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8月2日の夜 第920話・8.2

「え、何、バズっているの?」アタイは驚きのあまり手に持っていた手帳を口に持っていき目を見開いた。今日8月2日の夜、仕事から帰ってきたアタイはいつでも寝られるように準備を整え、茫然とテレビを見ている。テレビでは今日一日の出来事が延々と流れているが、アタイはそれをBGMのように聞き流していた。ただ赤からのCMが流れた時だけ一瞬テレビに集中したけど。

 いつものようにリラックスしたアタイは特に意味もなくスマホを見た。その時だ。昨日何気なくつぶやいたものが、突然異常なまでに、イイネやリツイートされていることに気づく。
「な、なんで?ワニ山さんのこと書いただけなのに......」アタイは怖くなった。意図的に狙っているのならともかく、まったくその気がないのに突然鼠算のように増えていく数字。
 アタイは気を落ち着かせようと、音楽を聴くことにした。テレビの音を消して画像だけして音楽を流す。「落ち着ける音楽はこれね」と、アタイが選んだのは、ハープの優しい音色だ。もちろんスマホ画面は見ない。着信音のようなものは聞こえるが、それよりも優しい音楽にアタイはうっとりとする。

 少し落ち着いたのか、アタイはお腹がすいていることを思い出した。「そっか、今日残業だったから、何も食べてないわ」アタイは立ち上がり、おやつの置いている戸棚を見た。そこにはベビースターがあったから、早速食べる。ところが音を出しながら食べるからせっかくの音色が台無しに。「もういい」アタイは音楽を止めると、テレビの音量を復活させる。テレビでは特集のコーナーをしていて帆布のことを紹介していた。

 いつもなら、アタイはまたスマホを呆然と眺めるのだけど、今日は乗り気ではない。またひとつ着信音が聞こえる。いったいどこまで伸びるのか、私は気味が悪くなった。いつしかテレビでは青森ねぶた祭のことをしている。「夏祭りか」アタイは祭りは嫌いではない。けど最近祭りにはいかないの。それは以前、奄美大島の祭りで怖い目にあったから。
 アタイは思い出した。奄美大島の祭りを見ようとしたら、とつぜんハブの姿を見たの。その町は空き家ゼロを目指していたけど、そこはたまたま誰もいない家だった。どうやらそこに隠れて住んでいたらしい。

 アタイが「キャー」と大声を出したから、地元の人が気づいてくれてうまく毒蛇を取り押さえてくれたけど、アタイは本当に怖かった。噛まれたらどうなったのか。毒が回り、博多人形のように固まってしまうのだろうか?
 
 ここで突然お腹に音が鳴った。「あれ、そんなにお腹すいていた?」今、お菓子を食べたはず。と、思っていたら思い出した。アタイ今日、夜どころか昼も食べていないことに気づく。
 実は今日会社では学制発布記念に関するレポートを仕上げる日であった。それも納期が今日まで。アタイは必死になって昼を抜き、残業をしてどうにか提出。ようやく解放されたわけなの。
「アタイの会社ハラスメントフリーのはずだけど、今回ばかりは許してもらえなかったわ」といっても、理不尽なハラスメントではないし、それほどまでに今回のレポートは会社にとっても大事なもの。みんな残業していたしね。

「そうか、どうしよう。今更コンビニ行くのもだし、何かないかしら」アタイはもう一度立ち上がる。今度はキッチンの方に行く。先週買ってきたHONEYが目に留まったが、これを食べて腹が満たせるとは思えない。「あ、これにしよう」とアタイが見つけたのは、カレーうどんのカップ麺。

 早速ポットにお湯を入れる。いつもならそれ以上何もしないけど、朝からほとんど何も食べていないことに気づいたのか、ちょっと精神的にハイになったみたい。キッチンにたまたま置いていた、とあるハーブもカップ麺の中に放り込んじゃった。何も考えずにフタをする。だけどフタが緩くてすぐに開いてしまう。「何かないかな」アタイは、そこに置いてあった広告チラシを折りたたんでカップ麺の上に置く。その広告チラシはオートパーツのことを紹介していた。

「へえ、バブリシャスだって。そんなのあったわね」テレビの付いている部屋に戻り、画面上から紹介しているガムを懐かしそうに見ていると、鼻に食欲をそそるようなカレーのにおいがしてきた。
「食べよう!」アタイはふたを開け一目散に食べる。うどんを音を出しながら必死にすすった。すると予想通り、8月の温度の高さは正直者。体中から汗がにじみ出る。その一部はパンツにも到達したようだ。
「こりゃダメ、シャワーよ」アタイは慌てて浴室に入った。浴室には今年の冬に買ったバブが残っている。「来月くらいには、使おうかなあ」アタイはそう呟いてシャワーで汗を流した。

 シャワーを出て再度服を着替える。時計を見るともう眠らないといけない時間。アタイはテレビを消して寝室に入った。寝室のベッドにはバービー人形が置いてある。アタイは子供のころからの習慣で、人形に一言「おやすみなさい」と挨拶をしてから眠るのだ。
 だけど、今日は偶然寝室で数日前から探していたビーズを見つける。
「あ、こんなところにあったの。フ、ファアア、明日にしよう」大あくびをしたアタイは、それを拾い上げると、見落とさないよう人形の横に置いて眠った。


  
※こちらの8月2日の記念日を小説にはめ込んでみました。

ワニ山さんの日 ビーズの日 博多人形の日 空き家ゼロにの日
パンツの日 ハープの日 ハブの日 おやつの日 ベビースターの日
カレーうどんの日 青森ねぶた祭 赤からの日 学制発布記念日
バブリシャスの日 バービーの日 ハーブの日 バブの日 バズの日
帆布の日 オートパーツの日 ハラスメントフリーの日 HONEYの日

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シリーズ 日々掌編短編小説 920/1000

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