思考力問題が解けない理由(3)

受験指導を始めた頃、私は「テクニックを教え込む」指導を積極的に行っていました。

例えば「各位の数の和が5になる整数の中で、0を含まないものは何個ありますか」という問題に対して、標準的な解法は次のようになります。

1桁:5のみ
2桁:(1、4)→2個(14と41)、(2、3)→2個
3桁:(1、1、3)→3個、(1、2、2)→3個
4桁:(1、1、1、2)→4個
5桁:11111のみ
以上より、1+4+6+4+1=16(個)

ここでテクニックを使えば「2×2×2×2=16」となり、標準的な解法よりも簡単に求めることができます。

当時の私は「標準的な解法→テクニックによる解法→テクニックの詳細(仕組み、使い方など)」という手順で解説することが多く、メインは標準的な解法ではなく、テクニックの解説になっていたように思います。

テクニックを多用していた理由は、純粋に「入試で有利になる」と考えていたこともありますが、それ以上に大きかったのは、生徒(特に難関校受験生)からの「受け」が良かったことです。

子供目線では、標準的な解法は「平凡で面白味のない解法」、テクニックによる解法は「刺激的で面白い解法」と感じる傾向があります。

実際、当時はテクニックを駆使するほど生徒の反応は良くなり、講師アンケートの結果や親御様の口コミ(多数の紹介など)を通して、一定の評価をいただいていたように感じます。

しかし、6年生後半に過去問演習を開始すると、テクニックを教え込んでいた生徒が難関校の入試問題に苦戦するケースが多く、特に思考力問題には歯が立たないことが判明しました。

テクニックが使える場面では、テクニックが使えることに気づかなかったり、(テクニックを正確に理解していないため)誤った使い方をして不正解になるケースが頻発しました。

今から思えば、塾で標準的な解法を教わってきた生徒に対して、テクニックによる解法を教え込むことが(実質的な学習量が増えるという意味で)生徒の負担になり、また解法に一貫性がなくなることで混乱し、それぞれの理解が浅くなってしまったのではないかと思います。

また、テクニックによる解法は汎用性が低い(特定の場面でしか通用しない)傾向があるのに対して、標準的な解法の方が汎用性が高く、思考力問題にも有効だということを後になって理解しました。

現在は、テクニックによる解法は多用せず、難関校の入試問題に対しても(行けるところまでは)標準的な解法を優先し、一貫性がなくならないことを意識しています。

テクニックを教え込んでいた時は、難関校入試で厳しい結果が続き、御三家以上の学校には一人も合格者を出すことができませんでしたが、現在の方針に変更してからは大幅に改善し、開成合格者21名をはじめ、御三家以上の学校にも多くの合格者が出るようになりました。

他の要素もありますので、単純に結論付けることは難しいのですが、1つのポイントとして意識しておく必要はあるかと思います。

考察の続きを(4)で書きたいと思います。



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内容紹介(目次)
https://note.com/kumano_takaya/n/n0fabcc15c344


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