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反転する夢と現実 第967話・9.18

「そっか、昨日一緒に住もうといったからなあ」目が覚めて、そう呟きながら現状に嘆いている自分がいる。さっきまで夢の中ではベッドで誰もいない個室だったのに、目が覚めると大部屋で、そこでは家族というより複数世帯の親族一同とと寝ていた。
 どのくらいの親族が居るか多すぎて数えていないが、1階とロフトのような階段で上がれるところがあって、合わせて10人以上いや20人近くは雑魚寝をしている。
 一応上の階が女性で下の階が男性とわかれていた。ところが起きて気づいたが上の階には親族とは違うひとりの女性がいる。
 みんなが「ゲスト」と呼んでいたが、いったい何のゲストなのかはわからない。その女性に近づくと、横にはなっているがはっきりと目を開けていてた。だがこちらの視線は気になっていないようで、何かの考え事をしているのか天井を向いていている。

 今の時間はわからないが、子供たちが真っ先に起き上ってきた。やがて大人たちも起き上がる。しばしこの異様な風景を眺めたが、少し飽きてきた。それはここにいるみんなも正直飽きているようだ。いい加減大部屋生活をどうにかしたいと口々に言っている。また誰かがそんなこととは無関心なのか、ひとりでテレビをつけ始め、見ているものがいた。
 確実に朝が来たようだが、この中でも年長者である親父。といってもまだ髪が黒くて老人ではない。この角刈り親父だけはひとりだけ横になったまま。心地よく寝息を立てて眠っていて恐らくもうしばらく起きないだろう。
 ここで突然外から大きな音がする。慌てて外を見ると強い雨が降っていた。雨が降っていただけなら問題はないが、どこからか雨漏りをしているらしく、みんな慌てている。

 そんな様子を見ていたが、急に眠くなったのか、オヤジの隣で横になった。このとき少し夢を見る。そこはベッドのある個室で、さっき見たのと同じ光景。そこには親族の誰もいない。「これが理想的な生活だ」と思ったらまた目が覚める。すると先ほどと同じ現実。大々家族が相変わらず家の中でてんやわんやとしている。

 いつの間にか雨がやんでいた?いや厳密には小雨だが、この現状に嫌気がさして外に出た。ここは港町だからすぐ近くにある港に行ってみる。雨は収まっているが海は荒れていた。激しい白波が立っている。沖合から船が港に入ってきた。どうやら漁船が退避しているように見える。だがその横ではなぜかイベントの準備が始まっていた。
「この空が荒れた状況でイベント?」と思ったが、振り返ると親族の女性たちと一緒に横になっていたゲストの女性がそこにいる。彼女は準備のために何かを頑張っていた。あと複数の人がいて、みんなで何か不思議な大きな絵を描いている。書いているというよりも凹凸があって、それをはめ込んでいるようにも見えた。いったい何かのオブジェででも作っているのだろうか?

「こんな話一切何も聞かされていないよ」
 と一瞬思った。なぜならばゲスト女性とともに作業をしている人の中には親族がいる。みんな仲良く話をしながら作業をしていた。
 完全に蚊帳の外感があるが、そういう人は親族の中にも何人もいる。みんなチラリとその様子を見るが、後は無関心の表情を貫いて、通り過ぎていく。
 彼らは仲間に入れてもらえたかったことが嫌だったのかもしれない。そんな中ひとりだけ遠目で眺めている自分がいる。

 やがて作業が終わったらしいようで、ひとりずつどこかに去っていく。ゲスト女性もどこかに行き、やがて最後までいた人も消えるように去っていった。
「いったい何を作っていたのだろう?」と、気になったので、近づいて様子を見ようと向かう。だが突然怒涛の大声が後ろから耳元に聞こえた。思わず振り返ると、目の前は交差点で、交差する方の道が急な坂道になっている。その道に突然、獅子舞を持っている人が全速力で駆けあがっていく。
 そのあと祭りの法被のようなものを着た多くの人が後に続いて走っていった。それはゲスト女性らが準備していたオブジェのイベントと同じものなのかどうかはわからないが、どうもにぎやかな祭りがスタートしたことは間違いない。

 気が付いたらまた雨が降ってきた。だけどそんなことより、この不思議な祭りをカメラに収めようとしたが、手元のカメラを見るといったい誰がやったのか?部品がバラバラになっており、とてもじゃないが撮影できない。
「不思議なお祭りなのに残念!」ちょっと悔しそうに思いつつ、いつしか坂道を上る人はいなくなった。

 だが代わりに別の存在が坂道を猛スピードで駆け上がる。それは一台の車だが、ちょうど見ている交差点を過ぎたとき急ブレーキの音がした。そこで車が急停車したたようだが、すぐに急発信して坂を駆け上る。数秒もたたないうちにパトカーがサイレンを鳴らして坂を上ってきた。どうやら先ほどの車を追いかけているようだ。
 だが、すぐ近くで大ごとになっていたらしい。車が急停車したところは、オープンなテラス席があるお店であった。大衆的な居酒屋のようで、その店で飲んでいる人が車にぶつかったようなことを言っていて、大騒ぎになっている。

 さすがにそれを聞いて一瞬鳥肌が立ったが。後ろから猛スピードで走ってきた警官が自分を追い抜くとスキップするように跳ねる。そのまま軽い足取りで交差点を曲がり現場に向かう。「どうなっているんだ?」気になってその場所の様子を見に行くが、その様子が近づいてもわからずじまい。気になり近づくが何も見えない、見えないのだ。


「あれ」気が付いたらまたベッドで寝ている。さきほど途中で寝ていたときに見た光景そっくりだ。「同じ夢?」と思ったが明らかにおかしい。
 徐々に意識が鮮明となる。これでようやくわかった。夢と思っていたのは、本当は現実世界で、今まで見ていた不思議な光景こそが夢なのだと。

 なんとなく安心したのか大きく深呼吸。窓からは美しい色をした小鳥が木の枝に止まっているのが見えるのだった。

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