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どこでも住めるとしたら 第1114話・2.21

「なるほどこういう味になるのね」私は納得した。なぜみんなこの味が好きなのだろうということを。
「ごちそうさまでした」納得しながら食べるランチはおいしかった。私は気分よく食堂を出る。ずっと気になっていながら、外見が独特のためになかなか入るのに勇気が必要だった食堂。ネット上で公開されているランチの画像を見ながら、ついにそれを注文。食べておいしかったので気分が良くなったから、そのまま気持ちよく街を歩く。今日は休みだから時間を気にすることもない。そう思いながら歩いているとあるものが目に留まった。

「うん?物件情報」目の前に不動産屋があり、ガラス越しにいろんな物件情報が張り出していた。別に私はどこかに引っ越したいとかそういうことは無かったが、今日は時間があったからだろう。今の物件はどのくらいの相場なのか気になったので見ることにした。

 中に入ると営業がしつこいとわかるので、私は外に貼り付けてある物件のチラシだけを見る。チラシを見るといろんな物件の情報があった。マンションのものから一軒屋まで、中には事務所やショップの物件までいろいろある。「へえ、色々あるのね」
 そう心の中で言いながら私は真剣な表情で物件を見ていたが、やがて理想の住まいについて考えるようになっていた。
「どこでも住めるとしたらどこがいいかな」と、誰にも聞こえないような声でつぶやきながらじっくりと物件を見ていたが、やがて物件にも無いようなもっと理想の場所が無いかなということを思い描く。

 というわけで、参考までに自由に持ち帰られる物件のチラシを持ち帰ると、さっそく自分の理想の住まいとは何か考えてみることにした。「時間があるし」と思って向かったのは図書館だ。ちょうど私がいた場所から徒歩10分以内のところに、偶然図書館がある。というわけで図書館に向かうと、そのまま住宅関係のコーナーに向かい、関係ありそうな本をいくつか探し出す。
 大体5冊くらい見つけると、自習ができる読書コーナーに向かった。「ここ開いているわ」と運よく席がひとつ空いていたので、そこに座るとさっそく持ってきた本を眺める。
「うーん、まずは一戸建てがいいかマンションがいいか」今、私はマンション住まい。一戸建てに多少のあこがれはあるが、どうも2階建てというのが面倒な気がしている。それは実家がそういう家で、2階に部屋があったが、トイレが1階にあるため、わざわざ用を足すのに階段を降りなければならなかった。これが非常に面倒だ。

「マンションで広い方がいいかな」そんなことを考えながら頭の中でいろいろと考える。次は場所だ。都会、郊外、山の中、孤島といろいろな選択肢があるだろう。都会は便利だがずっといると疲れそうだし、山の中や孤島だとイザというとき不便な気がする。だとすれば郊外か、いや都会から船で簡単に行ける島という選択肢もありそうだ。もし海にするのだったら、南の海が良いのかもしれない。年中泳げるようなところだ。

「いや、待てよ」私は海で泳ぐより、プールで泳ぐ方が良いのではと途中から考えた。海水は何かと面倒なことを思い出したのだ。プールであれば海のように深場とかを意識する必要もないし、床も砂地ではないから歩きやすい。何よりも塩水でないのが最高だ。

「プール付きの家がいいかな。そして広い敷地を持つ平屋。理想だからね。で、都会から船で行けるような島。そうだ自家用の船に乗っていけるようなところが理想かな」こうして休みをいいことに、自分の住みたい究極的な理想の場所を思い描いた。

 思い描くのは自由だが、そうなると少しでも理想に近いところに行きたいと思うようになる。この中でお金の問題はとりあえず横に置いておくとして、ひとつ気になったのが自家用船だ。「そうか、船を操縦するのには免許がいるはず」そう思った私は、ヨットとか小型船を操縦するための免許について調べることにした。

 幸いにもここは図書館なので、それらに関する本もある。私はさっそくそういう関連の本を探して眺めてみた。「なるほど、免許を取れば可能性はあるか、だったら」私はこのときになぜか船が自分で操縦できる免許を取ろうと決心したのだ。

 そうなると気持ちは早い。資格を取るための問題集が無いか図書館を探すと、一応それらしきものを見つけた。
「まずははじめて見ないと何も始まらないわ」私はそう思うと、さっそくその本を借りることに決める。何気なく物件情報を見ながら、自分の理想の家を思い描き、そこから浮かび上がったのが、小型船の免許を取るという。

 誠に不思議なつながりであったが、私にとってはひとつの生き方が出来たのでそれはそれでよかったのかなと思ったのだ。こうして私は船の操縦ができる免許を取るために、翌日から勉強を頑張ることにした。

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シリーズ 日々掌編短編小説 1114/1000
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