          「応用問題をいつ開始するか」をはっきり意識している受験生や親御様は少ないと思います。 特に塾の上位クラスに在籍していれば、そこで応用問題も行っていると思われる方が多いのではないでしょうか。 確かに、基本か応用かで言えば、応用問題を行っていることになります。 問題の難易度がA(易)~E(難)となっていれば、DとEを重点的に行うといった感じです。 ただ、そこでの「応用問題」と入試レベルの「本格的な応用問題」のギャップは大きいケースも多く、特に難関校を目指す場合には意識しておく必

          難関校受験生が「本格的な応用問題」を開始する時期【中学受験・算数】

          「一時的に評価の下がっている学校」は狙い目になる【中学受験・算数】

          今年度の高校別東大合格者ランキングが公開されていますが、駒場東邦の結果に目を引かれた方も多かったのではないでしょうか。 合格者数(72名)だけでなく、現役合格率24%(卒業生の4人に1人が東大現役合格)、理科三類の合格者5名といった点でも際立っています。 東大入試の合格実績は、翌年の中学入試に影響する傾向があります。 校風などを気に入り、こだわりを持って志望している受験生もいますが、雰囲気に影響されて志望する、選挙の浮動票のような受験生も多いものです。 そして後者の受験生や

          「一時的に評価の下がっている学校」は狙い目になる【中学受験・算数】

          自宅学習での予習の進め方【中学受験・算数】

          別の記事(予習は先取り学習よりハードルが低く、即効性がある)で、予習は万人向けの方法で、成績向上や復習時間短縮という点で即効性があるということを書きました。 予習の方法としては、プロのサービスを利用する方法(個別指導、有料動画など)と自宅学習で進める方法があります。 前者の場合、費用と時間はかかりますが、学習内容について理解を深めやすいというメリットがあります。 後者の場合、理解を深めるという点では前者に劣りますが、手軽さ、特に短時間で予習の目的を達成できるというメリットが

          自宅学習での予習の進め方【中学受験・算数】

          予習は先取り学習よりハードルが低く、即効性がある【中学受験・算数】

          「予習」という言葉は一般的ですが、「先取り学習」は予習に比べると少し馴染みが薄いのではないでしょうか。 「先取り学習がいい」と聞いて「予習すればいいのか」と思われる方も多いかもしれません。 未習範囲を事前に学習するという意味ではどちらも「予習」ということになりますが、直近の授業範囲を事前に学習するのが「予習」であるのに対し、数ヶ月~1年分を前倒しで学習するような大幅な予習は「先取り学習」ということになります。 先取り学習は難関校対策としても有効で、実際、多くの難関校受験生

          予習は先取り学習よりハードルが低く、即効性がある【中学受験・算数】

          難関校合格者の多くは「目先の結果」を犠牲にしている【中学受験・算数】

          算数の入試問題は、系統と難易度で次の4種類に分類できます。 ①知識処理系の基本・標準問題 ②知識処理系の応用問題 ③思考系の基本・標準問題 ④思考系の応用問題 この中で、難関校入試で多く出題されているのは②と④です。 一方、塾の学習内容は①が9割以上を占めているため、受験生の多くは②~④が手薄になっているのが実情です。 難関校対策としては、塾課題(①)と並行して自主課題(②~④)を進めていくことが有効です。 ただ、以前に別の記事(マンスリーテスト対策を行わない理由)の中

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          難易度と正答率が一致しないこともある【中学受験・算数】

          易しい問題は正答率が高く、難しい問題は正答率が低いというのは、自明のことかもしれません。 ただ、実際は難易度と正答率が一致しないこともあります。 「難しいが正答率は高い」問題の例としては、今年の渋幕中(2023年1次)の大問4(2)が挙げられます。 直角三角形(面積18㎠)内の黒い部分の面積を求める問題で、一見すると直角三角形の半分くらい(9㎠)に見えて、実際の正解も9㎠になります。 確かに正しい解法で正解に至るのは難しい問題で、入試分析等でも非常に難しいという評価があり

          難易度と正答率が一致しないこともある【中学受験・算数】

          【入試問題分析】桜蔭中2023年算数

          桜蔭中2023年の算数について分析してみましたので、よろしければご参考ください。 【各問題の難易度】 大問1(1)A☆(2)B☆(3)①A☆ ②B+ ③B+ 大問2(1)A☆(2)B☆(3)A+☆(4)B+ 大問3(1)B☆(2)①A+☆ ②C 大問4(1)A☆(2)B☆(3)B+(4)C 【考察・所感】 ・各問題の難易度は、基本的には受験者の自己採点結果と、四谷大塚の桜蔭入試同日体験受験の資料をもとに判定しています。(☆は正答率が高かったと推測される問題です) ・大問1

          【入試問題分析】桜蔭中2023年算数