『最低。』人気AV女優、紗倉まなの小説家デビュー作!映画化もされた短編作品集。桜庭一樹の小説が、本との出会いをくれた
これは間違いなく、「出会い」なのではないだろうか。このあとがきを読んでくださっている方々もきっと本がすごく好きで、文字に触れている時間までもが好きで、それは、そういう人たちの思考の一部にささやかに溶け込めたような感動なのだった。(あとがきより)
とってもまぶしくて、まっすぐな言葉だと思った。
学生時代にAV女優を始め、周りの人たちがよそよそしくなる中、友人が紗倉さんに手渡した、1冊の本。それは、桜庭一樹さんの『少女七竈と七人の可愛そうな大人』でした。「すごくあなたらしい」と言われたこの本に、紗倉さんは、こんな感情を持ったのだといいます。
こんなにまっすぐな言葉を紡げる彼女の小説とあれば、本が好きな人間の心に、なにか届くものがあるに違いない。
今回ご紹介する『最低。』は、AV女優として人気を博してきた紗倉まなさんのエネルギーが、どくどくあふれる作品でした。「小説家以外の著名人が書く小説は苦手……」という人も、ちょっとだけ、お手に取ってみてほしい。
AV業界とかかわりを持った女性たちの、「生」を追う
内容は、AV業界とかかわりを持った、ある4人の女性の生き方を描いた短編集。
1章・・・彩乃 進学のために上京し、在学中にAV女優になる
2章・・・桃子 親への仕送りのためにAV女優になる
3章・・・美穂 夫とのセックスレスに悩み、AⅤに出演する
4章・・・あやこ AⅤ出演歴のある母を憎んで生きる
1章はスパッと終わって、「あれ?終わり?」と思ったものの、短編集に時々ある、共通の人物が登場するタイプなので、そこまで気にならない。
あとね、勝手に暗い話かと思っていたけど、まったくそんなことはなくて。AV女優という職業に、いろいろと偏見を持っていたと気づかされた。
どのお話も、主人公が自分で悩んで、自分で決めて、その結果を受け入れて前に進むという、ごく当たり前の人生を送っているのが印象的だった。前向きとは少し違うかもしれないけれど、自分の置かれた環境で、最善を模索していく、というか。
冒頭でも少し触れましたが、小説家さん以外の作品は、その人の人生経験が色濃く反映されていて、エネルギーに満ち溢れていることが多い。
『最低。』は、仕事を続けてきた紗倉さんの矜持と、芯の強さが感じられる1冊でした。自分にとって大切なものが何かわかっていて、それを守るために必死に生きている女性たちの姿に、勇気をもらえます。ぜひ。
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